
2026年5月11日より、LIFE(科学的介護情報システム)は、運営が厚労省から国保中央会に移ります。介護情報基盤との連携にもとづくものです。2021年4月の稼働から5年が経過したLIFEですが、現状の課題を整理しつつ、今後の展開について見すえます。
いまだ「LIFEの利用手順が分からない」も
厚労省集計によれば、2025年4月時点でLIFE関連加算を算定している事業所・施設割合は、もっとも高い老健で87.3%、次いで特養の77.7%となっています。一方、居宅系では通所介護で57.2%(地域密着型は54.6%)、居住系では介護付き有料ホームで50.6%。認知症GHで47.8%と5割を切っています。
ちなみに2024年度改定で、複数加算にかかる入力項目の統一やADL維持等加算の利得計算の簡素化などが図られました。これにより、施設系で算定率の伸びが認められる一方、全般的に上昇は緩やかになっています。
加えて、2024年度改定の効果検証等の調査によれば、未算定事業所の「今後の算定意向」で「算定する予定」は21.5%にとどまっています。50.0%が「算定したいが課題があり算定できていない」、そして26.6%がそもそも「算定したいと思わない」(「算定する予定」を上回る)としています。
なお、上記の「課題があり」の「課題」ですが、「入力負担が大きい(49.1%)」、「アセスメント負担が大きい(43.4%)」が目立ちます。「システムの利用開始までの手順が分からない」も37.9%あります(いずれも複数回答)。
LIFE未算定が固定化された場合の懸念
LIFE稼動から5年が経過したにもかかわらず、「(入力・アセスメント等の)対応体制が築けていない」あるいは「システム利用の入口にもたどりつけていない」といった回答がこれだけあるのは、何を意味するでしょうか。「LIFE未対応」の現場が固定化されているのではないかという見方もできます。
これを「事業者努力が足りない」と論じるだけでいいのかどうか。今後は、LIFEシステムと介護情報基盤の連動により、他の既存加算(認知症対応系の加算など)にも「LIFE対応」を要件とした区分が増える可能性もあります。そうなると、基本報酬の大幅アップなども見通せない中、LIFEに対応できないゆえに「淘汰される」ケースも増えかねません。
ここで言う「淘汰」については、もちろん撤退・廃業のほかに大規模法人による吸収・合併なども含まれます。とはいえ、通所介護や認知症GHなどを中心に地域ごとの資源の偏りに拍車がかかる可能性もあります。
LIFEの移行作業さえ「負担」となる背景
懸念されるのは、今回のLIFE運営の移行にともない、未算定事業所の5割に達する「課題があり算定できていない」というケースで、現場のハードルがさらに高まることです。
もちろん、移行後に算定を開始するのであれば、移行作業は必要ありません。厚労省によれば、移行後は「誤登録の自動検出」が可能になり、「LIFEアイコンの取得」や「端末認証用の一時パスコード」が不要となるなど、現場の利便性は向上するとしています。
しかし、「入力負担が大きい」など、端末操作そのものに苦慮している事業所も一定程度ある中では、新たなマニュアルを確認するというだけでも、「もう少し様子をみたい」という心理の引き金になりかねません。
2024年度からは、介護サービス事業者経営情報の提出が義務化されました(現在はシステム改修のため停止中ですが、改修後の対応も気になります)。処遇改善加算に関しては、ケアプランデータ連携システムへの対応や生産性向上推進体制加算を算定するためのデータ提供など、オンライン対応の機会が増えています。事故報告書なども、多くの自治体でオンラインでの報告が主流となっています。
いずれも、データ提出に必要な電子申請システム(GビズIDなど)に対応できれば、確かに大きな手間ではないかもしれません。しかし、デジタル格差の中で、これらの積み重ねがもたらす影響には注意が必要です。
LIFE議論は、資源の過不足とリンクさせて
いわゆる介護DXに追いついていない事業所・施設が、一定程度あるのは事実です。制度面でのデジタル化が加速する環境下では、いったん出遅れるとなかなか追い付けず、加算取得の意欲も低下して対応コストの確保も補助金頼みとなります。そのために、一部の事業所・施設で、さらに対応が後手に回るという悪循環に陥る懸念もあります。
昨今では、専らデジタル対応を任せていた職員や事務職員が、(より高い賃金を求めて)培ったスキルで大規模法人や他産業に転職したという話も聞きます。小規模事業所ではシステムの構築や対応を特定の従事者に任せきりにするケースもあり、その人がいなくなるとたちまち対応できなくなるという構図です。
介護DXによって現場の負担軽減やサービスの質向上を目指すビジョンは、ますます主流となるのは間違いないでしょう。しかし、それが「資源の淘汰」を生み、地域の安心を脅かす状況につながれば、「事業者努力が足りない」と言って済む話ではありません。
要は社会保険に対する信頼にかかわる問題です。今後のLIFE施策のあり方についても、サービス資源の過不足状況にどのような影響を与えているかという点をリンクさせながらの検討がますます求められそうです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。