
「2040年を見すえたサービス提供体制等のあり方検討会」が、中間取りまとめを行ないました。2027年度の制度見直しにも影響を与えるものとなります。取りまとめから浮かぶ介護サービスの未来像とともに、その中でのケアマネジメントの行方にも注意が必要です。
今回の取りまとめで目立つ3つのキーワード
今回の中間取りまとめで目立つキーワードが、「柔軟化」「弾力化」「包括化」の3つです。
たとえば、生産年齢人口の減少が特に進む中山間・人口減少地域においては、以下のような提案がなされています。訪問・通所介護等における配置基準等をより「弾力化」してサービス間の連携を図り、双方における人材等の行き来を「柔軟化」するという具合です。
また、持続的なサービス提供確保のために、利用者の突然のキャンセルや利用者宅間の移動負担の大きい訪問介護に対し、介護報酬上の評価を「包括化」するしくみを設けることなども検討課題として上げています。
上記は、中山間・人口減少地域に限った話ではありません。その他の地域でも将来的に同様の状況になることを見越しての「柔軟」な対応の必要性も示しています。大都市部においても、緊急時や利用者のニーズがある場合に、訪問・通所サービスを組み合わせるような「包括的」なサービス提供のあり方も検討課題として考えられるとしています。
要するに、限られた資源の中で効率的かつ持続可能なサービス提供を確保するうえで、基準を「弾力化」し、サービスのあり方の「柔軟化」を模索すること。そのうえで、適時適切なサービスが提供しやすいよう報酬の「包括化」も図るといった全体像が浮かびます。
「訪問・通所介護の複合型」の議論が再び…
ちなみに、訪問・通所系の組み合わせによる「柔軟」なサービス提供形態については、2024年度の報酬・基準改定に際しても「訪問介護と通所介護を組み合わせた複合型サービスの創設」が提案された経緯があります。
この時には、コロナ禍で実証調査が難しく、介護給付費分科会の委員からも「制度の煩雑化」などを懸念する声が上がり、最終的に見送り(継続検討)となりました。この「見送りとなったテーマ」が、2040年を見すえたサービス提供体制のあり方に関する議論において、再び浮上した形となります。
これを訪問介護と通所介護の組み合わせという一例とどめるのか、あるいは、制度間の枠組みを超えた資源との融合も視野に入れながら、より「柔軟」な体制を見すえていくのか。このあたりは、今後の介護保険部会の議論で具体化されることになりそうです。
あくまで今回は地域の実情に沿ったサービス提供体制の確保がテーマです。ですから、最初は地域を限定しつつ、モデル事業的に進める流れになるのかもしれません。
とはいえ、モデル事業による実証調査などが(間もなく策定される補正予算等に組み込まれて)前倒しされた場合、次の介護保険法改正の時点で、新たなサービスの枠組みが規定されることも考えられます。
少なくとも2030年度改定で一気に実現か
いずれにしても、2027年度には「枠組み」だけ定めておき、2030年度には一気に実現が目指されるという流れを頭に入れておく必要はありそうです。その場合、必ず大きな論点となるのが、「弾力的」かつ「柔軟的」、「包括的」なサービス提供の中で、ケアマネジメントはどう位置づけられるのかという点です。
施設・居住系以外で「包括的」なサービス提供といえば、すでに小規模多機能型や定期巡回・随時対応型があります。前者については、ケアマネ資格保持者がサービス提供計画を作成していますが、後者については、居宅ケアマネがケアプランを作成します。
ただし、利用者に随時の訪問が行われたり、状況に応じてサービス内容を微調整した場合には、担当者とケアマネの間で事後的に共有されます。また、定期巡回に際しては、看護師等によるモニタリングも随時行われます。
その点で、サービス事業所内に、(居宅ケアマネとの連携が前提とはいえ)ケアマネジメント機能の一部も内包されていると言えます。
サービス提供側の「裁量」がさらに大きく?
こうした包括型のサービスが「(基準の)弾力化」、「(体制の)柔軟化」によってスタンダード化されていくとすれば、ケアマネジメントのあり方も変わっていく可能性があります。
たとえば、初期のアセスメントに始まり、サ担会議を通じての総合的な援助方針の設定、サービスのケアプランへの位置づけまでは、今まで通り居宅のケアマネの主導となるでしょう。ただし、その後のサービス提供の形態や頻度については、(総合的な援助方針との整合性は求められるものの)利用者の状態やニーズの変化に応じて、サービス事業者側の裁量の余地が大きくなるかもしれません。
もちろん、事業者側の裁量とは言っても、ケアマネとの協働(モニタリング含む)は大前提でしょう。一方で、ケアマネジメント機能の多くがサービス事業者側に移行しやすい(内包されやすい)環境も生まれそうです。
そうした環境が「主」となった時、ケアマネの役割は「どこからどこまでなのか」を改めて整理する機会も求められがちです。今回の中間取りまとめやその後の介護保険部会の議論を機に、居宅ケアマネの存在意義を改めて固めていくことも必要になりそうです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。