「訪問+通所」の新たな複合型、 現場の期待と解決すべき課題について(2)

訪問系+通所系などの組み合わせによる新たな複合型サービスが誕生するとなれば、ケアマネジメントの位置づけも大きな論点の1つとなります。利用者のケアプランは誰が作る? 居宅のケアマネの役割はどうなる?──想定されるしくみとともに、ケアマネジメント全体のあり方も見すえることが必要です。

居宅のケアマネがかかわる範囲はどうなる?

現在ある複合型サービスは、看護小規模多機能型(以下、看多機)だけですが、こちらは小規模多機能型(以下、小多機)とともに、ケアマネジメントは事業所のケアマネが担います。組織内部のケアマネが担当するという点で、施設や居住系と同じしくみです。

いずれも、包括的なサービス提供が特徴です(福祉用具の整備も含まれます)。仮に訪問系+通所系の新たな複合型ができるとなれば、一部で「サービスが包括化される」わけですから、利用者のケアマネジメントも「事業所内部にケアマネを配置して担い手とする」という議論も出てくるでしょう。

ただし、現状で打ち出されている「組み合わせ」の範囲は一部に過ぎません。たとえば「泊まり(短期入所)は含めない」となれば、その部分は誰が担うのか。その点で、「訪問系+通所系」の複合型が誕生しても、ケアマネジメントを担うのは、従来通り「居宅のケアマネ」となる可能性は高いかもしれません。

サービスの切り替えが生じた場合の対応は?

注意したいのは、利用者のケアマネジメントを担うのは「居宅のケアマネ」であるとしても、そのかかわり方が変わる可能性です。

たとえば、新たな複合型では、「利用者の状態に合わせた柔軟なサービス提供」が可能になると想定されています。プラン上で「通所介護の提供」が想定されていても、「訪問介護への柔軟な切り替え」が可能となれば、キャンセル等が生じても切れ目のない支援が可能になります。前回の老健事業の調査でも、「切れ目のないケア」が事業所側のメリットの1つとして上がっている点から、国も制度化では大きなポイントとして上げてくるでしょう。

もちろん、報酬は包括化されるので、給付管理業務が煩雑になることはありません。ただし、担当ケアマネとしては「切り替え」について把握しておくことは、利用者の状態把握という観点から不可欠です。となれば、「切り替え」の判断はサービス提供側が行ない、事後報告的にケアマネに「切り替え」の情報を伝えるという流れになりそうです。

このあたりは、定期巡回・随時対応型において、随時対応が生じた場合の情報共有のしくみに近いものになると言えます。

新たな複合型が一気に増える素地もある中で

それだけなら、従来通り居宅のケアマネが担当しても、さほど大きな変化はないのでは──と思われるかもしれません。また、初年度から参入事業者が一気に増えることも考えにくい(だから、大きな変化にはならない)という事情もあるでしょう。包括報酬が高めに設定されても、サービス提供側の負担がどこまで増すのかを考えれば、収支のバランス予測を立てるうえで「当分は様子見」となる事業所が多くなることが予想されるからです。

ただし、ケアマネとして考えておきたいのは、新たな複合型の誕生が「訪問介護と通所介護」のように特定のサービスにとどまるのかどうかという点です。たとえば、近年のリハビリ・マネジメントの強化という観点から、「通所リハ+訪問リハ」という複合型の誕生も視野に入れる必要があります。

さらに、ここに「訪問看護」も加わることで、医療機関からの退院や老健からの退所の直後の「円滑な在宅復帰を目指すための集中支援サービス」のような複合型なども誕生するかもしれません。いずれにしても、地域包括ケアシステムの深化という流れとともに、堰を切ったように複合型が増えていく素地があることに注意しなければなりません。

ケアマネジメント利用者負担導入との関係

上記のような「素地」を見すえたとき、複合型が増えていくか否かにかかわらず、1つのサービス内での「ケアマネジメントのあり方」が介護保険制度の重要課題として上がってくることは十分に考えられます。場合によっては、複合型サービス事業所の人員基準にケアマネ必置が加わる可能性もあります。

そして、そこには施策的な意図も絡んできます。それは何かと言えば、財務省などが依然として強く押し出している「居宅のケアマネジメントへの利用者負担導入」です。財務省などが、その必要性の根拠として「施設や居住系では、ケアマネジメントも利用者負担の対象になっている」という考え方です。

仮に、多様な複合型サービスが増え、それぞれの中で一定のケアマネジメントを機能させるしくみが基準上などで確立されるとします。そうなれば、「各サービスにおけるケアマネジメントも利用者負担の対象になっている」という根拠が打ち出しやすくなるでしょう。

対象となるのは「居宅サービス」ですから、「居宅のケアマネジメント」との整合性という理屈が立てやすくなります。そのインパクトの強さは、「施設や居住系のケアマネジメント」との比較との比ではありません。

このように、新たな複合型サービスを誕生させるという議論は、「各サービスが担うケアマネジメントのあり方」という論点を経由して、居宅のケアマネジメントのあり方を大きく揺さぶりかねません。ケアマネとしても注目しなければならないポイントです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。