介護現場に決定的なダメージとなりかねず? 「地域区分」改定にこれまで以上の注視を

2027年度改定では、各報酬単位とともに、実際の給付額を決定する「地域区分(1単位あたりの単価を決定する地域ごとの上乗せ割合)」も見直されます。現行で地域区分は、民間の賃金水準を反映した公務員の地域手当に準拠しています。この見直しが、介護事業経営にどこまで影響を与えるのでしょうか。

地域区分を左右する公務員手当の動向

現場の多くで介護事業経営の厳しさが増し、介護人材確保に向けた賃金アップもままならない状況が続いています。そうした中では報酬単位もさることながら、1単位あたりの単価(1単位=10円からの上乗せ)を決定する地域区分に対して注目が集まります。

まずは、その地域区分を設定するうえでの基準となる「公務員の地域手当」がポイントとなります。この公務員の地域手当の見直しは、国家公務員と地方公務員に分けられます。

まず、国家公務員について、2024年8月の人事院勧告で以下の内容が示されました。1つは、級地区分を設定する地域の単位を、市町村単位から基本的に都道府県単位へと広域化すること。もう1つは、級地区分の段階を7区分から5区分に見直すことです。これにより、地域手当の支給について、2025年度から段階的な引上げや引下げが行われています。

一方の地方公務員についても、上記の国家公務員の見直しを基本としつつ、こちらは総務省の方針を踏まえて各市町村で地域手当の設定を行なうことになっています。

ちなみに、国の基準を上回る地域手当を支給する自治体に対し、財政的余裕があるという観点から、これまで超過分に相当する特別交付税の減額措置が取られてきました。この減額措置が、2027年度から廃止されています。

これにより、市町村によっては、国家公務員を上回る独自の支給割合を設定する自治体が増えることが予想されています。

市町村は経過措置や特例を求める流れ?

このように、地域区分の設定をめぐる状況にさまざまな変化が見られます。この流れの影響が気になりますが、今後の議論のたたき台となる市町村への意向等の調査は、今年の2~3月にすでに実施されています。

意向等の調査と述べましたが、ここでは「意向」に加え、各市町村の公務員の地域手当の支給割合等の調査も行われます。先に述べたように、国家公務員を上回る支給割合をとる自治体がどれだけあるのかも気になります。

もちろん、地方財政も厳しさを増しているので、特別交付税の減額措置が廃止されたとはいえ、引上げに踏み切らない自治体も多いでしょう。一方で、人口減少や民間企業の賃金増によって、地方公務員も人員不足が深刻化しつつあります。そうした中では、引上げの潮流が大きくなることも想定されます。

考えてみれば、こうした構図は介護現場とよく似ています。自治体によっては、給付費の大幅上昇につながるような地域区分設定には難色を示す声も上がりそうです。しかし、「地域のサービス資源の維持が困難になる」という課題は、多くの地域で高まっています。その点では、公務員手当に準じる動きの一方で、地域によって経過措置や特例のち密な設定を求める声がより強まるかもしれません。

人事院勧告に基づいた場合の厳しい試算

では、仮に先の人事院勧告にもとづく級地区分の変更や手当の段階的引下げなどがそのまま適用された場合、現場にはどのような影響がおよぶのでしょうか。この点について、今年6月に全国介護老人福祉施設協議会が厚労大臣にあてた要望書の中で、「減収が見込まれる地域」への影響の試算が示されています。

それによれば、特養ホーム関連の平均的なモデル(特養80床、短期入所20床、通所介護40名)において、最大で年間約1,300万円の減収が見込まれるとしています。この場合の減収率は3%強におよびます。

これは、あくまで級地区分変更によって、もっとも影響を受ける地域のケースです。ただし、同協議会の試算では、多かれ少なかれ減収が見込まれる地域は、25府県115市町村にのぼるというデータも。このことは、介護給付費分科会において8月以降に予定される地域区分にかかる議論でも、「厳しい状況」として指摘されるのは確実でしょう。

今改正法の特定地域施策との関連にも注意

こうした試算を受け、老施協の要望書では「サービス事業者の声によく耳を傾け、地域の実態を十分に考慮した慎重な議論」を求めています。温度差のある自治体の意向だけを中心に議論が進んでしまうことに、クギを差している様子が見てとれます。

ちなみに、今回の法改正で、特定地域サービスや(地域支援事業による)特定地域居宅サービス等事業が設けられました。ここで道府県条例による人員基準の緩和や、事業費による報酬の調整が行われる可能性もあります。

懸念されるのは、この特定地域の設定に「地域区分」の議論が絡まないかという点です。仮に自治体側に、事業者の収入減の調整手段として特定地域サービス等の導入を視野に入れる発想が生じるとなれば、地域の介護サービス資源に大きな歪みをもたらしかねません。

そもそも、地域区分を公務員の地域手当に準拠させるしくみについて、そのままでいいのかどうかも問われる時代かもしれません。人件費を含めた経営コスト等の状況を勘案し、論点の幅を広げることが求められます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。