
2026年7月28日に、熊本県熊本地方を震源とする地震が発生しました。特に揺れの大きかった自治体では、高齢化率が4割を超える地域もあります。ケアマネとしては、そうした地域の利用者の状況確認に追われる一方、部分的な交通の寸断や熱中症リスクの高まりも加わり、対応の厳しさが際立っています。
地震後の気象状況等で二次災害の危険も
8月5日時点で、災害関連死の疑いがある人も含めて亡くなられた方は38名、避難所へ避難されている方は7,269人にのぼります。亡くなられた方々にお悔やみ申し上げるとともに、引き続き避難されている方には、健康状態の悪化を防ぎつつ1日も早く元の生活が取り戻せるよう、心より願う次第です。
ライフラインの途絶がなおも続く地域がある中、気になるのは、今後の気象状況です。気象庁によれば、11日にかけて最高気温が35℃前後の日々が続き、同時に夕方から激しい雨が降りやすくなっています。同時に、強い勢力の台風13号の影響により、地域によっては降水量がさらに増えそうです。
屋外で活動される方々の熱中症はもちろん、地震後の降水によって地盤が緩み、土砂災害などのリスクも高まります。必要な薬が入手できない等で健康悪化が懸念される人も多いことに加え、こうした気象状況を踏まえたうえでの二次災害等の防止が強く望まれます。
利用者対応をめぐるケアマネ自身の安全懸念
こうした中、現地のケアマネとしては、各利用者の所在および安否の確認に始まり、避難所等での生活状況や健康状態などを適宜確認する責務に追われていると思います。
厚労省は、7月30日に「ケアマネジメント等の取扱い等」についての通知を出し、担当利用者だけでなく、在宅での一人暮らし高齢者など要援護高齢者等の状況・課題把握について、包括との連携による実施を求めました。また、避難所での相談支援や必要なサービス手配、被災にともなう利用者のケアプラン見直しなどに関しても周知を図っています。
なお、上記のケアプラン変更に際しては、サ担会議の簡略化(電話や文書での照会)など、柔軟な取り扱いも可能としています。このあたりは、過去の大規模災害の際の周知内容に準じています。現地のケアマネとしても、すでに十分心得ていることでしょう。
問題は、揺れの大きかった地域の一部で過疎化が著しく、交通も寸断された状況下、たとえば地域の避難所をめぐるだけでもかなりの労力と時間を要することです。気象状況による二次災害の懸念に加え、高温による熱中症リスクが高まるとなれば、当のケアマネの安全や健康の確保についても、国として十分な配慮に努めなければなりません。
10年前の熊本地震の時と何が異なるか?
ちなみに、当のケアマネの年齢状況を見ると、2024年度時点で60歳以上が約32%に達していて、10年前(2016年)の熊本地震の時から約1.7倍となっています。こうしたケアマネの年齢層の上昇に加え、過疎化にともなう利用者の所在をめぐるアクセスの困難さ、温暖化による熱中症リスクの増大などの変化もあります。これらを総合すると、ケアマネによる支援の環境は、過去の状況と比べても厳しさを増しています。
もちろん、度重なる大規模自然災害の中では、DMAT(災害派遣医療チーム)やDPAT(災害派遣精神医療チーム)、JDAT(日本災害歯科支援チーム)、そしてDWAT(災害派遣福祉チーム)など、さまざまなチームの構築が進んでいます。こうした多様なチームとの連携により、利用者の重度化を防ぐうえでの実効性は、時代とともに強化されていることは間違いありません。
ただし、現地のケアマネとしては、こうしたチームとの連携実績がまだまだ乏しいケースもあります。平時からのBCP策定やシミュレーションが十分に行われていても、時代に応じた連携ノウハウがブラッシュアップされないと、その実務自体が現場のケアマネにとって新たな負担となりかねません。
被災地の専門職支援が、今こそ重要な理由
いずれにしても、ケアマネ自身の心身面の負担やケアマネジメントをめぐる孤立状況を防ぐうえで、行政・包括が職能団体等と連携しつつ、現地での司令塔的な体制を構築していくことが望まれます。たとえば、担当ケアマネごとの利用者の情報(被災時の住まいの状況や避難の状況など)を一元化しつつ、特定のケアマネに多大な負担がかかっている場合に、サポート要員を迅速にコーディネートする機能なども求められるでしょう。
被災地における支援策では、もちろん多様なチームのかかわりには目覚ましいものがあります。一方で、過去の大規模災害を見ても、現地のケアマネによる発生直後からの迅速な実態把握が、その後の円滑な支援を推進する大きな力となった例は少なくありません。
その初期エンジンにあたる機能が、ケアマネの年齢層の上昇や環境変化によって厳しさを増しているとすれば、多様な支援チームがその機能を発揮できる土台の揺らぎにもつながりかねません。これはケアマネに限った話ではなく、人口減少地域を中心として専門職への負担が大きくなる時代に、その地域の専門職への支援強化が、ひいては被災地の住民支援の円滑化につながると言えます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。