高齢者の健康や自立した生活を支えるうえで、食事はとても重要です。不足しがちな栄養素や、食事を通じたフレイル予防については、以前の記事でもご紹介してきました。しかし、実際に食事を改善しようとすると、「手軽に準備できるかどうか」も大切なポイントになります。
今回は、多くの在宅訪問栄養食事指導の経験を持つ駒沢女子大学教授・管理栄養士の工藤美香先生にお話を伺いました。その中から、簡単に作れる高栄養な料理のアイデアや、食事改善のための買い物のポイントを詳しくご紹介します。
簡単&手軽!高栄養な料理アイデア
手間をかけずに、簡単に準備できる高栄養な料理のアイデアを、工藤美香先生に伺いました。
みそ汁にひと工夫で栄養アップ!
「みそ汁は塩分が多いから良くない」と思われがちですが、汁の量を控えめにし、野菜や肉をしっかり加えれば、1杯で栄養たっぷりの食事になります。
例えば、冷凍やレトルトの水煮ごぼう、スーパーで売っているカット野菜やしめじを使えば、煮るだけで簡単に栄養満点のみそ汁が完成。さらに、こま切れの肉を加えてご飯を添えれば、主食・たんぱく質・野菜がそろったバランスの良い食事になります。また、お湯を注ぐだけのインスタントみそ汁に豆腐や冷凍ほうれん草を加えるだけでも、手軽に栄養をプラスできます。
さらに、日本栄養士会が推奨する「乳和食」もおすすめです。たんぱく質やカルシウム、カリウムも摂取できます。カルシウムは骨を強くしてくれますし、カリウムは体内の余分な塩分を排泄する働きがあり、高血圧の方にもおすすめです。みそ汁1杯に小さじ1~2杯ほどの牛乳を加えるだけで、塩分を控えつつコクのある味わいに。牛乳の量はお好みで調整可能。魚の煮付けやごま和えなど、ほかの味噌料理にも応用できます。
お味噌汁に入れればたんぱく質を補えるエンジョイプロテンはこちら

電子レンジで手軽に栄養ごはん
コンビニやスーパーでは、電子レンジで温めるだけで食べられる冷凍食品やチルド食品が豊富にそろっています。サバの味噌煮やハンバーグ、肉じゃがなどの定番おかずのほか、お弁当用のつくねや焼き魚、惣菜も便利です。湯煎が不要で、簡単に準備できるものが増えているので、忙しいときや料理の手間を減らしたいときに役立ちます。
また、電子レンジで魚の切り身を加熱するだけで焼き魚が作れる専用容器も販売されています。これを活用すれば、フライパンやグリルを使わずに手軽に魚料理を取り入れることが可能です。
ひと工夫で満足感アップ!手作り風おかず
すべてのおかずを惣菜やチルド・冷凍食品でそろえると、食費がかさみがち。そこで、1品だけでも簡単に手作りできるおかずを加えるのがおすすめです。
例えば、もやしのナムルはとても簡単。もやしにごま油をかけ、電子レンジで温めてから塩こしょうで味付けするだけで完成します。冷凍ほうれん草をレンジで加熱し、胡麻和えの素と和えるのも手軽な一品です。さらに、冷凍カボチャにひき肉を加えて煮るだけで、ほっこりした煮物も作れます。
市販の食品をうまく活用しつつ、一品だけ手作り風のおかずを加えれば、栄養バランスもアップ。ちょっとした工夫で、無理なく食卓を充実させることができます。
高齢者にありがちな食事とは? 家族ができる栄養不足の気付きと対策【駒沢女子大学教授 工藤美香先生インタビュー:その6】<PR>
買い物リストに加えたい!手軽で栄養豊富な食品
栄養バランスを整えるために、手軽に準備できる食品を買い物リストに加えておくのがおすすめです。ここでは、特に便利な食材やアイデアをご紹介します。
忙しいときに便利!温めるだけの栄養食品
忙しい日でも栄養をしっかり摂るために、手軽に食べられる食品を常備しておくと便利です。1人分サイズの冷凍魚や肉料理、湯煎不要のチルド総菜は、温めるだけで食べられて便利。特に、たんぱく質が豊富な焼き魚やハンバーグ、野菜入りのおかずは、栄養バランスを整えるのに役立ちます。
簡単ちょい足し&小分けで便利な食材
みそ汁や料理に手軽にプラスできる食材をストックしておくと、栄養バランスがアップし、調理の手間も省けます。例えば、豆腐や冷凍野菜(ごぼう、ほうれん草、ブロッコリーなど)、カット野菜、ひき肉は常備しておくと便利です。
特にひき肉は、1回に50gずつ使うなら、300gのパックを6等分して冷凍保存すると、必要な分だけ簡単に使えます。
また、エネルギー補給に役立つ「油」も積極的に活用したい食材のひとつ。油は1gあたり9kcalと効率よくエネルギーを摂取できます。なかでもMCTオイル(中鎖脂肪酸)は、一般的な油よりすぐにエネルギーになりやすく、消化にも優しいのが特徴。さらっとしているので、おかゆやおかず、おやつに加えるのもおすすめです。実際に「おかゆに入れると甘みが増して美味しく感じる」という声もあります。
おかゆには、卵や鮭フレーク、風味が変わらないタイプのプロテインのパウダーでたんぱく質をちょい足ししてもよいでしょう。サーモンの刺身につぶしたアボカドを和えれば、飲みこみやすくなり、エネルギーもプラスされます。
MCT6.0g配合(1個72g当たり)のエンジョイMCTゼリー200はこちら<PR>
栄養豊富なおやつで手軽に栄養補給
おやつを選ぶときは、不足しがちな栄養素を補えるものを意識するとよいでしょう。例えば、カルシウムが強化されたウエハースやヨーグルトは、骨の健康維持に役立ちます。また、牛乳を飲む習慣がある方は、カルシウムや鉄分がプラスされたものを選ぶのもおすすめです。
食事にプラス!手軽に栄養補給できる食品
食事だけでは不足しがちな栄養素も、栄養補助食品を活用すれば手軽に補えます。 噛む力が弱くなったり、食欲が落ちたりしたときでも、飲みやすいゼリータイプやスープタイプの栄養補助食品を取り入れることで、無理なく栄養を摂取可能。日々の食事に上手にプラスして、健康維持に役立てましょう。
すぐに補える!便利な栄養補助食品
食欲が落ちているときや、忙しくて十分な食事がとれないときに役立つのが栄養補助食品。ゼリータイプやドリンクタイプなら、手軽にエネルギーやたんぱく質を補給でき、飲み込みやすいのが特徴です。
また、1包装あたり、200kcal、たんぱく質7.5gと、効率よく摂取できるものもあり、食事量が少なくても必要な栄養をしっかり補えます。
「食事を作るのが大変」「食が細くなってしまった」という方にもおすすめ。
簡単な工夫と買い物のコツで、毎日の負担を軽く
高齢者の食事に、スーパーの総菜や宅配弁当を活用する方も少なくありません。 しかし、「費用がかさむ」「メニューが限られて飽きてしまう」「好みに合わず、結局食べてもらえない」といった悩みを抱えている方も少なくありません。
とはいえ、家族の食事とは別に、高齢者向けの料理を毎日用意するのは大変。そんなときは、工夫次第で、手軽に栄養バランスを整えることが可能です。
まずは、買い物の工夫から始めてみましょう。手軽に取り入れられる食材や、簡単に栄養アップできる工夫を活用すれば、無理なく続けられます。
また、市販では手に入りにくい栄養補助食品も、通信販売を利用すれば選択肢が広がり、必要なものを手軽に揃えられます。食事づくりの負担を減らしながら、栄養をしっかり摂れる環境を整えていきましょう。

病院・施設・在宅の栄養管理に長く携わっており、急性期病院勤務時にはNST(栄養サポートチーム)の中心メンバーとして活躍。現在は駒沢女子大学 健康栄養学科の教授として、臨床栄養学概論や臨床栄養学などの指導を担当するほか、日本在宅栄養管理学会理事も務めている。
2025年3月更新
通話
通話
通話
