
財務省の財政制度分科会が、2026年度の議論をスタートさせています。ここでの提言は、社会保障審議会における2027年度改定に向けた議論はもちろん、結論が先延ばしとなっている「2割負担者の範囲」にも影響を与えます。そうした中、今回注目したいのは、ケアマネをめぐる報酬のあり方についてです。
ケアマネジメントへの利用者負担導入の今後
4月28日の財政制度分科会では、ケアマネジメントをめぐって「利用者負担」とともに「給付のあり方」が提示されています。
前者の「利用者負担」をめぐっては、今国会に提出されている介護保険法等の改正案の中の「登録制の住宅型有料ホーム」のケアマネジメントについてふれています。
このケアマネジメントを担うのが、今法案で位置づけられた「登録施設介護支援(もしくは予防支援)」です。この新たな相談支援類型に関し、同法案では「利用者負担として利用料の1割を求める」としています。
財政制度分科会では、この「1割負担」について「確実に導入すべき」としています。気になるのは、その対象として住宅型有料老人ホーム全般を視野に入れていることです。
財務省としては、今回の登録制有料ホームへの1割負担導入を皮切りに、住宅型有料ホーム全般へと利用者負担を拡大し、その後に居宅介護支援全般での「利用者負担導入」を再び提言に上げてくることが予想されます。
ケアマネジメントの給付のあり方にも言及
もう1つ注目したいのが、後者の「ケアマネジメントの給付のあり方」についても踏み込んだ意見が付されていることです。
現行の居宅介護支援(予防支援含む)の報酬体系は、要支援1・2と要介護1・2、要介護3〜5の3段階で「利用者の要介護度が進むにつれて報酬が高くなる構造」になっています。これに対し、「利用者のwell-beingや給付費抑制の観点」から「要介護度の改善を促進する構造にすべき」としています。
そのうえで、「ケアマネジメントの報酬における自立・要介護度改善への(報酬上の)インセンティブ付けを検討すべき」というのが財務省側の提言です。利用者の状態改善等のインセンティブを介護報酬に反映させるという考え方は、かねてから厚労省の審議会でも出されていて、一部の加算(ADL維持等加算など)ではすでに反映されています。
しかし、ケアマネ業務の方向性として、「その人らしい生活への実現に向けた課題解決」と「自立度・要介護度の改善」は必ずしも一致するものではありません。ケアマネジメントの根本にかかわる問題でもあるゆえに、現状では、要介護度による「サービス調整の手間」を考慮しつつも、報酬段階の設定は最小限にとどめているのが現状です。
財務省が提示したデータをどう見るか?
このケアマネジメントの報酬構造に対し、財務省が改めてメスを入れるべきとしたことで、今後の介護給付費分科会の議論にも影響を与える可能性が高いといえます。
ここで財務省側は、「ケアマネジメントの基本報酬と(ケアマネの)労働投入時間」の関係を示すデータを提示してきました。これによれば、要支援1と要介護5の比較で、基本報酬は3倍高い一方、労働投入時間は1.4倍増にとどまっています。
このデータ提示からは、2つの意味が読み取れます。1つは、「ケアマネの労働時間の増加以上に、基本報酬が上がっている」という点。もう1つは、「ケアマネの労働時間増との比較において、予防給付と介護給付の報酬に差があり過ぎるのではないか」という点です。
もちろん、後者だけなら「介護給付と比較して予防給付の報酬が低すぎる」という見方ができます。財務省が重度化防止に力点を置くのであれば、「予防給付の評価をもっと上げるべき」が自然な主張と言えるでしょう。
ケアマネ向けの生産性向上推進体制加算⁉
しかし、前者の「労働投入時間に比べて、報酬が高い」という考え方が前面に出ると、「重度化防止に向けた労働投入のあり方を評価すべき」という主張につながりやすくなります。つまり、財務省としては、「基本報酬を抑えたうえで、重度化防止の効率性を問う加算など新たなインセンティブを設けるべき」と主張を打ち出す意図があることになります。
現時点で、その具体的な方策は示されていませんが、すでに財務省側に何らかの腹案があると考えていいでしょう。たとえば、2027年度予算の概算要求というタイミングに合わせ、今後の財政制度分科会で打ち出される可能性を頭に入れておく必要がありそうです。
1つ注意したいのは「well-being」という概念が出てきたことです。これは「身体的、精神的、社会的に満たされた良好な状態」を指しますが、いわば利用者のQOLと密接に関係します。QOLといえば、生産性向上推進体制加算の要件指標の1つ「WHO-5」等の活用が想起されます。こうした指標の活用により、(重度化防止に向けた)生産性向上も含めて新たな加算などが提案されるかもしれません。
となれば、現場や職能団体として「何をもってケアマネジメントの評価とするのか」、あるいは先に述べたように「予防給付の評価をもっと上げる方が先決ではないか」という対抗案を用意しておくべきかもしれません。どのような案が財務省側から出されようと、揺らがない土台づくりを目指したいものです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。