
東日本大震災から15年、熊本地震から10年、そして能登半島地震から間もなく1年半が経過します。その間、気候変動による豪雨災害等も多発しています。こうした中、被災者にかかわるケアマネの経験・知見を活かすための環境をどう整えるかが問われます。
被災地に支援に入ったケアマネの状況は?
介護現場では、自然災害発生時の業務継続計画(BCP)策定や、それに沿った取組みが義務づけられています。平時からの対策や多機関・多職種との連携も重要なポイントです。
実際、災害規模が大きくなると、自事業所・施設だけでの対応には限界があります。発生時における地域の多機関との連携はもちろん、他地域から派遣される多機関・多職種による支援チームの受入れなどについて、平時からの体制やルールの策定も不可欠となります。
では、他地域から支援に入る側の状況はどうなっているのでしょうか。ケアマネが支援者となるケースについて、日本介護支援専門員協会が「災害時のケアマネジメント支援における医療介護支援との効果的な連携に関する調査研究事業報告書」(厚労省の2025年度老健事業)をまとめています。
それによれば、過去の震災等で実際に現地の支援に入ったケアマネのうち、「自らの意思で参加した」が57.6%で最多。「災害支援団体や職能団体からの要請を受けて参加した」(26.7%)の2倍以上にのぼります。
また、支援参加の動機では「何らかの形で被災者の役に立ちたかったから」が49.8%、「専門職としての役割であるという使命を感じたから」も26.3%に。一方「職場から指示・命令を受けたから」は1.2%にとどまります。
支援を被災者のQOL回復に活かすには…
こうして見ると、ケアマネ個人の高い倫理観と使命感が支援に向かわせている様子が浮かびます。一方で、個人としての支援を、被災者のQOL回復へと活かすために、どのような環境が必要なのかも問われるところです。
先の調査によれば、参加に際して「個人での有休取得」や「勤務先の公休等利用」が合わせて67%にのぼります。一方、被災地でのリハビリや環境整備等の支援を行なう「JRAT」では、「業務としての参加」が59.3%にのぼります。
ケアマネもJRATも、もっとも多い支援期間(現地への移動含む)は2~3日と短期での初期支援が中心です。その場合、「短期」の初期支援を被災者のQOLの早期回復につなげるには、現地に到着後、早期に円滑な支援導入につなげられるかが大きなポイントです。
当然、受入れ側との間で、組織としてシステムや情報の共有を図る機能があれば、円滑な支援導入も進めやすくなるでしょう。
「受入れ側」の体制上の課題はどこに?
もちろん、「個人による自発的な支援」を主とするケースでも、「組織的かつ計画的な連携」を進めることは可能です。ただし、そこでは受入れ側の体制づくりがカギとなります。
先の調査では、支援に入ったケアマネが感じている課題として「被災者のアセスメントを行なう段階で、活動に必要な情報が不足している(55.7%)」、「アセスメントの基準や様式が定まっておらず統一的な情報収集が困難(44.6%)」などが目立ちます。
さらには、アセスメントで得られた情報が「関係機関(医療、福祉、行政等)間で適切に共有されない」という課題も上がっています。現地は混乱状況にあるとはいえ、自身の専門性にもとづいて収集した情報が「適切に共有されない(その後の支援に十分に活かされない可能性も)」となれば、支援に入る側のモチベーションにも影響してくるでしょう。
ちなみに、地域単位では「支援の受入れ」に際しての体制づくり(アセスメント等の実施手順の統一など)や、ルール(アセスメント様式や個人情報の取扱いなど)の標準化・明確化の取組みも進んでいます。これらを「受援計画」として策定する自治体もあり、国もその「作成の手引き」を示しています。
しかし、もう一歩踏み込んで、いざ支援に入る側と受入れ側が「平時から協働できる機会」を設ける必要もありそうです。
改正法案での災害時福祉業務従事者の登録制
今国会に提出された社会福祉法の改正案では、災害時福祉業務従事者の登録制を設け、研修・訓練の機会を設けるとしています。
これにより、支援側の組織体制を固める期待は高まるかもしれません。ただし、ここで加えたいのが、受入れ側(全国自治体)に対する要望などを発信できる機能です。
先の調査では、ケアマネが支援に入った際の自身の健康・精神状態を保持するうえでの工夫・対処として「食事」や「休息・休憩」の確保以上に多いのが、実は「支援活動メンバーとの交流」となっています。こうした意向は、支援側からの発信により受入れ側が「気づき」を得やすいポイントかもしれません。
一方で、「個人の自発的行動」に頼るだけでなく、やはりJRATのように「業務」として機能させるしくみも問われます。たとえば、先の従事者登録を事業所単位で行なった場合の人件費補助のあり方などについてです。
個人の使命感ももちろん大切ですが、受入れ側の「求め」を断りにくいことでオーバーワーク等の制御が難しくなるリスクもあります。組織としての取組みのあり方を引き出せれば、支援者となるケアマネ個人を保護することにもつながることが期待されます。
出典: 日本介護支援専門員協会「災害時のケアマネジメント支援における医療介護支援との効果的な連携に関する調査研究事業報告書」
厚労省通知vol.1494(災害時システムに備蓄状況報告機能を追加) - ケアマネタイムス

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。