4月13日に開催された財務省の審議会において、財務省からいくつもの介護給付費の抑制案が示されました。次の2024年度の介護保険制度改正を議論している厚生労働省の審議会でも、これから取りあげられることになる抑制案です。このうち、とりわけ在宅介護事業者にとって関心の高い「要介護1・2の方の生活援助やデイサービスの総合事業への移管」について、現在の議論の状況と私の見解を述べたいと思います。【斉藤正行】
このテーマを財務省が公に提言し始めたのは、2014年の10月からであり、遡ること7年ほど前となります。要支援1・2の方の訪問介護とデイサービスが介護予防給付から外れ、総合事業への段階的な移管が実現したのはその半年後の2015年4月。当時、次の制度改正において要介護1・2も同様に総合事業に移管される可能性が高いのではないか、と介護業界は騒然となりました。
しかしながら、既知の通り、その後2度の制度改正において、議論の俎上には載るものの実現されることはなく、財務省による提言が繰り返されている状況であります。
ここからは、私自身の本テーマに関する見解を述べたいと思います。
私は財政再建の重要性を認識しており、介護事業者団体の代表の立場でありますが、同時に社会の一員として、社会保障制度改革に何が協力できるのか見出していくべきであると常に考えています。その認識を持つ私でも、この要介護1・2の方を総合事業に移管することには、現行の総合事業の枠組みのままでは、絶対に阻止しなければならないという強い反対の立場であります。
その理由は、先に総合事業へと移管された要支援1・2の状況を見れば明らかです。市町村の裁量によって報酬単価やルールの緩和が行われ、報酬が2割から3割削減されるケースが散見されており、更に厳しい削減幅の自治体も存在しています。
この状況が要介護1・2にも及べば、訪問介護やデイサービスの利用者の多数が要介護1・2の方で占められているため、間違いなく大半の事業者は事業継続が困難な状況となり、数多くの介護難民が生じ、地域包括ケアモデルの崩壊へと繋がることとなります。
この表現は決して過剰表現ではなく、だからこそ、過去2度の介護報酬改定においても、慎重な議論が繰り返され、実現には至りませんでした。
他方で、将来の人口構造を鑑みると軽度者改革の議論がこれから本格化していくことも避けがたい現実であります。
私は、仮に要介護1・2の方の総合事業への移管を検討するのであれば、市区町村に全面的に枠組みを委ねるのではなく、国が一定の人員基準や設備基準などの要件緩和の方向性を示し、単なる報酬削減だけでなく、事業者のコスト削減も同時に実現し、利益確保の道を示すことが必須であると考えます。
その際に重要なことは、利用者へのサービスの品質低下につながらないこと。そしてもう1つは、総合事業の枠組みだけでの制度設計ではなく、介護給付との一体運用に基づく要件緩和を検討することであります。
総合事業のみ要件緩和が実現されても、それは新たに総合事業だけを取り組む事業者への選択肢が広がることとなりますが、既存の事業者は要介護3以上の方に対する介護給付との併用となることから、同時一体的な運用での要件緩和が必須となるのです。
今後の制度改正や報酬改定の議論において、当団体としては上記の見解に基づき、しっかりと現場視点での意見要望を行ってまいります。業界関係者は、今後の議論の動向を注視していかなければなりません。