利用者の健康リスクを脅かす近年の「猛暑」。 ケアマネ業務に与える影響も精査すべき⁉

梅雨明け以降、地域によっては40℃に達する猛暑日が続いています。屋内でも熱中症リスクが高まる中、特に身体的ダメージを受けがちな居宅の要介護者の状態に、ケアマネや訪問系従事者も十分な配慮が必要です。こうした気候変動等による実務増に対し、報酬上で何らかの評価は図れないものでしょうか。

エアコン使用控えがもたらす熱中症リスク

屋内での熱中症リスクを軽減するうえでは、適切なエアコン使用と十分な水分・塩分補給は欠かせません。エアコンについては、物価上昇が著しい時代に「電気代の節約志向」が働きやすく、ぎりぎりまで使用を我慢することで熱中症リスクも高まります。ちなみに、高齢者の場合は皮膚感覚の低下から暑さを感じにくくなる傾向もあり、エアコン使用等をさらに控えさせる要因となります。

国は、2026年7月1日から3か月間の使用分について、補助金による電気・ガス料金の支援を行なっています。使用者による申請は不要で、事業者の請求料金から補助金分が自動的に差し引かれます。標準的な家庭では、3か月分で5,000円ほど安くなるとされます。

ただし、たとえば電気代に関して差し引かれるのは、8月請求分からです。過去にも同様の支援策は図られているので、周知は広がっているとしても、利用者世帯によっては「知らなかった」というケースも想定されます。そうなると、最初の請求額反映の前の時点(猛暑のピーク)では、電気代を気にしてエアコン使用を控える人が出てくるかもしれません。

たとえば、利用者宅のエアコンが壊れたら…

そうなると、ケアマネとして、7~8月にかけてモニタリング訪問を強化し、電気代補助の説明とともに適切なエアコン使用を促すことも必要になります。自らがモニタリング訪問に赴けない場合は、訪問系のサービス担当者などに、水分・塩分摂取の再確認なども含めての周知依頼も求められるでしょう。

もちろん、このあたりの実務については、気候変動によって夏場の熱中症リスクが高まりやすい時代に、すでに事業所内で(あるいは地域の連絡会等を通じて)季節ごとの必須ルーチンに位置づけていることと思います。

とはいえ、猛暑日が長期化する中での「気がかり」の継続は、ケアマネにとって大きな負担であることに変わりはありません。

気がかりの中には、エアコンの使用・耐久年数により、突然故障することもあげられます。その場合に、短期間で修理・(買い替え機の)設置工事ができるのかが懸念されます。

以前から指摘される「ナフサ・ショック」もさることながら、2027年4月にエアコンの省エネ基準が引き上がる(基準を満たさないエアコンは製造・販売できなくなる)、いわゆる「2027年問題」により、基準引上げ前の駆け込み需要が生じているとも言われています。いずれも、エアコンにかかる工期が例年以上にかかる要因となる可能性があります。

利用者全体で一律にリスクが高まるケース

上記のような状況のもと、利用者から「エアコンが壊れた」などの連絡を受けたとします。自治体によっては、低所得の高齢者世帯に対してエアコン購入時の補助などを行なっています。こうした情報提供を含め、手続き(あるいは購入の支援)などをどうすればいいかという点も課題になりそうです。

これらの課題は、ケアマネのシャドウワークにかかる部分も多いでしょう。ケアマネの負担軽減を図るうえでも、特に今後は、猛暑に関連した課題を想定しつつ、包括を通じて地域の多様な支援機関に打診をかけておくことも必要です。このあたりは、地域全体の問題意識と機動力が問われる点です。

とはいえ、猛暑下の利用者の健康と安全を守るうえでは、入口時点でケアマネの専門性による課題発見が重要なことに違いはありません。担当する多くの利用者に、「気候」という同じリスク要因が同時に高まるなら、1件あたりのチェック過重はわずかでも、積み重ねによりトータルの業務負担は一気に膨らみかねません。猛暑下に移動回数が増加すれば、ケアマネ自身の熱中症リスクも高まります。

猛暑を想定した特定季節加算なども必要に?

こうした点を頭に入れた時、ケアマネおよび訪問系サービスに対して、特定季節加算のような報酬上の評価が必要かもしれません。季節ごとの利用者への健康リスク要因は他にもありますが、広範囲にわたって高齢者に重篤なダメージを与えやすいという点では、真っ先に検討すべき課題の1つといえます。

もちろん、広範囲にわたるリスクとなれば、昨今の物価上昇などへの配慮も必要です。たとえば、食費を抑えることによって栄養状態の悪化が懸念されれば、ケアプランにおける支援の方向性も変わってくるでしょう。

施設では食費の基準費用額の引き上げが行われましたが、居宅においても「物価上昇」を考慮した、報酬上の何らかの措置が求められる時代に入りつつあるといえます。

介護給付費分科会では、ケアマネの労働投入時間のデータが示されていますが、平均的かつ生産性向上に重点化したものが中心です。今回述べた気候や物価など、さまざまな社会的変動の中でケアマネ業務がどのような影響を受けているのか。ここにスポットを当てつつ、基本報酬等の引き上げに向けた視点の1つに据えることが必要になりそうです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。