居宅ケアマネが注目したい情報の紐づけ。 他サービスの加算様式も要チェック。

2024年度改定では、各種加算の要件となる情報提供様式もいろいろと見直されました。居宅介護支援が算定しない加算であっても、ケアマネ側の加算様式と深く関係しているものも見られます。各サービス担当者との情報共有のあり方を確認することが必要です。

入院時情報連携加算では情報提供様式も改訂

まず取り上げるのは、居宅介護支援の入院時情報連携加算です。同加算では、情報提供の迅速化が図られました。区分Iで「入院から3日以内」⇒「入院当日(入院前でも可)」、区分IIで「入院から7日以内」⇒「入院の翌日または翌々日」(営業終了後や営業外の日での入院による特例あり)となっています。

実は、この提供タイミングの見直し以外として、情報提供の様式も変わっています。変更ポイントはいくつかありますが、特に注意したいのが「入院前の身体・生活機能の状況」に示された「認知機能の状況」です。

全部で4項目あり、(1)見守りの必要性(日常生活で安全に過ごすために、どの程度他の人による見守りが必要か)、(2)見当識(現在の日付や場所等について、どの程度認識できるか)、(3)近時記憶(身近なものを置いた場所を覚えているか)、(4)遂行能力(テレビ、エアコン、電動ベッド等の電化製品を操作できるか)という具合です。いずれも選択肢にチェックを入れる方式ですが、利用者の認知・生活機能が具体的に描かれることになります。

科学的介護推進体制加算の情報との関連

これらの情報に関連し、他サービスの新様式でも類似の質問が見られます。それが、LIFE対応加算である科学的介護推進体制加算の情報提供の様式です。現状、居宅介護支援にLIFE対応加算は適用されていません。ただし。適用対象である通所系サービスとの間で、科学的介護推進体制加算における登録情報が共有されることはあるでしょう。

その科学的介護推進体制加算で、今改定から新たな情報提供の様式が加わりました。それが、「生活・認知機能尺度」です。認知機能の評価に関して、「Vitality Index」や「DBD13」とともに用いられたものです。ちなみに、2022年度の厚労省・老人保健健康増進等事業での調査・研究を通じて整えられたものです。

この生活・認知機能尺度は、7項目から成り立っています。以下の通りです。

A.身近なもの(メガネや入れ歯、財布、上着、鍵など)を置いた場所を覚えていますか。B.身の回りに起こった日常的な出来事(食事、入浴、リハビリや外出など)をどのくらいの期間覚えていますか。C.現在の日付や場所等についてどの程度認識できますか。D.誰かに何かを伝えたいと思っているとき、どれくらい会話で伝えることができますか。E.一人で服薬ができますか。F.一人で着替えることができますか。G.テレビやエアコンなどの電化製品を操作できますか──という具合です。

サービス担当者との間ですり合わせたい情報

これらの尺度を、先の入院時情報連携加算での様式と対比させてみましょう。BとC、CとF、DとGが符合することがわかります。AとE、Fも関係性が深いと言えるでしょう。つまり、科学的介護推進体制加算の新様式を通じ、利用者が入院する際の提供情報を補完できる関係にあるといえます。

ケアマネとしては、入院時の情報提供の迅速化(時に区分Iで「入院前からの情報提供」を目指している場合)が求められる中で、日頃からの利用者の認知機能に関する情報収集がますます必要となります。その際に、サービス担当者側の様式変更を押さえておけば、情報収集の円滑化も図れることになります。

もっとも、この科学的介護推進体制加算の新様式を用いた評価について、各現場がどこまで適切に進められるかとなれば、改定直後はまだあやふやな面があるかもしれません。最初のうちは、ケアマネ側も同様式を使って独自に評価を行ないつつ、サービス担当者との間ですり合わせを行なうといった機会を設けることも必要になりそうです。

直近2週間のADL等変化を求める項目も

なお、入院時情報連携加算の新様式では、「ADL・IADLに関する直近2週間以内の変化」を記す項目もあります。利用者が入院を要する状態となれば、急速なADL・IADLの低下が生じる可能性も高いでしょう。

この場合、ケアマネとしては「利用者の状態悪化」の前と後での情報収集をもって「変化」を把握することが必要になります。しかし、「入院が決まった」という時点で慌てて情報収集を図ろうとしても、なかなかその機会が確保できないことも想定されます。

となれば、区分Iの場合で「入院前に収集した情報」を反映させるケースが増えるかもしれません。問題は、それが入院直前のADL等をきちんと反映したものかという点です。
厚労省の疑義解釈では、「情報提供日から実際の入院日までの間隔があまりにも空きすぎている場合には、入院の原因等も踏まえた上で適切に判断すること」とややあいまいです。結局は、ケアマネによるモニタリング機会以外で、各サービス担当者から寄せられる情報の集積と分析がカギとなりそうです。

ここで浮上するのが、オンラインでのモニタリングにかかるサービス担当者との情報連携です。その様式も示されましたが、ケアマネからの「確認してほしい項目」に「利用者の変化」もあげられています。居宅チーム内での情報連携のあり方が、ケアマネにとって大きなテーマとなる点に注意しましょう。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。