介護・第1号保険料、所得410万円以上で引き上げへ 社保審・部会

社会保障審議会 介護保険部会(第108回 11/6)《厚生労働省》

介護保険の第1号被保険者(65歳以上)が支払う保険料について、厚生労働省は6日、年間の合計所得が410万円以上の人を対象に引き上げる見直し案を示した。現行制度では9つの所得段階が設定されているが、その上に4つの段階を新設し、所得に応じて基準額の1.8倍から2.6倍の範囲で増額する。介護保険制度の給付と負担の在り方を議論している社会保障審議会・介護保険部会に厚労省が案を示した。介護保険部会はこの案を大筋で了承し、最終的な調整を部会長に一任した。

介護保険制度を巡っては、団塊の世代の全員が75歳以上となる2025年、高齢者人口がピークを迎える40年ごろにかけて給付費が増加することを見据えて、制度の持続可能な在り方が議論されており、「応能負担」の仕組みを強化する必要性が指摘されてきた。

現在は、介護給付費の半分を65歳以上の第1号被保険者と40歳以上65歳未満の第2号被保険者の人口比で案分し、保険料をそれぞれ賦課している。このうち第1号被保険者の保険料は、サービス利用の見込みなどに応じて保険者(市町村)がそれぞれ設定しており、「所得段階別保険料」として9つの所得段階が設定されている。5段階目を保険料の基準額(全国平均で6,014円)とし、現行制度では年間所得が320万円以上の最も高い段階では基準額の1.7倍、年間所得が80万円以下の最も低い段階では0.3倍を払う仕組みとなっている。

厚労省は見直しの案として、この9つの段階に加え、年間所得が410万円以上、500万円以上、590万円以上、680万円以上の4つの段階を新たに設けて引き上げることを示した。増額することで低所得者の保険料が軽減されるとともに、介護職員の処遇改善などを公費で実施することができると説明した。委員からはこの見直し案に対し、大枠で異論は出なかった。

一方、この日の会合では、介護サービスの利用者負担を2割にする対象拡大の是非も議論したが、委員からは、物価高騰などで高齢者の生活が厳しくなっている状況を踏まえ、「一定以上所得」の判断基準について慎重な声が相次いだ。

座小田孝安委員(民間介護事業推進委員会代表委員)は、負担増から介護サービスの利用を控える人が増え、状態の悪化につながる可能性を指摘。直近のデータなどを踏まえて一層検討する必要があるとの見解を述べた。また、東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)も「利用者負担については1号保険料のように応能負担だけで考えるわけにはいかず、大変リスクを伴う」と述べ、生活に必要な介護サービスにまで利用控えが広がることへの懸念を示した。

この2割負担の対象拡大の在り方については、介護保険部会で引き続き議論を行う。

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