
2027年度介護報酬・基準改定に向け、介護給付費分科会で事業者団体等による「意見交換会」が実施されます。中山間・人口減少地域でのサービス提供のあり方など、多様な制度改正が絡む中で、これまでの「関係団体ヒアリング」を発展的に見直すとしたものです。
間もなく始まる意見交換会。新たな候補は?
今回の法改正は、地域によって基準や報酬のあり方が変わったり、老人福祉法や社会福祉法の改正が介護保険に大きな影響を与えたりするなど、現場にさまざまな構造転換を強いることが予想されます。厚労省にも、現場の戸惑いや不安との向き合い方が強く問われます。
加えて、長期化する物価上昇や一向に縮まらない他産業との賃金格差にどう対処するのかという訴えにも向き合わなければなりません。すでに業界団体等の多くが、厚労省に次期改定に向けた要望書を出していますが、一部で「改定サイクル」や「基本報酬の位置づけ」の見直しにも踏み込む様子が目立ちます。
こうした状況下では、過去のヒアリングで対象となっていない各種団体にも目を向けつつ、個別的な事情に深く耳を傾けることができるかがポイントとなります。こうしたボトムアップ的作業は、これからの介護保険制度でスタンダードとしていくべきでしょう。
そうした前提のもと、意見交換会の事前照会リストを見てみましょう。今回は、中山間・人口減少地域を対象とした特定地域サービス等の創設にともない、中山間地域等の自治体および事業者等がプラスされる予定です。
加えて、それ以外の対象リストの中にも、2024年度改定では含まれていない2つの団体が挙がっています。1つが、全国地域包括・在宅介護支援センター協議会。もう1つが、日本認知症本人ワーキンググループです。
包括関連の協議会が加わったことの意義
前者の「全国地域包括・在宅介護支援センター協議会」は、前身となる全国在宅介護支援センター協議会の設立が介護保険スタート前の1991年と歴史のある団体です(現在の名称となったのは、包括が誕生した2006年)。その名の通り、全国の包括(ブランチ、サブ含む)のほか、現在も在宅介護支援センターの看板を掲げている拠点も参加しています。
同協議会は、各センターの機能強化に向けた情報提供や活動支援、研修・研究事業を行なう他、厚労省所管の委員会等で意見を提示しています。2024年のケアマネジメントにかかる諸課題検討会でも、ケアマネの社会的理解を広げるための方策などを提言しました。
同協議会が改めてリストに加わった背景には、さまざまな制度状況が影響しているのは間違いないでしょう。頼れる身寄りがいない高齢者等への支援をはじめとして、包括のさらなる役割強化が目指されたこと。さらに、居宅介護支援事業所が減少傾向にある中で、包括としての支援体制のあり方や機能分担の明確化なども求められていることです。
機能分担で言えば、包括の業務負担増への対応として、居宅介護支援が介護予防支援を直接実施するようになったほか、新たに介護予防ケアマネジメントも直接担う方針が示されています。総合支援事業の一部も、居宅介護支援に委託可となりました。
しかし、先に述べたように居宅介護支援事業所は減少傾向となり、包括が配置すべき主任ケアマネの土台となるケアマネ人口の伸びも停滞しています。そうした中で、包括現場(居宅介護支援との関係性など)の実情に改めて耳を傾けることは大きな意義があります。
認知症当事者の「声」は制度をどう動かす?
もう1つの団体である「日本認知症本人ワーキンググループ」ですが、こちらは認知症の当事者が、その体験や思い、希望を語る活動から始まり、2014年に目的を同じくする仲間が集うことで誕生した団体です。2017年に一般社団法人となりました。
その時点から、メンバーの意見を集約して厚労省に届け、新オレンジプラン(認知症施策総合推進計画)にも反映されています。
大きな転機は、2024年1月に「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行されたことです。同法で、認知症の本人の社会参加や意思決定の支援が明記され、施策立案においても「本人の声」をいかに反映させるかが強く問われることになりました。
介護保険制度の議論では、当事者側の関連団体も参加していますが、そうした「サービスを利用する立場」からの声がさらに反映される機会ともなるでしょう。その点では、もっとも注目したい参加団体の1つと言えます。
住宅型有料の改革が進む中、加えたい団体も
一方、今リストにはないものの加えてほしい団体として、介護サービス相談員やその派遣事業を手がける自治体による「介護サービス相談・地域づくり連絡会」が挙げられます。
たとえば、住宅型有料老人ホームのしくみが大きく変わる中、そうした入居者の権利擁護にも深くかかわってきた介護サービス相談員の知見は、(登録施設介護支援含む)各種省令制定に活かされるべきと考えるからです。
いずれにしても、今回の「意見交換会」は、転換期を迎えつつある介護保険制度にとって、極めて重要な機会です。厚労省としても、現時点のリストにこだわらず、照会の追加を随時行なってもらいたいものです。介護保険の足腰をもう一度固め直すうえでは、多少の試行錯誤もいとわない姿勢が求められます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。