
今国会で、改正介護保険法等が可決・成立しました。今回の改正法では、異例とも言える27もの付帯決議がなされています。付帯決議に法的な拘束力はありませんが、法施行後の制度運営に対して「国会として注文をつける」という意図を表明したものです。その付帯決議ですが、注目点はどこにあるのでしょうか。
膨大な付帯決議から浮かぶキーワード
今回の付帯決議に目を通すと、いくつかのキーワードが浮かんできます。1つは、現場への影響にかかる十分かつ継続的な「把握・検証」。2つめは、介護従事者に加え地域福祉を支える関係者にかかる「負担の軽減」。3つめは、必要な「財政支援措置」の検討です。
1つめの「把握・検証」では、たとえば中山間・人口減少地域における特定地域サービスについて、「指定状況、サービス提供状況、および質の評価について、国が検証を実施し公表すること」としています。また、「サービスの質および職員の負担への影響を十分検証すること」という文言もあります。
また、ケアマネ関連では、新たな研修制度の実施にあたり、「ケアマネの就業継続、復職の状況、ならびにケアマネジメントの質や利用者への影響」について、やはり「継続的な実態調査」を求めています。その結果を踏まえて「必要な措置を講ずる」ともしています。
「処遇改善」に向けた方策についても明記
また、2つめの「負担軽減」については、やはりケアマネの新たな法定研修について、「実質的な負担の継続にならない」ような措置(一元的な教材作成や研修の短時間化など)を求めています。また、研修にかかる「費用負担」についても、その軽減のための補助制度などの見直しも求めています。
3つめの「財政支援」については、上記のケアマネにかかる「研修の費用負担軽減にかかる補助制度」をはじめ、中山間・人口減少地域における「包括的な評価のしくみ」に関連した「財政支援措置」などがあげられます。
その財政支援の前提として、立地状況による「移動時間等にかかるコストや人材確保に必要な賃金水準等」を踏まえた報酬体系のあり方を、「労使等の関係者の参画する場」で検討することを求めています。そのうえで、特定地域にかかる財政上等の負担が著しく増加することのないよう、「調整交付金の機能強化や地域医療総合確保基金等の拡充」に向けた「財政支援措置」の検討も要請しています。
さらに注目したいのは、今改正法で直接的には触れられていない処遇改善に向けた方策も、付帯決議で明記されていることです。たとえば、近年の物価上昇や(他産業の)賃金上昇に「適切に対応する」ため、2027年度改定において「処遇改善や経営の安定、生産性向上に全力で取り組むこと」というものです。
付帯決議の履行が実現するためのポイント
上記については、「制度の持続性の確保」という条件付きや「生産性向上」も盛り込まれているという点で、ストレートに「処遇改善」だけを求めたものではありません。
それでも、今改正法の多くの施行タイミングで実施される「2027年度報酬改定」との関連を紐づけたことは、改正法の施行が現場の処遇悪化や経営の不安定化につながるのを防ぐ意図が盛り込まれたことになります。
もちろん、冒頭で述べたように付帯決議に法的な拘束力はないので、仮に付帯決議の内容が履行されないとしても、政府に対して問われるのは「道義的な責任」に過ぎません。
ここでポイントとなるのは、改正法の施行には、省令や規則の制定を検討する場(各種審議会や検討会など)の開催が速やかに必要になることです。そのうえで、それらの施行を担保するための予算編成も、8月の概算要求を皮切りに年末まで続けられます。
また、各種審議会では改定が一段落した後にも、先に述べた「実態把握・検証」を行なうとして、その作業をただちにスタートさせることが必要です。これが滞ると、国会で「付帯決議の軽視」が指摘され、年明けの予算審議の円滑化を阻むことにもつながります。
地方からも付帯決議に基づく要望が続々と?
いずれにしても、政府内・国会内で、付帯決議の内容を意識せざるを得ない作業工程は、これから途切れなく続くことになります。
その間に、たとえば介護給付費分科会では、各職能・業界団体によるヒアリング(9・10月あたり)も行われます。各団体としても、今回の付帯決議の内容を審議会への要望に絡めてくる可能性もあるでしょう。
さらに今改正法は、中山間・人口減少地域への施策をはじめとして、条例制定をはじめとする「地方の主体性」が強く問われる内容となっています。そのため、各地方議会での「改正法への対応」に向けた審議を通じ、国への要望も激しさを増すことが予想されます。
直後となる2027年4月には、統一地方選も行われます。特に高齢化が著しく、サービス人材確保が難しい地域では、国に対していかに強く「要望」できるかが、同選挙結果を左右するカギとなることは確実です。
介護事業にかかわる人々としても、今回の付帯決議に目を通しつつ、地域のサービス基盤整備の主体性を、地方の首長および議会に向けて問うことが重要となります。2027年度の制度改正を現場にとって適正なものとするため、現場ができることを考えたいものです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。