「誓約でOK」が目立つ処遇改善。 2027年度明けに危惧されること

2026年度予算が成立し、今年6月から処遇改善加算を中心とした臨時改定が行われます。その加算の算定では、要件に「2026年度中の実施を誓約することでOK」とする規定が目立ちます。その多さから懸念されるのは、「仮に実現できなかった場合」の混乱です。

「2026年度中の実施誓約でOK」の要件

今回の算定要件で、「2026年度中の実施誓約でOK」とされる部分を整理してみましょう。まず、「2026年度の特例要件」を満たした場合には、キャリアパス要件I~IVおよび職場環境等要件について、「2027年3月末までの実施」を「誓約」すれば要件を満たしたものとされます。ただし、その実施について実績報告書で報告しなければなりません。

次に上記の「特例要件」ですが、3つあるうちの「ケアプランデータ連携システムの活用」に関しては、単に「加入」するだけでなく「実際に他事業所と連携する」ことによる「利用(連携実績)」が求められます。

そして、この「利用」についても、2027年3月末までに行なうことを「誓約」すればOKとされています。誓約内容の実現については、やはり実績報告書での報告が必要となります。

また、特例要件のうちの「生産性向上推進体制加算I・IIを算定していること」についても、「算定を誓約」した場合は「算定しているものとして取り扱う」とされました。

なお、新たに処遇改善加算の対象となった居宅介護支援等では、特例要件のうちの「ケアプランデータ連携システムの利用」、もしくは選択要件となる「キャリアパス要件I・II、職場環境等」について、やはり2027年3月末までの「実施誓約でOK」とされています。

要件を行き来し、いくつも「誓約」を重ねる?

たとえば、すでに算定対象となっているサービスの場合、(1)特例要件のうちの上記2つのいずれかについて「2027年3月末」までに満たすことを「誓約」したうえで、(2)キャリアパス要件I~IVおよび職場環境等要件についても同様の「誓約」を行なえば、申請時点でほとんどの要件を満たせることになります。

各要件を行き来しながら、いくつも「誓約」を重ねていくことで、申請時点での実務負担を極力軽くしながら、より高い区分の算定を可能にする──ここに、今回の処遇改善加算見直しの大きなポイントの1つ、つまり算定の裾野を広げる狙いがあります。

これにより、申請時点でのハードルが低くなることは、事業所・施設にとってメリットは大きいでしょう。ただし、あくまで「誓約」なので、2027年3月末までには「実施」したうえで、その旨を「実績報告書」に反映させなければなりません。要するに実務負担が「猶予された」に過ぎない点に注意が必要です。

「誓約」が叶えられない場合は加算返還も?

では、仮に2027年3月末までに「実施できなかった」場合はどうなるのでしょうか。たとえば、取得した加算分を返還しなければならないことになるのでしょうか。

これについて、今改定の疑義解釈では直接の言及はありません。ただし、2025年度からの処遇改善加算の算定に関する「要件の弾力化」について触れられています。

この「要件の弾力化」は、キャリアパス要件I~IIIおよび(2025年度から新たに適用された)職場環境等要件について、やはり2025年度中の「整備の誓約」をした場合に要件を満たしたとするというものでした。

これについて、今回の疑義解釈では「(2025年度の)実績報告書において要件の整備について報告しなければ(取得した加算は)返還対象となる」としています。

ただし、2026年度の処遇改善加算の申請時点で、「2026年度の特例要件」を満たしている場合(取組みの誓約を行なった場合も含む)、先の2025年度の要件弾力化による「誓約」を改めて行なったうえで、「返還は求めない」としました。つまり、2025年度の「誓約」の有効性が実質的に延長されたことになります。

この解釈に沿えば、「2026年度の特例要件」が有効である限り、仮に実績報告書で「誓約」内容が満たされていなくても、取得した加算の返還は求められないことになりそうです。問題は、その「特例要件」が2026年度で終了されるとなった場合にどうなるか。加算の返還を求めることになるのかという点です。

特例要件が延長される可能性は高いものの…

この特例要件をどうするか(2027年度も延長するのか否か)については、今後の介護給付費分科会で比較的早い時期に議論されることになるでしょう。恐らく、「特例要件の延長」となる可能性は高いと思われます。

ただし、特例要件のうち「ケアプランデータ連携システムの利用(連携実績)」や「生産性向上推進体制加算の取得」に関して、実績の猶予(誓約の延長)はなされないかもしれません。特例要件は現政権で誕生した、いわば“肝いり”の施策でもあるからです。

しかし、「誓約でOK」という要件がこれだけ絡み合っていると、その一角が厳格化されれば、2027年度明けに「返還の是非」によって現場に大きな混乱が生じかねません。2027年度の処遇改善の上乗せもさることながら、要件の柔軟化をどこまで維持するかについても、算定の実態(「誓約」で加算申請を行なう事業者がどれだけ多いかなど)を見極めながら慎重に議論することが求められます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。