ケアマネのシャドウワーク問題の行方。 改正法案から課題解決の糸口は見えるか?

2027年度に向け、ケアマネにとって課題解決が期待されるのが「シャドウワーク」です。今回の介護保険法等の改正案では、どのような道筋が描かれているのでしょうか。社会福祉法の内容なども含めてチェックします。

介護保険部会の取りまとめに見る解決の道筋

ケアマネの「シャドウワーク負担の軽減」に向けては、一昨年のケアマネジメントにかかる諸課題検討会の中間整理で「市町村が主体となり、関係者を集めて地域課題として協議する」ことが明記されました。

これを受けた介護保険部会での取りまとめ意見では、上記の「協議」の場として「地域ケア会議の活用」が提案されています。ただし、ここで協議されるシャドウワークの課題は、「頼れる身寄りがいない高齢者等への対応」の一環という位置づけです。

もちろん、シャドウワークには、上記の「頼れる身寄りがいない高齢者の生活課題」も多く含まれています。問題は「(同居あるいは近隣等に住む)家族がいる」ケースですが、先の取りまとめでは「身寄りがあっても家族・親族等との関係はさまざまであり、一律に身寄りがある者を対象外とすることは適当ではない」と“ただし書き”が付されました。

これにより、「頼れる身寄りがない高齢者」の範囲が広がるとして、ケアマネのシャドウワーク対策に資する地域ケア会議の機能強化や、利用者の生活課題にかかる支援体制の充実は図られるのでしょうか。

社福法「福祉サービス利用援助事業」見直し

さて、今回の法案で注目したいのは、「頼れる身寄りのない高齢者等」を実際に支援するスキームです。これについては、社会福祉法第二条にある「第二種社会福祉事業」の一部を見直すことが示されています。

現行法では「福祉サービス利用援助事業」があります。これは「精神上の理由により日常生活を営むのに支障がある者」を対象に、福祉サービスの利用にかかる相談、助言、利用の手続き、費用の支払いに関する便宜の供与(補助)などの支援を行なう事業です。

今改正法では、この事業が「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」と改名されます。そのうえで対象について、現行法の「精神上の理由」に加え「近隣に居住する家族がいないこと」等によって日常生活または「社会生活」(追加)を営むのに支障があるというケースに拡大されています。

さらに、「福祉サービス・保健医療サービス等」の範囲ですが、ここに「葬祭、その他の当人が死亡した場合に必要なサービス」も加わりました。ケアマネのシャドウワーク課題の1つ「死後事務」も視野に入ったわけです。

改正法案では「生計困難者に限定されるが…

このように、「頼れる身寄りがない人」も新たに対象にすることができる第二種社会福祉事業の再編が行われることになります。

ただし、改編された第二種社会福祉事業については、対象者として「生計困難者」に限定する条文も加わっています。つまり、この事業はあくまで「生活困窮者や生活保護受給者」など、経済的な理由で生活を営むことが難しい人が対象となるわけです。

言い換えれば、この新事業はあくまで社会福祉上のセーフティネットの位置づけとなります。それ以外(一定の所得・資産がある)人については、民間の多様な支援サービスに「つなぐ」ということになるでしょう。

もちろん、生計困難者に対象が限定されていても、ケアマネとしては、こうしたセーフティネットができることにより、「つなぐ」先の支援の選択肢は広がります。しかし、今後の省令改正等で「生計困難者」の具体的な基準が思ったより限定されたりすれば、民間の他支援への「つなぎ」がきちんとコーディネートされていくかがカギとなります。

新・支援介護でシャドウワークは解決するか

このコーディネート機能が問われるのが、先に述べた市町村が主体となる協議の場です。ケアマネとしては、地域ケア会議の機能がどうなるのかが気になりますが、今改正法案ではもう少し視野を広げることが必要です。

注目したいのは、今回の改正社会福祉法案で定められた、市町村主体による新たな支援会議です。これは、各種支援関係機関や生活課題のある住民支援にかかわる従事者(ケアマネも参加メンバーとなる可能性あり)、その他の関係者により構成される会議です。

ポイントは、「他の法律にもとづく会議(地域ケア会議も想定される)」での支援検討が十分になされない場合に、この新会議が必要な支援体制の検討を行なうとされている点です。つまり、新会議は、他のさまざまな会議・協議体の上位に位置づけられることになります。

一方、地域ケア会議については、上記の会議をはじめ、その他のさまざまな会議(今法案でさらに増加)との連携が努力義務として設定されています。地域ケア会議の運営内容は省令(介護保険施行規則)で定められますが、支援分野を超えた会議間連携を求める規定が設けられることは確実でしょう。

気になるのは、地域での会議が次々と増える中、本当に現場の「シャドウワーク解決」に向けた機能が発揮されるのかという点です。ケアマネもさまざまな会議への参加が求められたりすれば、それ自体が業務負担となりかねません。「船頭多くして…」とならないために、市町村による操縦力が問われそうです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。