ケアマネ不足が深刻化する未来を見すえて─。 AIタスクの「ケアマネ補佐職種」誕生も?

中山間・人口減少地域を対象とした特定地域サービスには、居宅介護支援も含まれています。一方、全国レベルでの事業所減少が続く中、特定地域サービスの議論と並行して、地域のケアマネジメント体制の確保に向けた劇的な対応策の議論が始まるかもしれません。

居宅介護支援は過去7年で1割の減少

ご存じの通り、居宅介護支援の事業所数(請求事業所数)は、ピーク時の2018年度と直近の2025年度との比較で約4100件の減少となっています。減少率では約1割です。

介護予防支援については、2024年度に居宅介護支援事業所が直接指定を受けることが可能になり、約2200件(2018年度と2025年度の比較)の伸びとなりました。ただし、上記のように、居宅介護支援の請求事業所数の減少が著しくなる中、2026年度以降の予防支援の受入れ余力は厳しさを増しそうです。

これに対し、居宅介護支援および予防支援の受給者数は、やはり2018年度と2025年度の比較で、57万人以上増加しています。

需要の伸びとケアマネジメント供給力の減少という逆ベクトルが同時並行で進むことにより、すでに一部地域では、「居宅のケアプラン作成を受けてくれる事業所が見つからない」というケースも生じつつあります。

処遇改善でも追い付かない場合の対応は?

国としては、ケアマネ人材の確保に向けて、処遇改善や負担軽減の多様な施策を打ち出しています。2026年度の臨時改定で、居宅ケアマネに初めて処遇改善加算が適用され、法改正ではケアマネ資格の更新制の廃止も定められました。今後は受験資格の緩和や、現在就業していない潜在ケアマネの復職支援などの予算も拡充される流れが想定されています。

仮に、それでもケアマネが足らないとなった場合、国としてはどのような施策を打ち出す可能性があるでしょうか。

まず考えられるのは、ケアマネ1人あたりの担当件数のさらなる上限引き上げでしょう。現行では、ケアプランデータ連携システムの活用+事務職の配置が要件となっています。ここに、「ケアプラン作成支援AI」等の活用を加えたうえで、件数上限をもう1ランク引き上げるといった対応が考えられます。

もちろん、ケアプラン作成支援AIには、さまざまな種類があり、その機能(さらには、機能による利用料金の価格帯)も多様化しています。また、システムによってケアマネのチェックを要するレベルにも差があり、単純に「AIの活用」だけを要件化すると、利用者にとってのプランの質に差が生じかねません。

AI導入をスタンダード化することの難しさ

その点を考えれば、国が推奨する機能やバージョンなどを定めたうえで、AIによるプラン原案のチェックのあり方の標準化といった慎重な制度設計も必要になりそうです。昨今は生成AIが専門的な知見にもたらす多様な問題も指摘され、そうしたデメリットに関する最新情報も考慮する必要があるでしょう。

となれば、2027年度から「全国レベルで、すぐに」という段階に入るのはなかなか困難です。考えられるのは、冒頭で述べた特定地域サービスにおける先行的な導入です。たとえば、都道府県単位で「ケアプラン作成にかかるAI導入」の体制を立ち上げ、それに基づいて先の担当件数のさらなる緩和を図ることが直近の議論になるかもしれません。

このように特定地域サービスを皮切りとして、「ケアプラン作成支援AI」をスタンダードなケアマネジメント実務として定着させる流れが進むとします。ここでももう1つ浮上するのが、AI活用を絡めたケアマネジメント上の「タスクシフト」の可能性です。

AIプランの質を高めるうえで必要なタスク

たとえば、(1)アセスメントデータの収集は「ケアマネ」が行ない、(2)(1)のデータを「AI」が解析し、(3)(2)で出力したケアプラン原案を「ケアマネ」がチェックする流れが想定されるとします。先の「タスクシフト」とは、この(2)のデータの入出力を「ケアマネ以外」の人員が手がけるというパターンです。

この場合、(1)におけるアセスメントデータについても、利用者へのインタビュー音声等をAIに解析させ、そのまま(2)の入出力に反映させることも想定されます(ここに、主治医等からの既往歴に関する情報等もプラス)。とはいえ、利用者の言語化されない生活状況(訪問先で気になった利用者の様子・言動)などは、ケアマネによるアナログ的な情報として加えられることになるでしょう。

それらの入力を(ケアマネと連携しながら)(2)の担当者が手がけるとします。その担当は一般的な事務職員ではなく、「(ケアマネと意思疎通が図れる程度の)ケアマネジメントの知識」+「AIに関する知識」を一定程度兼ね備えた人材が求められます。つまり、これらを兼ね備えるための研修を受けた事務職員ということになり、その配置をさらなる担当上限緩和の要件とすることも考えられます。

もちろん、これは未来の予測です。その前に、ケアマネの処遇改善がどこまで図られるかが前提となることに違いはありません。

ただし、それでもケアマネ不足の解消が困難となれば、AI活用を見込んだ、「ケアマネ補佐的」な新職種によるタスクシフト案が浮上する可能性はありそうです。たとえば、復職ケアマネ等を、こうした職種に充てるなどの議論が出てくるかもしれません。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。