「算定率の低い加算」に付きまとう、 国の理念と現場の実情とのギャップ

介護報酬について、2024年度改定時にも指摘されていたのが「加算の整理」です。利用者にとっての分かりやすさや介護現場の負担軽減の観点から、たとえば「算定率の低い加算」をどのように見直すのか。次期改定に向けた議論でも主要な論点にかかげられています。

「算定率が低い」からと「整理」する前に…

算定率の低い加算の場合、報酬体系の簡素化という観点から「廃止すべき」という意見も浮上しがちです。ただし、加算によっては、算定対象となる利用者は少なくても、その利用者にとっての貴重な受け皿形成に役割を果たしているものもあります。

たとえば、認知症関連では、若年性認知症者受入加算や認知症行動心理症状緊急対応加算など。看取り関連の加算でも、サービスによって算定率は低いものもありますが、介護サービスの地域ニーズに対する真価が問われるケースとして、報酬上でしっかりと評価するしくみは引き続き求められるでしょう。

一方で、利用者の自立支援・重度化防止の強化を目指した加算を中心に、どちらかというと理念だけが先行し、要件を満たすための現場の体制が追いつかずに低算定となっていると思われるものもあります。代表例の1つが、生活機能向上連携加算でしょう。

軒並み低算定の生活機能向上連携加算

この生活機能向上連携加算ですが、ここまでの介護給付費分科会の提示データを見ると、事業所算定ベースでは、小規模多機能型でI・IIともに1.3%。短期入所生活介護でIが0.1%、IIで2.2%。地域密着型通所介護でIが0.0%、IIで2.3%にとどまっています。

ご存じの通り、この加算は外部のリハビリ職との連携により、現場の機能訓練の質の向上を視野に入れたものです。個別の機能訓練を実施する際、リハビリ専門職の確保に苦慮する事業所も多い中、「外部連携」によって訓練効果の底上げを図るという意図もあります。

そうした制度設計の理念は分かりますが、「外部連携」さえ進めれば「内部での人材確保の困難さをカバーできる」という単純なものではありません。外部連携となれば、組織風土の異なる中で働く人との協働となる点で、双方の溝をどのように埋めて円滑な連携につなげていくかというすり合わせが必要です。

そのすり合わせには、算定を目指す事業所において「渉外担当」を配置する必要があります。多くの場合、現場の管理者が担うことになると思われます。しかし、利用者の重度化や人材不足による兼務の拡大などにより、管理者業務は拡大の一途をたどっています。

「渉外実務」を評価する前提が必要では?

そうなると、「内部における利用者の安全確保等」が最優先となり、外部の他機関・他職種との「渉外業務」などは後回しにならざるを得ないのが実情でしょう。これは、生活機能向上連携加算に限った話ではありません。

たとえば、通所介護における栄養アセスメント加算なども、口腔・栄養スクリーニング加算Iの倍以上の単位ですが、算定は芳しくありません(2.8%。地域密着型で1.1%)。要件として、外部連携を含めた管理栄養士の確保が必要ですが、ここでも外部連携にかかる「すり合わせ」がネックとなりがちです。

この栄養アセスメント加算が2021年に誕生した際、厚労省は「地域の栄養ケア・ステーション(日本栄養士会や都道府県栄養士会が設置・運営)」の存在が加算算定の大きなサポート役を果たすことを期待していました。

確かに、地域の高齢者の栄養改善にとって重要な拠点ではあります。しかし、通所介護の現場からすれば、やはり「コンタクトをとって、相手と交渉しつつ、具体的な連携上の実務ルールを詰めなければならない」といった実務を避けることはできません。

こうして見ると、今後「算定率の低い加算」を整理・統合するとしても、この「渉外」実務をどう機能させるかという点をサポートしない限り、実情は変わらない恐れがあります。

むしろ、さまざまな場面で多機関連携が不可欠な時代だからこそ、「(外部連携を担う)渉外担当」の配置を前提に、基本報酬の上乗せや処遇改善加算の加算率への反映を考える必要があるでしょう。「渉外」を介護事業運営の基盤に据える考え方が求められるわけです。

「効率化」と「現場の納得感」との間の溝

もう1つ注意したいのが、外部連携に際しての「ICT活用」等による実務緩和の考え方です。先の生活機能向上連携加算でいえば、2021年度に「ICT等を活用したリハビリ職との連携」を可とする区分Iができました。

ところが、先に見たように通所介護では、現場でのリハビリ職等との「面談」を要するIIの算定率が5.6%なのに対し、「ICT連携」で可とするIは0.0%です。もちろん、個別機能訓練加算を算定していない場合、IIはIの2倍の単位となるので、その点も要因かと思われますが、「連携の効率化」が算定のすそ野を広げる効果に至っていないのが実情です。

これは「ICT活用に慣れていない」という点もさることながら、現場としての「連携の安心感(納得感)」が「面談」でこそ満たせるというマインドも影響しているのかもしれません。このあたりも、「効率化」という理念と「現場の安心感・納得感」という実情とのギャップがうかがえます。今後の加算の整理では、こうしたギャップをいかに埋めるかを、重点的に議論することが求められそうです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。