中央社会保険医療協議会 総会(第560回 10/20)《厚生労働省》
厚生労働省は20日、訪問看護利用者の1人当たりの訪問看護療養費(医療保険)の請求額が1カ月間で60万円以上に上るケースや、利用者などの求めに応じて主治医の指示に基づき訪問看護を緊急に行った場合に算定できる「緊急訪問看護加算」を毎日算定するケースがあるとのデータを、中央社会保険医療協議会・総会に示した。委員からは、こうした高額な請求や頻回の緊急訪問看護の実態を把握・分析するよう求める意見が相次いだほか、適正化すべきだとの指摘もあった。
厚労省によると、訪問看護ステーションの2022年の利用費用は約7,000億円で、15年から2倍超に増加しており、特に医療費の伸びが大きくなっている。
訪問看護利用者1人当たりの訪問看護療養費の1カ月間の請求額は平均9万8,125円で、1万円ごとに区切った分布を見ると3万円台が最も多い。一方、1カ月間の請求額が60万円以上の利用者が全体の1%余りおり、請求額の最高は116万2,640円だった。
緊急訪問看護の利用者数も年々増えており、23年6月時点では1万5,888人と4年前の2倍近くに増加した。全利用者に占める緊急訪問看護加算の算定割合も増加傾向にある。
訪問看護基本療養費の緊急訪問看護加算を1日以上算定している利用者の1カ月の算定日数は、1日が最も多く、月平均では2.6日。ただ、この加算を1カ月間に算定している利用者のうち、約1%が毎日算定していることも明らかになった。
議論では佐保昌一委員(連合総合政策推進局長)が「1カ月間、毎日算定することが緊急訪問看護なのか疑問だ」とし、緊急訪問看護の利用が適正なのか算定状況を詳しく分析するよう厚労省に要望した。
松本真人委員(健康保険組合連合会理事)も、頻回の緊急訪問看護が利用者から本当に求められているものなのか疑問があると指摘。その上で「どういう利用者がどの病態でどのようなケアが提供されているかサービス主体を含め分析し、場合によっては適正化する必要がある」と主張した。
これに対して江澤和彦委員(日本医師会常任理事)が「効率化の名の下で、訪問看護サービスの質が考慮されない適正化は慎むべきだ」とけん制した。ただ、頻回の緊急訪問看護の実態を調べることには理解を示し、調査結果を踏まえて必要に応じて行政指導などを実施すべきだと述べた。
長島公之委員(日本医師会常任理事)は、訪問看護療養費(医療保険)の請求額が高額になる利用者の中には例えば難病の患者らがいるケースもあるとし「単に高額ということに着目するのではなく、他にどのような対応が可能なのか丁寧に検討する必要がある」と指摘した。
資料はこちら
ダウンロード
関連資料