登録施設介護支援は、果たして機能するか。 利用者の権利を脅かす新たな動きにも注意

登録施設介護支援(以下、予防含む)をめぐり、その報酬や基準を定める議論が、介護給付費分科会でスタートしました。2029年までの施行ズレ込みも予想されますが、いずれにせよ直前まで議論は紛糾しそうです。この新たなしくみは、本当に機能するのでしょうか。

相談支援の機能強化への期待は高いが…

登録施設介護支援の創設の目的とされるのが、住宅型有料老人ホームにおけるケアマネジメントの「独立性の担保」や「相談支援の機能強化」であり、課題となっている「囲い込みの防止」にも資するとされています。

このうち、「相談支援の機能強化」について考えてみましょう。現行の居宅介護支援に(基準等で)機能の上乗せを図り、それに見合った報酬が設定されるとすれば、新たな相談支援の類型は確かに意義があります。ホーム運営に際し、利用者のニーズが制限されがちな環境が生じているケースもあり、その状況を改善する機能が強く求められるからです。

改正法では、ホームの閉鎖性の解消を視野に入れつつ、「地域で自立した日常生活をおくるための活動参加の援助」を明記しました。これも、ホームにおける当事者中心のケアマネジメントを実現するべく、相談支援の機能強化を図る方策の1つと言えるでしょう。

利用者の選択肢は十分に確保されるか?

ただし、上記のビジョンを実現するには、やはり「ケアマネジメントの独立性」が十分に担保されていることが前提です。

これを登録施設介護支援によって担保するには、利用者による「数ある事業者からの選択」が明確に保障されなければなりません。この点については、登録制ホームの基準等で「自法人・関連法人等の事業者との契約強制」等を明確に禁止することになるでしょう。

一方で、その実効性を上げるには、地域に潤沢な事業者が存在することが必要です。その条件が整っていなければ、選択に資する事業者は限られることになるからです。

極端にいえば、以下のようなケースも想定されます。たとえば、在宅で介護保険を使い、なじみの担当ケアマネが付いている人が新規に入居するとします。入居先が近隣エリアなら、利用者としては、「引き続き同じケアマネに担当をお願いしたい」となるでしょう。

ところが、そのケアマネが所属する居宅介護支援事業所が「登録施設介護支援は行なわない」となれば、利用者は改めて事業者を探さなければなりません。仮に、ホームと同一・関連法人で登録施設介護支援を手がけているとすれば、(改めて探す手間を考えた場合)その事業者を選ぶ可能性も高まります。

居宅介護支援の「みなし指定」は可能だが

もちろん、居宅介護支援事業所は、一定期間(最長6年)は登録施設介護支援の「みなし指定」がなされます。先の事業者としても、担当する利用者が登録制住宅ホームに入居した場合、その利用者を継続して受け持つことが求められることになりそうです。

この場合、「みなし」期間のうちは、新たな人員・設備基準の規制がかからないことも想定されます。とはいえ、担当ケアマネが手がけるべき実務に運営基準上の「上乗せ」がなされれば、現場の業務負担が増える可能性は生じます。さらに、「1割負担」が発生するとなれば、利用者への説明や納得を得るうえでも、ケアマネの負担は増しがちです。

そうなると、「登録施設介護支援の指定は受けない」という事業者は意外に増えるかもしれません(今法では辞退申し出ができる規定あり)。仮に「居宅介護支援に準じた報酬が設定される」としても、先のケアマネ負担等との関連で事業者がどう考えるか気になります。

事業者にしてみれば、「利用者の新規獲得にも結びつく」というメリットはあるでしょう。それでも、「収益」に比べて「ケアマネの負担増」が上回ると見積もられれば、施行後も様子見が主流になるかもしれません。

登録施設介護支援で新たなビジネスモデルも

一方で、ホームと同一・関連法人の居宅介護支援事業所としては、いちはやく登録施設介護支援の指定を受ける可能性は高いと思われます。これまで、同一建物減算等があっても、囲い込み等は十分に抑えられてこなかったわけですから、今回の登録施設介護支援の場合でも、経営効率をある程度度外視しても、入居者のケアマネジメントを一手に引き受けたいという意向は強いはずだからです。

もちろん、あからさまに同一・関連法人が「引き受ける」となれば、行政のチェックも厳しくなります。そこで考えられるのは、登録施設介護支援を専門に扱う事業者の台頭です。仮に登録施設介護支援への「手上げ」が鈍い地域であれば、そこでホーム側に接近して利用者確保に動くことも考えられます。

自治体としても、困るのは登録制ホームの入居者のケアマネジメントが「宙に浮く」ことです。そうなれば、特定の事業所がホームの入居者の担当を一手に引き受けたとしても、「ホームと同一法人(あるいは、明確に関連性が認められる法人)」でない限り、チェックも緩やかになりかねません。

居宅介護支援事業所の減少自体が、利用者の選択権を揺るがしている現在、新たなビジネスモデルがその間隙を突いて伸びてくることは十分想定されます。それが、利用者の権利をさらに脅かすことにならないか。こうした状況も見すえつつの議論が求められます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。