シャドウワーク軽減は本当に実現できる? 新たな地域支援が「重荷」となる可能性も

次期介護保険法等の改正をめぐり、ケアマネにとっては「業務等の負担軽減策」がどこまで反映されるかが気になるところでしょう。本当に負担軽減を実感できるものとなるのか。また、2027年度に期待される、ケアマネのさらなる処遇改善とのバランスがどこまで図られることになるのかも注目されます。

現任者研修がどうなるのかも気にかかるが…

内閣府の規制改革推進会議が示した中間答申では、これまでの提言にもとづいた改革の進ちょく状況も示されています。その中には、ケアマネ資格の更新制の廃止と現任者研修のあり方の見直しも見られます。

問題は、そのうちの「研修のあり方」です。介護保険部会の取りまとめ意見では、各種負担軽減策も示されていますが、受講にかかる強制力がどの程度になるのかは、今後の法改正・省令改正を待たなければなりません。

更新制は廃止されたが、研修負担(受講が実務に役立つかという話も含む)は変わらないというレベルになれば、現場の落胆は大きいでしょう。この改革をもって処遇改善の上乗せが中途半端になったりすれば、業界・職能団体の反発が高まるのは必至です。

一方、今後の法改正・省令改正に関しては、ケアマネの負担軽減にかかる他テーマの動向も気がかりです。それが、現場のシャドウワーク対応に起因するしくみのあり方です。

シャドウワーク負担の軽減に向けた道筋

一昨年の「ケアマネジメントにかかる諸課題に関する検討会」の中間整理、そして昨年の介護保険部会の取りまとめ意見では、ケアマネのシャドウワーク(法定外業務)による負担を軽減するための方策が示されています。

大筋としては、(医療同意を除き)市町村が主体となった協議体で解決策を検討し、その協議体として地域ケア会議の活用を想定するというものです。ちなみに、この地域ケア会議に関しては、特に頼れる身寄りがない高齢者等の多様なニーズを実効的に解決することが強調され、その部分での役割が法令上でも明記される可能性が高いでしょう。

この頼れる身寄りがない高齢者等の多様なニーズは、ケアマネのシャドウワークでも一定の比重を占めています。つまり、頼れる身寄りがない高齢者等への支援を軸としながら地域ケア会議を機能させ、これによってケアマネのシャドウワーク全体も軽減されるという道筋が描かれていることになります。

新たな担い手となる事業も創設予定だが…

その場合、シャドウワークの対象者や課題の内容によって対応が後回しにされる可能性はないか──という懸念も浮かびがちです。その点について、介護保険部会の取りまとめでも注釈が付されています。

たとえば、家族・親族等がいる場合でも、その関係性によって一律に「身寄りがある者」を対象外とすることは適当でないとしています。拡大解釈すれば、同居家族に疾病や障害があったり、ヤングケアラーである場合なども含まれると考えていいでしょう。

この解釈はやや楽観的かもしれませんが、ケアマネのシャドウワーク軽減の重要性が視野に入っていることに違いはありません。その点では、法改正後も自治体向けの通知などで「シャドウワーク全般についてきちんと対応すべき」という旨が示されると思われます。

なお、解決の受け皿として、社会保障審議会の福祉部会では、新たな第二種社会福祉事業の創設が提案されています。これも社会福祉法の改正で明記されるでしょうが、いずれにしても「現場からシャドウワーク課題が提起」された後、「地域ケア会議での検討」を通じて、「第二種社会福祉事業が支援の担い手となる」という流れが築かれることになります。

注意しなければならないのは、上記のステップの「課題提起」の受け皿となる総合相談支援、および「検討の場」となる地域ケア会議が、いずれも地域の実情によって機能するかどうかに差が生じやすいという点です。

改正後の現場実態と処遇改善のバランス

以前のニュース解説でも述べましたが、主体となる自治体の職員および地域ケア会議の委託先となる包括は、ともに業務過多と人員不足という重荷を同時に抱えています。

そのため、介護保険部会の取りまとめでも、たとえば地域ケア会議について「ケアマネの協力を得ながら」と記されています。気になるのが、次期改正で予定される主任ケアマネの役割の明確化です。ここに「地域ケア会議への参加」が加わり、自治体・包括から頼られる比重が高まれば、シャドウワーク解決を「居宅介護支援事業所の主任ケアマネが中心になって担う」という構図も生じかねません。

そうなると、本当に現場のシャドウワーク負担は軽減されるのか、ケアマネ自身が解決にかかわる比重が大きくならないか──という疑念も浮かんできます。さらに言えば、地域の(介護以外の)多様な課題を、主任ケアマネを含めた地域の居宅介護支援が担うケースも増えそうです。そうなると、地域での「新たな役割」も上乗せされることになります。

そうした状況も予想される中、2027年度のケアマネの処遇改善の議論に際しては、制度改正による現場の負担変化を詳細にシミュレーションすることが不可欠となります。実態としての現場負担と、それに見合った処遇改善策が釣り合わなければ、ケアマネ人材の確保はますます厳しさを増しかねません。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。