事故報告書様式やLIFE項目の見直し。現場の「腑に落ちる」がますます問われる

2027年度の介護報酬・基準改定でも、「現場の生産性向上」が主テーマとなるのは確実です。生産性向上の目的は、現場の業務負担の軽減とケアの質の向上を両立させることにあります。ただし、実際に取組むのは現場であり、国の定める実務上のしくみがその実情にフィットするのかは見極めが必要です。

事故報告書での選択式を増やし負担軽減へ

現場の業務負担の軽減をめぐっては、ケアプランデータ連携システムや各種テクノロジーの活用が、運営基準や加算要件にどこまで反映されるかが注目点です。すでに処遇改善加算や生産性向上推進体制加算などで主要要件となっていますが、2027年度改定では、さらなる広がりを想定する必要があります。

その業務負担の軽減について言えば、現場の事故報告書やLIFEへの情報提供項目に関する見直しも図られようとしています。

事故報告書では、事故発生時の対応や原因について、現行で「自由記述」になっている部分に「選択式」を導入する案が上がっています。既存の「選択式」も、たとえば居宅サービス等でも対応できるような項目の再編を行なうことも予定されています。

事故発生後の「自由記述」は職員にとって重荷となりがちで、その部分にある程度の「選択式」が導入されれば業務負担の軽減にはつながるでしょう。実際、日々の介護記録でもタブレットやスマホ等での選択式へのチェックが一般的という現場も多い中では、フィットしやすい改編と言えそうです。

複数LIFE対応加算での選択肢統一も加速!?

一方、LIFEへの情報提供についても、現場の負担軽減を視野に入れた提案が行われています。LIFEに関しては、次期改定に向けて国立長寿医療研究センターで厚労省の補助事業による検討会が開催されました。今年1月には、とりまとめ案も示されています。

その中では、科学的介護推進体制加算の入力項目を基本データとしつつ、他のLIFE対応加算と重複するデータは極力省いていくべきではないかという意見が出されています。2024年度改定でも、「複数の加算で共通する項目の選択肢の統一」が行われましたが、その流れは継続されることになりそうです。

興味深いのは、その項目整理に関して、たとえば以下のような指摘も上がっていることです。それは、科学的介護推進体制加算における「服薬情報(薬剤入力)」に関してです(現状ではLIFEへの情報提供は任意)。

ここでは「薬剤名」が入力されるしくみになっていますが、検討会では、服用薬剤数と薬物有害事象(例.転倒しやすくなる)の関係などの研究に活用するという観点から、入力項目の見直しの必要性が検討されています。

負担軽減をかかげられても腑に落ちない?

ここまで述べた事故報告書やLIFE提供項目に関する検討では、いずれも2つの視点から「現場負担の軽減」が図られています。1つは、「入力・記載という実務での負担軽減」。もう1つは、「事故の再発防止や現場における有害事象の防止に資する項目の見直しを図ることによる、現場のケア負担の軽減」です。

これらは、生産性向上全般が目指すものでもあります。生産性向上といえば、ICTやテクノロジーの導入支援、そして新評価ツールの提示などに国は力を注いでいます。問題は、それら機器やツールをめぐり「導入ありき」が先に立っていないかという点です。

たとえば、ケアプランデータ連携システムなども、「まずは導入しなさい。使えば便利さが分かるから」という意図が少々前面に出過ぎてはいないでしょうか。今年から順次稼働する介護情報基盤も同様の感があります。

確かに、将来的には現場の業務負担軽減をけん引するスタンダードにはなるかもしれません。しかし、現状ではトップダウンによって現場が「使用に追い込まれる」という空気とともに、「それより先にやることがあるのでは」という腑に落ちない感覚も漂いがちです。それが、周知・広報を尽くしても浸透が滞る状況の背景にあるように思えてなりません。

中小規模現場への寄り添いが足らないのでは

その点では、先の事故報告書とLIFEへのデータ提供の見直しも、「業務負担の軽減」と「ケアの質の向上(結果としてのケアの負担軽減)」をかかげているとはいえ、どこまで現場の腑に落ちるのかが気になります。

たとえば、事故報告書でいえば、報告を受けても原因や分析を行なっていない自治体が依然として多いことが指摘されています。今後、様式改編とともに国の主導で収集・分析を図る方針も示されたとはいえ、現場として「今までの報告は何だったのか」という不信感は拭い去れていないのが実情でしょう。

LIFEにしても、システムだけ与えられ、加算を取るために仕方なく対応に追われる(そのため、活用の余裕がない)実態をまだまだ見聞きします。そもそも「LIFE導入していない」が、施設系でも依然3割にのぼるのは、現場の余裕のなさを端的に表しています。

これらを考えた時、今回のような改革に際しては、特に対応負担の大きい中小規模事業所の実感を吸い上げる機会(自治体だけでなく各地方の厚生局に聞き取りをさせるなど)を増やすことが必要かもしれません。施策の方向性は間違っていなくても、実際に動くのは現場であり、そこに寄り添いながら納得をていねいに築き上げていくこと。これを、あらゆる生産性向上の取組みに必要なメソッド(手順)として位置づけたいものです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。