
2027年度の介護報酬・基準改定に向け、個人的に着目しているポイントの1つが、若年性認知症の利用者に向けたサービスのあり方です。若年性認知症の人については、通所系・居住系・小多機系等で受入れを評価する加算がありますが、今後のニーズ動向を見すえた場合の課題はどこにあるでしょうか。
厚労省が示した2020年の最新統計に注目
若年性認知症は、64歳以下で認知症を発症したケースを指します。あくまで年齢による定義ですが、その年齢層は就労者も多く、その就労の継続や、その人が家計を支えている場合の世帯の生活費をいかにまかなうかなど、多様な支援のコーディネートが必要です。
また、40~64歳であれば、介護保険の第2号被保険者として介護保険サービスが使えます。通所介護(もちろん、認知症対応型も含む)や認知症GH、小規模多機能型などでは若年性認知症の利用者の受入加算も設けられていて、対象者には専属の担当がつきます。
その若年性認知症の人の数ですが、2020年3月の最新調査によれば、3.57万人と推計されています。その前の調査は2009年までさかのぼりますが、その時は3.78万人でした。約10年前との比較では減少していますが、これは64歳以下の人口減少によるものです。
一方で、人口10万人あたりの有病率は、2009年は47.6人でしたが2020年には50.9人まで増加しています。これらのデータは、あくまで一部地域の医療機関や施設等での調査をもとにした「推計」に過ぎません。その点では、実際の有病者数や有病率は、さらに高い数字になっていることも考えられます。
就労継続が主流という中での介護保険の役割
ちなみに発症年齢ですが、2020年調査では平均54.4歳。これは2009年調査の51.3歳から3歳ほど上昇していますが、就労しつつ家計を支えている人もいる年齢であることに変わりはありません。こうした就労中の人への支援となった場合、若年性認知症支援コーディネーターと両立支援コーディネーター等との連携による就労継続が支援の中心となります。
ただし、認知症(5割以上がアルツハイマー型認知症)が進行すると、退職したうえで障害福祉サービスの就労継続支援などの活用につながることもあります。この場合、本人の状態などによって「一定の支援のもとでの雇用契約を結ぶ」(A型)こともあれば、「生産活動を行ないつつ工賃を受け取る」(B型)という選択がなされたりします。
では、介護保険サービスはどこでかかわることになるのでしょうか。一例としては、障害福祉サービスの就労継続支援等を活用しつつ、介護保険の通所系サービスを併用して機能訓練などを行なうといったケースが見られます。介護保険の現場では、地域交流などを進めつつ、本人のさまざまな地域活動への参加機会を構築するという取組みもあります。
介護保険サービスの社会的価値も高まる⁉
こうした就労継続支援や地域活動の場との連携を通じて、介護保険サービスの役割や立ち位置が明確になるとします。それにより、本人の「どのような人生をおくりたいか」という意向を叶えるうえで、介護保険サービスの社会的価値も高まることが期待されます。
実際、若年性認知症の人(2号被保険者)の要介護認定の申請率は、障害福祉サービスの利用が先に立ちがちな割に、8割近くという調査結果も見られます。問題は、受入れ側の事業者が、当事者のニーズに応えられるだけの体制を取れるかどうかにあります。
先のように、障害福祉サービスの就労継続支援との併用となった場合、障害福祉側の事業所との連携を通じて、「(介護サービス側の)自事業所に求められているものは何か」を明確にする必要があります。本人にとって、異なる事業所間での太いつながりが実感できることが強い安心を生み出すことになります。
また、若年性認知症の人の多くは、新しい認知症治療薬への関心も高く、定期的な通院による投与を受けていることもあります。そうなると、「本人にとってどのようなケアが適切か」を検討する際に、通院先の医療機関との連携もより重要になってくるでしょう。
認知症基本法を追い風としながら…
いずれにしても、若年性認知症の人へのケアに注力する中で、その人の生活範囲や事業所としての連携の範囲が大きく広がる可能性が高まります。これを1つのステップとして、知見・経験などの面でも、認知症ケアの現場をより豊かにすることができるはずです。
しかし、それを実現するには、やはり手厚い人材の確保・育成が必要です。たとえば、担当ケアマネとともに、利用者の生活圏をめぐってのフィールドワークも増やすことが望まれます。事業所内で、そのミッションをこなせるだけの人材が確保できるのかといえば、現状ではやはり厳しいかもしれません。
その点でも、若年性認知症の人への対応の充実を、介護保険全体の再生に向けた1つの突破口にできないものでしょうか。
これから介護給付費分科会で、サービスごとの論点提示が本格化します。「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」も制定されている中で、これを今改定の根拠法としつつ、各種支援団体からのヒアリングも交えながら大きな議論につなげていきたいものです。
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◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。