ケアマネ危機。若年世代の人材がさらに減少。 後進確保のカギはやはり社会的地位の向上に

令和7(2025)年度の介護労働実態調査から、ケアマネに焦点を絞り、その働き方の実像に迫ってみましょう。すでに厚労省の検討会や審議会でも指摘されているのが、ケアマネ全体の高年齢化です。そこから派生する多様な課題とともに、今後の方策を考えます。

2040年には、ケアマネ平均年齢は65歳に⁉

介護労働実態調査では、回答者の属性として年齢層や介護関係の仕事の年数が示されています。あくまで「回答者」対象なので、就業者全体での実際の年齢データというわけではありません。それでも、経年変化をはじめおおむねの傾向を見ることはできます。

さまざまな場面で指摘されますが、介護関係のあらゆる職種の中で、ケアマネの平均年齢はトップです。今回の調査では、平均年齢が55.1歳。50歳代は、訪問介護員(51.1歳)やサービス提供責任者(50.5歳)も同様ですが、ケアマネが頭一つ抜けています。

経年変化でも、2023年度「53.6歳」⇒2024年度「54.3歳」⇒2025年度「55.1歳」と1年ごとに0.7~0.8歳上昇しています。この状況が続くとして、2032年前後には平均年齢は60歳代に。国が重視する2040年度には、平均年齢が65歳に達することが予想されます。

30歳未満のケアマネがついに「0%」

一方で、若年世代のケアマネがどれだけいるかですが、(あくまで参考数値ですが)今調査での「30歳未満」の年齢層を見ると0.0%。前年度では0.1%でしたが、ついに「0」という数字にまで減少したことになります。

もちろん、ケアマネになるには、介護や医療、各種相談援助における一定の経験年数が必要で、入職年齢も他職種よりは高くなりがちです。とはいえ、「30歳未満がいない」という状況は、将来的な専門職のあり方として望ましくはないでしょう。現在、国は実務経験年数の短縮を図る方向(5年⇒3年など)で検討を進めていますが、上記の「30歳未満」の増加にどこまで寄与するかは未知数です。

このように、ケアマネ全体の年齢層が上がる中、懸念されるのは「年齢とともに働き続けるのは困難」というケースが一気に増えることです。すでに、現状の離職率は9.5%。やはり相談援助を担うサ責や生活相談員(ともに7.8%)と比べると高くなっています。

一方で、ケアマネの採用率は12.4%で、これはサ責の8%、生活相談員の8.8%を上回っています。訪問介護員(14.5%)や介護職員(14.7%)と、ほぼ同水準の採用が行われていることになります。結果として、採用・離職による増減率はプラス2.9%と、サ責および生活相談員を大きく上回りました。

新規入職も事業所閉鎖等での移動が中心?

先に述べたように、「30歳未満がいない」という状況下で、一定の採用率および増減率が維持されているのはどういうことでしょうか。背景として考えられるのは、居宅介護支援事業所の減少にともない、ケアマネが勤務先の移動を強いられていることです。

たとえば、小規模事業所が経営難で閉鎖したり、大規模事業所に吸収・合併されている状況は、近年の事業所数減少から容易に想像できます。そうなると、採用は進んでも、それは新規にケアマネとなった人材ではなく、ベテランのケアマネによる転職の比重が高くなったことによると言えます。

人材のすそ野は広がっていないので、不足感は高いままとなります。今調査の不足感(大いに不足+不足+やや不足)を見ても、3年ぶりに全体で37%台に。気になるのは、「大いに不足」と「不足」の合計が過去5年で最高となり、深刻度が高まっていることです。

また、ケアマネの中心が50~60代となると、自身が親等の介護に直面するケースも増えがちです。今調査でも、「家族介護をしている・その可能性がある」という回答は、全職種の中でケアマネがトップとなっています。

今後は、加齢にともなう自身の持病(特に腰痛や関節痛など)も増える可能性があります。そうなれば、業務への支障も大きくなり、「フルタイム勤務が困難」というケアマネを増やす要因になりがちです。

DXよりもSXによる業界構造の変革が急務

こうした点を考えても、若年層の新規入職者をいかに増やすか、さらに、そうした人々をいかに早く即戦力に育てるかを、重点課題に押し上げることが必須となります。

現状のケアマネは、その年齢層の高さもさることながら、「介護関係の仕事の経験年数」が他職種と比べても著しく高く、「20年以上」が56.7%にのぼります。まさに「介護保険スタート時からの人材」が中心というわけです。

その点を考えた時、彼らの知見を社会に対して発信し、後進の人材確保・育成につなげていくことがカギとなりそうです。また、今データでは、ケアマネは他職種に比べて「社会的地位の向上」を求める意識が強い傾向も見てとれます。その中には、以前から論点となっている、ケアマネの完全な国家資格化なども含まれるでしょう。やはり、後進の確保・育成を見すえた現場の意向と思われます。

さらなる処遇改善は大前提ですが、加えて「知見の発信」および「社会的地位の向上」をいかに国としてサポートするかが問われています。これは生産性向上より先になすべき方向ではないでしょうか。DXよりもSX(ソーシャル・トランスフォーメーション)を目指すことの重要性に光を当てたいものです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。