今年度の診療報酬改定から見えてくる── 2027年度改定での対医療連携プッシュ

2024年度改定では、施設系・居住系を対象に協力医療機関をめぐる新たな基準・加算が設けられました。その基準を満たすための体制構築や加算の算定状況がどうなっているかについて、調査結果が介護給付費分科会で示されています。今調査と2026年度の診療報酬改定から、2027年度の行方を掘り下げます。

協力医療機関3要件、特養ホームの厳しさ

施設系で運営基準に定められた「協力医療機関の3要件((1)常時の相談対応、(2)常時の診療、(3)利用者の入院の原則受入れ──2027年3月末までの経過措置あり)」を満たしている割合は、2025年9~11月時点で以下のようになります。特養ホームで67.9%、老健で83.3%、介護医療院で84.9%という具合です。

以前から指摘されてはいますが、「義務化」の経過措置終了が迫る中、特養ホームの3割以上が未対応という点が気になります。特養ホームの場合、老健や介護医療院と比べて「併設もしくは同一・関連法人の協力医療機関」が極めて少ないことが背景にありそうです。

ここに、地域に提携できる医療機関が少ないという事情も加わります。たとえば、市町村ごとでは、在宅療養支援病院、在宅療養後方支援病院、地域包括ケア病棟(200床未満)を有する病院のいずれかが「0」というケースが46.4%と5割近くにも達しています。

「地域に提携できる医療機関がない」というのは、老健や介護医療院でも同様の悩みです。ただし、併設または同一・提携の医療機関が「ない」という状況がある分、特養ホームは対応により苦慮している様子がうかがえます。

協力医療機関連携加算の壁となる「月1会議」

一方、協力医療機関に関する加算(協力医療機関連携加算)ですが、先の(1)~(3)の基準を満たした場合の高単位区分(月50単位)の算定率は、特養ホームで37.6%。老健や介護医療院がともに5割を超えなのに対し、ここでも特養ホームの算定の厳しさが浮かびます。

加えて、「算定していない理由」を見ると、(1)~(3)のいずれかを「満たしていない」という点もさることながら、「定期的な会議の負担が重く、会議を行なえていない」という回答が目立っています。この回答が目立つのは3施設共通で、いずれも4~5割あります。

ご存じの通り、この「定期的な会議」とは、「(利用者の同意を得て)その人の病歴等の情報を協力医療機関側と共有する会議」のことです。これを月1回の頻度で行ないます。

もちろん、病状悪化リスク等の高い利用者が中心で、毎回すべての利用者についての情報共有を図る必要はありません。それでも、月1ペースというのは、現場にとっては確かに大きな負担となりえるでしょう。

提携する医療機関側にとっても実は負担!?

なお、この要件については、電子的システム(電子カルテや地域医療情報ネットワークなど)で、医療機関側が利用者情報を随時確認できる場合には、「定期的に年3回以上」の開催でOKとなっています。もちろん、テレビ電話装置等を使った会議でも構いません。

ただし、上記の「電子的システム」による連携を行なっている施設となると、電子カルテの活用習慣のある介護医療院は4割以上ですが、特養ホームは1割台、老健でも約2割と低迷しています。そうなると「月1会議」がやはり必要となり、算定に際し大きなハードルとなる実情は変わりません。

実は、この定期会議の負担は、協力医療機関側でも同様です。協力医療機関側が対応するための報酬上のインセンティブとしては、「協力対象施設入所者入院加算」があります。これは、施設側との平時からの体制を構築したうえで、必要な場合の往診・入院受入れなどを行なうことなどを要件とした加算です。

この要件の中に、施設側の利用者の診療情報共有などのためのカンファレンスを「月1回」開催することも含まれています。これが、加算算定の届出を「していない」理由の4割近くを占めています。「ICT等(電子的システム)を活用した診療情報等を確認する体制がない」という回答も4割に達しています(中央社会保険医療協議会での提示資料より)。

今診療報酬改定で浮かぶ介護側のしくみ変更

そこで、2026年度の診療報酬改定では、以下のような要件の緩和が図られました。

上記の協力対象施設入所者入院加算についていえば、「月1回以上」のカンファレンスを「年3回以上」に緩和。さらに、連携する施設から利用者の入院を年2回以上受け入れた場合には、「年1回以上」でOKとなります(一定の条件あり)。医療機関側でこうした緩和が図られれば、連携機関同士の実務上のインセンティブを揃えるうえで、介護保険施設側の要件緩和も当然視野に入ります。

また、今回の診療報酬改定では、医療機関の初診・再診料に「電子的診療情報連携体制整備加算」が誕生しました。要件の1つに「電磁的方法により診療情報を共有し、活用する体制を有していること」が含まれています。

これにより、地域医療情報ネットワークの整備や活用が進む可能性も期待されます。そうなると、介護側にもそのネットワーク対応をうながすための新たな加算等が設けられる可能性もあります。これは施設・居住系に限らず、居宅系の対医療連携でも同様です。

2027年度の介護報酬改定では、これら診療報酬との整合性を取るためのしくみがどこまで進むのか、注目点の1つとなりそうです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。