
2025年の「国民生活基礎調査」の結果が公表されました。今回は3年ごとの大規模調査で、世帯の「介護状況」も含まれます。調査から浮かぶのは、「介護を家族が担うこと」の限界がより顕著になったこと。今改正で「頼れる身寄りがいない高齢者」の支援策が講じられましたが、よりち密な対応が問われます。
高齢者夫婦の減少分が独居ケース増加に?
今調査の注目点の1つが、「要介護者のいる世帯」の構成です。ここでは「単独世帯(つまり、要介護者が独居の状態)」が33.2%と、3年前と比べて2.5ポイントアップしました。これは、介護保険スタート以降もっとも高い数字で、過去の推移から3年後(2028年)には35%に達することも考えられます。
一方で、「核家族世帯(夫婦のみ世帯のほか、親と未婚の子のみの世帯)」が40.2%と1.9ポイント減少しました。そのうち「夫婦のみの世帯」が1.6ポイントの減少なので、配偶者に先立たれるなどの事情により「独居となったケース」が目立つことがうかがえます。
ちなみに、「三世代同居」は9.0%と初めて1割を下回りました。介護保険スタート直後と比較すると、3分の1以下です。当時から業務に就いていたケアマネにとっては、ここでも世帯状況の激変が実感できるでしょう。
独居要介護者でも、要介護3以上が約2割
さて、「単独」世帯の要介護者ですが、その要介護度は決して低くはありません。本人が「要介護」のケースは54.7%と5割を超え、「要介護3以上」も約2割となっています。
もちろん、本人が有料老人ホームなどに入居しているケースもあるでしょう。ただし、主な介護の担い手を見ると、「事業者」が16.0%と多いものの、「別居の家族等」も13.4%にのぼります。3年前との比較では、後者(別居の家族等)の伸びが目立ちます。
これらのデータから、要介護者の「単独世帯」が3割超えとなる中、介護サービス事業者の伸びだけでは十分に担うことができず、「別居の家族等」による「通い介護」がじわじわ増えているという様子もうかがえます。
なお、高齢者夫婦等のケースでは、「要介護者」と「同居の主な介護者」の組み合わせにおいて、「75歳以上同士」が37.1%と前回調査から1.4ポイント上昇しました。これは、介護保険スタート直後から倍増の数字です。
75歳以上となれば、「双方で介護保険を利用している(あるいは、そのニーズが高まっている)」ことも想定されます。
高齢者夫婦世帯のフェーズが変わりつつある
今調査結果から、要介護者のいる世帯への支援に問われることは何でしょうか。
要介護者がいる世帯については、介護保険のスタート直後から「高齢者夫婦のみ」や「高齢者と未婚の子ども」というケースがほぼ一貫して伸び続けてきました。ただし、今調査からうかがえるのは、こうしたケースが新たなフェーズに入ってきたことです。
それは、特に「高齢者夫婦のみ」の世帯で、介護する側・される側の双方の年齢層が上がり、「双方が要介護者となる」、あるいは「どちらかが亡くなる(または、施設に入るなどで別居の形になる)」というパターンです。
仮にですが、「双方が要介護者(もしくは、何らかの持病等があって一方が要介護に近くなる)」の状態で、どちらかが亡くなったりすれば、遺された人はそのまま「独居で要介護(あるいは、それに準じた状態)」となります。
もちろん、独居で元気だった人が何らかの原因で要介護になったというケースもあるでしょう。しかし、今回の調査を通して見えてくるのは、むしろここまで述べたような「高齢者夫婦世帯等のフェーズ転換」です。
「別居家族」のかかわり増にも注意が必要
ここで注意したいのは、「今は配偶者がいる」という状況でも、すでに「お互いが頼りにできる範囲は狭まっている」という点です。つまり、「頼れる身寄りがいない」というステップは始まっていることになります。
お互いに頼れる範囲が狭まれば、介護以外の身の回りの生活の不便さも増します。先の調査結果では、ここで「別居の家族」がかかわってくる様子も見られます。この場合、高齢者夫婦と別居家族の距離感にもよりますが、双方の「支援する・支援を受ける」のビジョンに微妙なズレが生じる可能性もあります。
そうなると、担当するケアマネは2つの課題を背負いがちになります。1つは、高齢者夫婦が募らせる生活上の不便さからシャドウワーク的なニーズが高まること。もう1つは、高齢者夫婦と異なる意向を持つ別居家族がかかわることで、それまでのケアマネジメントについて方向転換が求められる可能性です。
いずれもケアマネの重責を増やすだけでなく、ハラスメントの種にもつながりかねません。先に述べたように、今改正では「頼れる身寄りがいない高齢者等」への支援強化が図られ、そのビジョンにはケアマネのシャドウワーク負担等の軽減も視野に入ります。
しかし、「頼れる身寄り」があっても、高齢者夫婦が「準独居」とも言うべき状態に移行したり、別居家族の意向調整に振り回されれば、ケアマネの負担軽減の効果も限定されがちです。法改正で「ケアマネの業務負担は軽減される」と安易に見立てることなく、時代状況のさらなる変化を見極めつつ、次期報酬改定に着実に反映させる作業が求められます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。