地域包括ケア、在宅の限界を高めるサービスが論点に 社保審分科会

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社会保障審議会介護給付費分科会(第177回 6/1)《厚生労働省》

厚生労働省は1日の社会保障審議会・介護給付費分科会に、「地域包括ケアシステムの推進」をテーマに議論を求めた。在宅サービスを利用しながら生活する人が限界を迎えて施設へ移行し、そのまま死亡に至るなど、人生の最終段階において本人の意思に沿ったケアが行われるためのサービスの在り方などが論点に挙がった。

・第177回社会保障審議会介護給付費分科会(オンライン会議)資料

改定に向けた議論は、3月16日のキックオフから2カ月半を経ての実施となる。新型コロナウイルスの感染症対策のため、初めてオンライン会議の形式で実施し、動画共有サイト「YouTube」でライブ配信された。

2021年度介護報酬改定に向けて、秋までの第1ラウンドでは4つの横断的なテーマなどから議論を進める。テーマは、▽地域包括ケアシステムの推進▽自立支援・重度化防止の推進▽介護人材の確保・介護現場の革新▽制度の安定性・持続可能性の確保-の4点。これに加えて、サービスの種類ごとの論点や同分科会が17年12月にまとめた「18年度介護報酬改定に関する審議報告」や「認知症施策推進大綱」(19年6月閣議決定)などを踏まえて議論する。

40年に向けて高齢化がより一層進み、医療・介護双方のニーズがある中重度の高齢者や、介護保険サービス利用者の認知症割合が大きく増加すると見込まれる。厚労省は、居宅介護支援事業所が在宅における医療と介護の連携の中心となる仕組みを進め、評価してきた。

厚労省は1日の議論で、▽在宅で生活する者の在宅限界を高めるためのサービス▽高齢者向け住まいにおけるさらなる対応▽人生の最終段階における本人の意思に沿ったケア-などを論点に挙げた。

委員からは、▽要介護認定者はまず在宅サービスから利用を始めるため、重度になっても住み慣れた地域で住み続けられるための在宅の仕組みが必要▽在宅か施設かという比較ではなく本人の願いが尊重されているかが大事▽会議がリモートになったのも大きな決断。ドラスティックな変化を-などの意見があった。

安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、自立支援や重度化防止を推進しつつ、在宅での介護・医療サービスを過不足なく整備するためには、地域医療構想による医療提供体制の改革と一体的に議論が行われることが必要との考えを示した。また、限られた財源の中でサービス提供を進めるためには、分散しているサービスの集約・重点化が必要だとした。

一方、鎌田松代委員(認知症の人と家族の会理事)は、新型コロナにより通いの場や施設が閉鎖されて利用者が家に引きこもり、ADLや認知機能が低下することが懸念されるとした。その上で、地域包括ケアシステムの「共助」の考えに公的な支援・サービスが組み込まれていれば、「こんなことにならなかったのではないか」とし、制度設計に無理があったことが明らかになったと苦言を呈した。