期中改定でのケアマネ処遇改善の行方。現場が希望する賃上げは困難?打開策は?

今補正予算で、居宅ケアマネを対象とした処遇改善給付が盛り込まれました。とはいえ、「月1万円」のみにより介護職との賃金の逆転現象も懸念されます。見すえたいのは本予算の他の支援項目、そして何より2026年度の期中改定です。どのような展開が予想されるのかについて幅広く考察します。

補正予算のもう1つのケアマネジメント支援

最初に、今補正予算で「居宅介護支援対象の支援」として盛り込まれた、もう1つの事業内容を確認します。それが「地域のケアマネジメント提供体制確保支援事業」です。もともと2026年度予算の概算要求に盛り込まれていましたが、補正予算が成立すれば施行の「前倒し」が図られることになります。

事業は大きく分けて3つ。(1)介護支援専門員(以下、ケアマネ)人材確保支援事業、(2)ケアマネ業務負担軽減支援事業、(3)居宅介護支援事業所経営改善支援事業となります。

(1)ケアマネ人材確保支援事業の例

  • 中山間・離島等地域における採用活動
  • 潜在ケアマネの実態把握や事業所とのマッチング支援
  • 潜在ケアマネの復職後の相談対応や業務環境の整備支援など

(2)ケアマネ業務負担軽減支援事業の例

  • 事務職員の採用や研修の支援
  • 公共団体による事務的業務等の受け皿の創設支援
  • シャドウワークに関する相談窓口の設置など

(3)居宅介護支援事業所経営改善支援事業の例

  • コンサル派遣による加算の新規取得や職員の待遇改善
  • やはりコンサル派遣による事業の大規模化・協働化等の経営改善支援
  • 利用者確保のための広報活動支援など

間接的な処遇改善となりうるものはあるが…

いずれも、ケアマネの直接的な人件費にあてるものではなく、あくまで人材確保や業務負担軽減に向けた取組みにかかる「経費」を補助するものです。総額は14億円です。

もちろん、中には「間接的」に処遇改善につながる項目がないわけではありません。たとえば、(2)での「事務職員の採用」により「取扱い件数の引上げ」が可能となれば、増収分を賃金アップにあてることは可能です。また、(3)のコンサル派遣で本当に加算の新規取得ができるなら、これも増収が期待できます。

もっとも、ケアマネ人員が限られる中での件数引上げは、業務効率化にかかわらず、ケアマネの離職リスクを高める恐れがあります。また、コンサル派遣の経費がまかなわれても、加算取得の実務自体が「現場負担を増やしかねない」と考える事業者もあるでしょう。

いずれにしても、すでにケアマネ処遇のための「持ち出し」を増やす事業所も多い中、国による処遇改善の動向が明らかになるまでは「新事業」も活用しにくいのが実情かもしれません。いずれにせよ、先の事業は処遇改善の展望が見えてこそのものとなりそうです。

ケアマネジメントの利用者負担導入との関係

そうなると、やはり2026年度の期中改定がもっとも重要となります。ここで、ケアマネの処遇改善が明確に位置づけられるのか。その金額は補正予算の「月1万円」を上回るものになるのか。そして、介護職員の賃金との逆転現象が生じないだけの上げ幅が確保されるのか—この3段階の行方が、現場の注目点となるのは間違いないでしょう。

ここで気になるのが、財源確保先ともなりえる「ケアマネジメントへの利用者負担導入」の議論です。たとえば、ケアマネの処遇改善と引き換えに負担導入を実現するというシナリオが浮上する可能性もあるでしょう。

しかし、利用者負担の導入がもたらすケアマネジメントへの影響は計り知れません。厚労省は多様な配慮案を打ち出していますが、与党側が原則10給付(住宅型有料の入居者は除く)を政府に求めるなど、大幅な負担回避の流れも徐々に高まりつつあります。

そこで財源確保はひとまず置くとして、先に要件ハードルを高めに設定する動きが予想されます。現行の処遇改善加算では、加算率にともなう要件ハードルが段階的に設けられています。これにならいつつ、特に「ケアマネの業務負担軽減策」等について、かなり厳しいハードルが設定される可能性があります。

加算で足りない分は自治体経由の補助金で?

とはいえ、ケアマネ不足が今後も加速する様相を見せている現状で、加算ハードルの著しい引上げは新たな問題を呼びかねません。

そこで浮上しそうなのが、要件クリアに向けて都道府県や市町村が中心となったサポート強化です。たとえば、先の「ケアマネジメント提供体制確保支援事業」の枠組みを拡充しつつ、自治体が加算取得を伴走型支援によって強力に後押しするという具合です。

なお、すでに自治体が独自にケアマネの賃上げ給付に乗り出すケースも見られます。もちろん、自治体の財源にも限りがありますが、先の加算取得サポートの進み具合によっては、国から「ケアマネの賃上げ」分の交付金を打ち出すことなども考えられるでしょう。いわば、加算取得がなされるまで、自治体経由で賃上げ分の補助を継続するわけです。

もっとも加算取得がなされても、介護保険財源だけの処遇改善には限界が生じがちです。そうなると、交付金経由で賃上げを補助するといったしくみが恒常化する可能性もあります(もちろん、法改正が必要となりますが…)。ケアマネの処遇改善を通じ、介護保険の公費割合を“ステルス的”に上げていくという流れもありえるのではないでしょうか。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。