
介護給付費分科会の意見交換会で、全国地域包括・在宅介護支援センター協議会がプレゼンを行ないました。身寄りのいない高齢者等の支援や地域ケア会議機能の強化などにより、包括に求められる役割がますます拡大する一方、その運営の土台は揺らぎつつあります。
改正法で示された改革を包括はこなせるか?
2026年の社会福祉法等改正の大きなトピックといえば、頼れる身寄りがない高齢者等の多様な課題に対し、福祉・保健医療サービス等利用援助事業(以下、援助事業)を適用することです。この事業の円滑な運用に向け、包括が担うべき役割は以下のようになります。
1つは、包括が手がける総合相談支援において、頼れる身寄りがない高齢者等への相談対応を明確に位置づけたこと。もう1つは、援助事業につなぐなどの課題解決に向け、地域ケア会議の実施を通じた関係者間の連携の推進を定めたことです。いずれも、包括にとって実務が上乗せされる可能性が高まります。
さらに、その他の地域の多様な課題に対応するため、今改正法ではさまざまな協議体や関係会議の設置が定められています。地域ケア会議は、これら会議等との連携も必要になり、地域によっては、その調整役を包括が担うケースも出てくるでしょう。
包括としては、ただでさえ業務量過多の状態で人員不足も深刻化しています。改正法で進む改革を、本当に手がけられるのかという不安はどうしても募りがちです。
制度上の推進と現場の実態の矛盾が問われる
こうした状況を見すえ、厚労省も必要な予算投入を図ろうとしています。たとえば、2027年度予算の概算要求では、頼れる身寄りがいない高齢者等にかかる「地域での実効的な課題解決の取組み」に対して、地域支援事業交付金に以下の加算をつけるとしました。
具体的には、地域づくりを推進する生活支援コーディネーター等の加算(800万円)。地域ケア会議における他分野(法律専門家など)からの参画を促進するための加算(1回2万円)。他会議との連携体制構築に向けた加算(1連携先ごとに30万円)などとなります。
とはいえ、肝心の包括側の人材が十分に確保されなければ、連携体制等にかかる加算だけを増やしても十分な効果は期待できません。
ちなみに、冒頭で述べた協議会のプレゼンでは、介護予防支援を対象とする処遇改善により、自身で予防プランを多く持つ包括ほど処遇改善の原資が増え、地域づくり等に注力する包括は処遇改善が進みにくいといった点が指摘されました。国が推進する制度と実態との矛盾が問われたことになります。
ケアマネにとって「頼れる受け皿」の喪失も
もちろん、厚労省はこうした点についての対応策も打ち出してはいます。やはり今回の概算要求ですが、「包括の人材確保のための処遇改善」のしくみを提案しました。具体的には、包括的支援事業に従事する従事者の賃金を引き上げるために、既存の事業費に上乗せを図る(上限超過を認める)というものです。
ただし、これは処遇改善によって事業費が上限を超える市町村に対し、あくまで個別協議によって実施されるものです。金額は常勤換算1人あたり月1万円ですが、介護予防支援や介護予防ケアマネジメントの処遇改善加算を算定した場合、その金額が控除されます。
こうなると、包括の従事者にとって、これからの地域づくりにかかわるうえでの十分なインセンティブとなるかどうかは微妙かもしれません。一方、協議会のプレゼンでは、介護予防支援等にかかる処遇改善額が極めて低いことも指摘されました。仮に、介護予防支援側の加算の低さが続くことで、先の概算要求で示された「地域づくりへのかかわり」に向けたインセンティブの方が相対的に高まるとすれば、皮肉な状況を言わざるを得ません。
いずれにしても、包括職員の処遇改善が全体的に低いレベルでとどまるなら、包括そのものの土台が揺らぐことになります。それは、シャドウワークやカスハラの増大に苦慮するケアマネにとっても、「頼れる受け皿」を失いかねないという問題に直結します。
自治体の地域課題への意識も問われている
昨年の介護保険部会で提示されたデータによれば、全国約2200の包括を対象とした調査で「地域ケア会議の議論を踏まえてセンターとして適切な資源開発を行なえているか」という問いに対し、「そう思う」「ややそう思う」の合計は約3割にとどまっています。「そう思わない」のはなぜかという理由の大半は、「職員の業務量過多、人員不足」や「資源がない(連携できる機関がないなど)」です。
こうした状況下で、ケアマネが直面する「困りごと」などをどこまで解決する余力があるでしょうか。枠組みとしての法整備や実効性に疑問符のつく処遇改善だけで、上記の状況から包括機能は一気に拡充するのでしょうか。
ちなみに、包括の拠点自体は増えていますが、直営に限ると減少傾向にあります。地域によっては市町村の職員自体が減る中で必然かもしれませんが、本来「要」となる自治体内で、多様な地域課題に対する当事者意識が薄れているとすれば、これも大きな問題です。
地域課題を陰で支えるケアマネ、そしてその後方を担う包括──その揺らぎを地方自治にとっての重要テーマとして浮上させることができるか。地方選挙なども通じ、すべての地域に問いかけたい問題と言えます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。