
社会保障審議会介護給付費分科会(第178回 6/25)《厚生労働省》
6月25日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会では、2021年度介護報酬改定に向けて掲げられた、横断的なテーマについての議論が一巡した。この日の議論では、コロナ禍による大きな環境変化を受けて、計画の見直しを求める意見や、介護報酬の臨時的な取り扱いに対して賛否両論があった。
・第178回社会保障審議会介護給付費分科会(オンライン会議)資料
前回の「地域包括ケアシステムの推進」の議論に続き、この日は、▽自立支援・重度化防止の推進▽介護人材の確保・介護現場の革新▽制度の安定性・持続可能性の確保-の3テーマを取り上げた。
「制度の安定性・持続可能性の確保」では、感染症や災害の発生時もサービスが安定的・継続的に提供されるための対応が論点に挙げられた。コロナ禍を受けた介護報酬上の人員基準などを緩和する臨時的な取り扱いについて、「しっかりと効果検証を行い、恒常的な対応が必要なものと臨時的なものをまずは整理していただきたい」(河本滋史・健康保険組合連合会常務理事)など、新型コロナウイルス感染症に関連した発言が、委員から多数出た。
大西秀人委員(全国市長会介護保険対策特別委員会委員長、高松市長)は、介護職への慰労金などにより、「職員をねぎらうことができた」と評価する一方で、感染防止を伴うサービス提供には負担が掛かるため、第2波以降に向けて特例的な報酬設定を検討してほしいと述べた。また、1事業者だけではなく、業界団体内の施設同士で職員派遣を可能とするなど、協力し合える仕組みの構築が必要で、「県が間に入って協定等を結び、団体と連携した協力のスキームがある自治体もあると聞く」などとした。
一方、鎌田松代委員(認知症の人と家族の会理事)は、臨時的な取り扱いにより、高齢者へのサービス提供に従事した経験があれば、訪問介護員の資格のない者の従事が可とされたが、「1人で訪問する在宅介護が命に直結するものだと理解して配置されているのか」などと懸念を示した。また、通所介護でサービス提供の所定の時間に満たなくても、上位区分での請求を可などとしているが、「デイサービスの都合で3時間しか利用していないのに6時間の利用料を取られることに納得がいかない」などの相談があったと発言し、限度額を超えると全額自己負担になるため、利用の自粛につながるなど問題点を挙げた。「この事業の期限はいつまでか」などと、厚生労働省の事務局に質問する場面もあった。
「自立支援・重度化防止の推進」について、地域の住民主体で実施する体操教室など、介護予防のための「通いの場」作りを政府は積極的に進めてきたが、コロナ禍により環境が大きく変化したため、「多様な場の在り方と参加の在り方についてもう一度検討をいただけたら」(今井準幸・民間介護事業推進委員会代表理事)と、見直しを求める意見があった。 また、「介護人材の確保・介護現場の革新」では、ICTを活用した業務改善や文書の簡素化などが論点として示されたが、「事業所ごとの生産性向上と事務負担の軽減は重要だが、今後の地域包括ケアシステムの在り方を考えると、これ(コロナ禍)を機に、在宅へのサービス提供で個々の事業者がばらばらに取り組むのではなく、利用者や保険者を中心に、効率よく事業者間をつなぐプラットフォーム作りを推進してほしい」(今井委員)などと要望した。
厚労省は、コロナ禍で審議のスケジュールは調整中としているが、横断的なテーマの議論が一巡したことにより、今後は個別サービスの議論に入る見通しだ。また今回、関係団体ヒアリングの実施について、前回改定時のヒアリング団体に新たに2団体(日本栄養士会、日本介護事業者連盟)を追加した要領案が示され、了承された。