診療報酬の介護支援等連携指導料見直し。 ケアマネジメントの公正中立にかかる懸念も

2026年度の診療報酬で、介護側であるケアマネに大きな影響を与えそうなのが、入退院支援に際しての介護支援等連携指導料の見直しです。ケアマネにとって、実務がどう変わっていくのか。2027年度の介護報酬・基準改定への反映がどうなるのかも気になります。

そもそも介護支援等連携指導料とは?

診療報酬の介護支援等連携指導料は、入院患者の退院支援の一環として設けられている報酬上のしくみです。具体的には、患者の心身の状況など総合的な評価にもとづき、退院後に介護・障害福祉サービスの導入が適当と判断され、患者本人もそれを望んでいる場合の以下の実務を評価したものです。

その実務とは、医療機関側の看護師や社会福祉士等が、ケアマネおよび障害福祉等の相談支援専門員と連携し、在宅におけるケアプラン作成につなげるというものです。これにより、患者が退院した直後から速やかに介護サービス等を提供するのが目的です。

ちなみに、この病院側と連携するケアマネ等ですが、患者の入院前から担当しているケースが基本となります。では、入院前に介護保険サービス等を使っていない場合はどうなるのでしょうか。その場合は、入院している患者自身が居宅介護支援事業者などを選択し、病院側の入退院支援スタッフを通じて担当ケアマネなどを手配することになります。

「ケアマネ手配に時間を要する」が課題に

問題は、急性期の患者を中心として、入院日数が短くなっていることです。そのため、入退院の現場からは以下のような課題が上がっています。それは、新たにケアマネ等を見つけるとなると、「手配に時間を要する」、「在院日数が短くなっているため、ケアマネとの連携が難しい」というものです。

なお、入退院支援加算においては、患者の入院から3日以内(Iの場合)、もしくは7日以内(IIの場合)に、その患者の退院困難な要因などを把握しなければなりません。また、入院時支援加算を算定する場合には、患者の身体的・社会的・精神的背景も含めた患者情報の把握などを行なうことも必要です。

医療機関側がこうした加算を算定するうえでも、なるべく早期から「利用者の退院後の生活課題」などを評価することがカギとなります。そうなると、もともとの担当ケアマネが「いない」という状況がスタートラインになった場合、情報収集・評価のためのタイムラグがどうしても大きくなりがちです。

患者の選択権は十分に尊重されるのか?

そこで行われたのが、今回の介護支援等連携指導料の見直しです。具体的には、「(医療機関側の)入退院支援担当者などが、平時から連携体制を構築しているケアマネ等」と連携した場合の患者指導等を要件とした新区分(既存区分から+100点)を設けたことです。

これにより、医療機関側が「平時」から居宅介護支援事業所などとの連携を積極的に進めることにインセンティブが生じます。平時からのケアマネとの連携が強化されれば、ケアマネ側にとっても、地域の医療機関とのコミュニケーションが取りやすくなるなどのメリットは大きいでしょう。

ただし、この改定には注意すべき課題もあります。たとえば、その医療機関が特定の(併設もしくは提携関係にあるなどの)居宅介護支援事業所と平時からの連携強化を図り、その事業所のケアマネが担当になるとして、患者の選択権は十分に尊重されるのでしょうか。

確かに示された要件では、「患者の同意を得て」という点は明記されています。しかし、急性期の患者で意思決定力が低下していて、身近な人とのACP等も進んでいなければ。「病院側にお任せ」となることも多いでしょう。そうなると、医療機関側と「何らかの提携関係」にある特定の居宅介護支援事業所が、患者を「抱え込む」状況も生じかねません。

事業者からの利益授受は禁止されたが…

「抱え込む」と述べましたが、どうしても住宅型有料ホーム等で問題になっている「提携先の居宅介護支援の利用を強要する」といった光景が思い浮かんでしまいます。

その点について、今回の改定項目では、以下のような新たな禁止事項も設けられています。それは、医療機関側が特定の介護事業所・施設を利用すべき旨等を指示した際、事業者側から金品等の財産上の利益を受け取ることを明確に禁止するというものです。この対象には、居宅介護支援も含まれます。先の入退院支援加算では、この禁止事項を満たすことが要件ともなります。

これにより、患者への対居宅介護支援契約の強要を防ぐことにつながるのかどうか。居宅介護支援事業所が医療機関に「営業する」などの場面もある力関係を考えると、利益供与等の問題はクリアされても、ケアマネジメントの公正中立という観点で強要問題が十分に払拭できるかどうかは定かではありません。

診療報酬上でこうした改定が行われると、その後の介護報酬改定でも、対応に向けた改定が行われる傾向は高いでしょう。たとえば、施設等の協力医療機関との連携にかかる規定を見れば、2027年度改定で「居宅介護支援と医療機関との平時からの連携」が基準上で義務づけられたり、新たな加算要件になる可能性があります。その時に、ケアマネジメントの公正中立をどう担保していくのか。今後注目したい論点の1つとなりそうです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。