基本報酬+処遇改善のダブル引上げは? 資源縮小が懸念される居宅支援改定の行方

2027年度改定に向けた介護給付費分科会で、居宅介護支援が議題に上がりました。居宅介護支援については事業所数・ケアマネ数がともに減少傾向にあり、ケアマネジメントの質を維持するうえでの課題は山積みです。基本報酬等の引上げ規模はどうなるでしょうか。

居宅介護支援はピーク時から約1割減少

分科会で示されたデータでは、2025年度の居宅介護支援事業所数は、ピーク時の2018年度から約1割減少しています。一方、介護予防支援は、2024年度に居宅介護支援事業所の直接指定が可能になったことを受けて大幅増加となりました。ただし、居宅介護支援との重複が多いことを見込めば、居宅介護支援の資源縮小が深刻なことに変わりはありません。

ちなみに、ケアマネ従事者数については、2022年度までの減少傾向にいったん歯止めはかかっています。しかし、増えたのは施設系・居住系等に勤務するケアマネが中心で、居宅介護事業所に勤務するケアマネは、依然として減少傾向を示したままです。

いずれにしても、居宅介護支援事業所にケアマネを集め、その継続勤務を促しつつ事業所の存続につなげていくには、他サービスを上回る基本報酬の引上げと処遇改善加算の加算率アップが第一のテーマとなります。

要介護度にかかわらず基本報酬フラット化?

ただし、厚労省が「無条件での引上げ」に踏み込むかといえば、先行きは決して明るくはありません。背景の1つは、今回議論の時点から「ケアマネ1人あたりの労働投入時間」のデータが持ち出されていることです。

この「労働投入時間」といえば、先に財務省審議会(財政制度分科会)での提言が思い浮かびます。そこでは要介護度の段階別(要支援、要介護1・2、要介護度3以上)の状況として、基本報酬の伸びが労働投入時間の伸びの2倍以上であることが指摘され、それをもって報酬構造の見直しを求めています。この財務省側の指摘を、厚労省としても「無視できない」という姿勢がうかがえます。

もちろん、財務省が求める「要介護度の改善促進等を促す体系」などは、その指標設計の困難さを考えれば、厚労省としても踏み込みづらいでしょう。その代わり、現状で要介護者に関して2区分となっている単位差をフラット化する案が出てくるかもしれません。

つまるところ、少なくとも要介護1・2の基本報酬を要介護3以上に合わせ、それをもって基本報酬の引き上げとする考え方です。分科会では、特定事業所加算Iの重度者要件見直しを求める意見も上がっていますが、それと連動させ基本報酬を再編するのはあり得る話です。

「平時からの対医療連携」がポイントに?

もちろん、要介護度が高くなることで、入院リスク(事業者にしてみれば、利用者の入院による収入減リスク)が高まるという指摘が出てくる可能性はあります。そうしたケースでの経営の不安定化について、対医療連携にかかる加算等の引上げでカバーするといった議論も付随してくることが考えられます。

その点に関し、利用者の状況にかかわらず、医療機関との平時からの連携を評価する特定事業所加算の新要件も議論に上がるかもしれません。以前述べたように、2026年度の診療報酬改定で介護支援等連携指導料に新区分が誕生し、「居宅介護支援との平時からの連携」が要件となりました。居宅介護支援側もそれと連動させるという位置づけです。

あるいは、施設等で協力医療機関との連携強化が図られたように、一定規模以上の居宅介護支援事業所に「協力医療機関との連携」を義務づけ、その実務への評価を基本報酬に組み込むといった方法も考えられます。

ここまでを整理すると、(1)基本報酬は要介護に関係なく単位をフラットにする、(2)一定規模以上の事業所については「平時からの医療機関との連携」を義務づけたうえで高単位の基本報酬区分を適用するという具合です。(2)については、国が推進する事業所の大規模化という流れとも一致します。

ケアプランデータ連携システム動向にも注意

もちろん、現場としては、「(1)のようなフラット化や(2)のような大規模事業者優遇だけでなく、全事業所の基本報酬をさらに底上げすること」を求めたいのが実情でしょう。

一方、処遇改善加算の加算率ですが、(居宅で相談支援業務を担う生活相談員がいる観点から)通所介護レベル(加算IVで約4倍増)への引上げが1つの目安かもしれません。

ただし、これらの実現に向けて、ポイントとなるのが生産性向上の考え方です。分科会では、担当件数別や業務別の労働投入時間データも上がり、この点からもケアマネの生産性向上が視野に入っているのは確実です。

たとえば、今分科会のデータでも、2025年度補正予算による補助金支給以降、「(そこで要件とされた)ケアプランデータ連携システム」の導入率が約35%上昇したことを強調しています。グラフ上では、臨時改定以降6~7割に達する希望的観測もうかがえます。

仮に、今年夏以降に7割近くに達したとすれば、「ケアプランデータ連携システム(あるいは介護情報基盤)の活用」がいよいよ運営基準に明記されるかもしれません。そのうえで、基本報酬や処遇改善加算の加算率を底上げし、「未活用」の場合は運営基準減算を適用するという具合です。これも、今後の議論のポイントとして見定める必要がありそうです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。