新プラン検証にどう向き合うか

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10月1日より施行される、新たなケアプラン検証に向けた届出の基準が告示されました。具体的な基準(区分支給限度基準額に対する割合、サービス費総額に対する訪問介護の割合)は、7月28日の介護給付費分科会で提示された案の通りとなりました。

当然ながらケアマネの実務も増える可能性

改めて、プラン届出(市町村からの求めがあった場合)の基準を確認しておきましょう。

(1)居宅介護支援事業所で作成するすべてのケアプランのうち、区分支給限度基準額の割合が7割以上であること。(2)ケアプランで位置づけたサービスの総費用のうち、訪問介護費が占める割合が6割以上であること。(3)(1)と(2)をともに満たす場合であることです。

届出対象となるのは、その月に作成または変更(「軽微な変更」除く)されたプランです。また、届出に際しては、①および②の必要性をプランに記載しなければなりません。

届出自体は事業所ごとに1年に1回(従来のプラン検証のケースも含む)ですが、ケアマネにとって「検証の場への立ち合い」や「サービスの必要性にかかる新たな記載」が必要になり、実務が増える可能性があります。

なお、上記の「検証の場」については、今改定により、地域ケア会議等の他、サ担会議に行政職員やリハビリ専門職を派遣しての実施も可能となっています。

今改定は、利用者の尊厳保持に資するのか?

2018年度改定では、一定以上の生活援助サービスを位置づけたケアプランの届出・検証にかかる規定が盛り込まれました。そして今回は、身体介護も含めた「訪問介護費の割合」もプラスされたことになります。

「市町村の求めによって」という但し書きが付いてはいますが、ケアマネとしては、プラン作成に際して意識しなければならない事項が増えたことに違いはありません。

問題は、その「意識づけ」が誰のためのものなのかという点です。生活援助ケースでもそうでしたが、厚労省通知による留意事項では、「利用者の自立支援・重度化防止や地域資源の有効活用の観点から」としています。一方で、介護保険法で明記されている「利用者の尊厳保持」にはふれられていません。

「それは自立支援・重度化防止の考え方に含まれる」という考え方もあるでしょう。しかし、介護保険法で「自立支援・重度化防止」を指す「要介護状態等の軽減または悪化の防止」は、「尊厳保持」を明記した第1条とは別個の記載となっています。つまり、先の留意事項は、制度の根っことなる理念に沿ったものなのかという点で戸惑いが残るわけです。

問題なのは事業者側で自主規制が生じること

少なくともケアマネとしては、今回の規定に則った実務を手がけるうえで、この「利用者の尊厳保持」という根っこの理念を忘れてはならないでしょう。それがないと、ケアプランに位置づけたサービスが、その利用者にとって「本当に必要なものかどうか」を考えるより、「規定に引っかからないようにする」ための自己抑制が働きかねません。

現場のケアマネに「そのような意識はない」としても、事業所(法人)側から「セーブ」をほのめかす指示などが生じる可能性はあります。事業所によっては、保険者との間で「波風を立てたくない」という忖度的な空気が優先されるケースもあるからです。

こうした「波風を立てない」ための抑制(事業所側による自主規制)が先に立ったとき、「主人公は利用者である」というケアマネジメントの本質が揺らぐ恐れも生じます。

国としては、表向き「ケアプラン検証の機会を増やすことで自立支援・重度化防止を進めること」を目的としています。しかし、上記のような自主規制が働くことは当然予想されるわけで、この「表に出ないテーマ」が本音なのではないかと深読みせざるを得ません。

こうした状況を考えたとき、現場のケアマネには「主人公は常に利用者である」という倫理観と、それを貫く胆力が問われてきます。自主規制に陥りがちな自身を振り返り、利用者の立場から正しいと信じるケアマネジメントを遂行する強い意志が必要になるわけです。

個人の意思では限界。横のつながりがカギに

とはいえ、それは1人のケアマネ個人だけで貫いていくことは困難です。多くのケアマネは組織に雇われているわけで、先のような「自主規制」に走りがちな組織の論理に流されないようにすることは限界もあるでしょう。

となれば、組織の枠を超えた横のつながりがポイントになります。たとえば、地域のケアマネ連絡会で、「区分支給限度基準額に対する割合が高いケース」や「訪問介護の割合が高いケース」を取り上げて事例検討を行ないます。そのうえで、どのようなケースにおいて「プラン提出が求められるのか」について、保険者に明確なルール、ビジョンの提示を求める交渉を行なうことも必要になるでしょう。

こうした地域レベルでの取組みに対し、全国規模の職能団体や関連学会によるフォローも欠かせません。そして、保険者や国に対して「適正なケアマネジメントが阻害されない」ための対応を求めるなどの声明・要望を出す──こうした現場のケアマネ目線に立った動きを加速させていくことが求められます。

現場のケアマネに対し、利用者の尊厳保持から外れた自主規制や忖度を押し付けることにならないかどうか。これは、ケアマネという専門職の根幹にかかわってくることです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。