生産性向上に向けた委員会開催義務、 経過措置終了後は対象サービス拡大も⁉

以前ふれたように、2027年度改定では、「介護現場での生産性向上のさらなる推進」が主軸となるのは確実です。その取組みを制度上でどこまで広げるのか。基準・加算が適用されるサービス範囲も見すえつつ、現場の実感に沿ったビジョンを築けるかに注目します。

2024年度の運営基準改定の進ちょくは?

生産性向上というと、2024年度改定で誕生した生産性向上推進体制加算や、再編された処遇改善加算の職場環境等要件で「生産性向上のための取組み」に大きな比重がかけられた点に注目が集まります。

一方で、加算以前に、2024年度の運営基準改定において「生産性向上に資する取組みの推進」を目的とした規定が設けられた点にも注意が必要です。具体的には、施設系・居住系・短期入所系・小規模多機能系において、以下の委員会設置が義務づけられたことです。

その委員会とは、「現場における業務上の課題抽出・分析」とともに「利用者の安全確保」、「介護サービスの質の確保」、「職員の負担軽減」という各テーマに資する方策を検討するものです。先の生産性向上推進体制加算などについても、運営基準上の委員会設置が土台として位置づけられていることになります。

この運営基準上の委員会設置に関しては、2027年3月末までの経過措置が設けられています。2027年度からは完全義務化となりますが、期限が間もなく1年を切る中で、進ちょく状況がどうなっているかが気になります。

負担軽減のための委員会が重荷になる皮肉

2月18日の介護給付費分科会(介護報酬改定検証等委員会)で示されたデータによれば、義務化の対象となっているサービスでの委員会設置状況は、2025年9~11月時点で75.0%。サービスごとにバラつきがあるとしても、この数字だけを見れば、おおむね経過措置期限内には完了できそうな状況です。

ただし、こうした「基準上の義務化」をめぐり、事業所・施設の規模などに応じて、「できている」と「できていない」で二極分化しがちな様子がこれまでも見られてきました。

ちなみに、今調査で「委員会を開催していない理由(複数回答)」としては、(1)職員の業務負担が多い(42.1%)、(2)委員会に関する情報が少ない(36.1%)、(3)議論を先導するファシリテーターとなる職員がいない(27.3%)となっています。(1)(3)からは、やはり「人員不足」が壁になっている状況が浮かびます。

現場の業務負担軽減が主要目的となっている委員会そのものが、現場の重荷となるのは皮肉な状況です。そうした中で、「経過措置の期限」が目前に迫れば、「形だけでも開催する」というケースが増える恐れもあります。

「形だけ委員会」が問題視される可能性

もちろん、完全義務化となった場合、運営指導での「委員会議事録のチェック」などを通じ、「実のある委員会となっているか」を問う動きが強まるかもしれません。

先の介護保険法改正では、市町村の介護保険事業計画に「生産性向上に資する取組みの事項」を定めることが努力義務とされました。あくまで「努力義務」ですが、仮に「形だけ委員会」のようなケースが多いといった指摘が浮上すれば、2030年度あたりの法改正で「義務化」に格上げされる可能性もあります。

その前段階として、厚労省が示す生産性向上ガイドラインに沿った委員会運営ができているかどうかについて、運営指導の強化を自治体に通達することも考えられます。

こうした中で注意したいのは、この「委員会開催の義務化」が居宅系(訪問系・通所系)や居宅介護支援、さらには包括にも広がっていくのではないかという見通しです。厚労省としては、介護現場における生産性向上の取組みの「すそ野」を広げるという展開を見定めているはずだからです。

基準対象を拡大するうえで求められること

ただし、すそ野拡大の1ステップとして「委員会開催の義務化」の拡大を図るとするなら、その委員会が現場にとっていかに重要かという動機づけに注意しなければなりません。

今、現場の従事者の中には、「なぜ、こんなに日々の業務が慌ただしいのか。落ち着いて介護業務に取り組むためには、何が必要なのか」という思いが渦巻いています。これに応えるには、業務を慌ただしくしている根っこにスポットを当てることが欠かせません。

たとえば、「テクノロジーを導入して、業務の効率化を図る」というだけでは、実はピンとこない従事者も多いのではないでしょうか。なぜなら、テクノロジーを導入しても利用者は重度化することがあり、従事者の緊張状態が緩和されるかどうかは「時の運」という感覚がなかなか払拭されないからです。

現場の緊張状態を緩和するには、利用者の重度化の「予兆」に気づき、早期の対処でリスクを軽減する──という道筋が見えなければなりません。その「気づき」と「早期対処」のための余力をどのように創り出すか。これを委員会の検討事項へと明確に定めることで、現場の緊張状態からの解放を促し、それがまた「気づき」と「早期対処」の余力を上積みするという好循環が生まれることになります。

ただ「業務負担を軽減する」ではなく、「現場を包む日々の緊張感を拭い去る」という従事者の心の内面に響くメッセージを築くこと。生産性向上の推進を強化するなら、こうした現場の肌感覚により心を配ることが重要です。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。