ケアマネジメントへの利用者負担の導入。 現場従事者に「容認」の流れも?

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次の介護保険制度見直しで、大きな論点の1つとなっているのが「ケアマネジメントへの利用者負担導入」です。では、現場の介護従事者はどう考えているのでしょうか。UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU)が組合員を対象に実施した「2022年度就業意識実態調査」を見ると、「利用者負担を導入した方がいい」という声も目立っています。

就業意識実態調査に見る「条件付きの容認」

上記の調査は、「次期介護保険制度について」尋ねたもので、その1つが「ケアマネジメントの給付のあり方」です。これについて、「現行の10割給付を維持し、利用者負担を導入しない方がいい」という回答は、月給制組合員(以下、月給制)で28.5%、時給制組合員(以下、時給制)で26.2%にとどまります。

では、多くが「利用者負担導入を容認しているのか」というと、「利用者負担を導入し、現行の10割給付を維持しない方がいい(つまり、無条件での利用者負担導入を意味します)」も、月給制で11.8%、時給制で8.6%と多くはありません。それ以外の組合員はどのような立場をとっているのでしょうか。

目立つのは、「条件付き」での「利用者負担導入の容認」です。具体的には、「利用者の所得に応じる配慮があれば、利用者負担を導入した方がいい」がもっとも多く、月給制で44.9%、時給制で55.0%にのぼります。他に「条件付き」となる回答では「支給限度基準額に含まれなければ、利用者負担を導入した方がいい」という回答も、月給制で10.5%、時給制で6.1%見られます。

ケアマネ以外の従事者がどう考えているか?

ちなみに、回答者が主に従事している職種は、月給制では入所系介護員が17.7%、時給制では訪問介護員が26.8%で、それぞれもっとも多くなっています。ケアマネは月給制で13.6%、時給制で5.5%にとどまります。

今回の実態調査の記者報告会では、NCCU会長が「ケアマネの半数が(利用者負担導入を)支持していない」「ケアプランを組むうえで、自分たちの業務に大きな支障があるということ」と述べています。しかし、介護従事者全体を通した調査からは、「条件付き」ながらの容認、つまり「利用者負担導入は仕方がない」という意向が目立っているわけです。

この調査結果から思い起こされるのが、やはりニュースで上がった、全国老人福祉施設協議会による厚労省への「介護保険制度等の見直し関する介護現場の要望」でしょう。

老施協の要望書でも「導入した場合」の案が

その要望では、以下のような論旨が展開されています。まず、「介護が必要になった方が、いつでもどこでも誰でもサービスを使えるようにするため、全額公費が望ましい」としつつも、「しかしながら」として特別養護老人ホーム(以下、特養)の立場からの意見が続きます。それは、「特養では介護支援専門員が人員配置基準に含まれていることから、入所後は実質(ケアマネジメントへの利用者負担を)負担していることになるため、公平性の面から議論は必要」というものです。

そのうえで、「仮に自己負担を導入する場合は、(居宅介護支援の)加算の有無で費用に差が出ることがないよう、1割負担ではなく定額制とすることも考えられる」としています。これなども、「条件付きで容認する可能性もある」ことを示唆しているといえます。

注意したいのは、介護保険施設の立場から、居宅との対比で「公平性」を論点に上げていることでしょう。これは、過去の議論でもたびたび指摘されていることで、施設現場の従事者の視点においても、「条件付きであれば容認もやむなし」と考えるうえでの大きな根拠の1つとなっているかもしれません。

介護従事者の多くも、介護保険料負担は重荷

いずれにしても、同じ介護現場からの発信として、「条件付き」であれ「利用者負担の導入への容認」が一定程度の波を形成しつつあります。当然、介護保険部会の議論も、こうした「波」にも左右されるでしょう。

ここで注意したいのは、介護現場で働く従事者にとっても、「介護保険料の負担」の大きさが重荷になっている現実です。特に、従事者の平均年齢が高い介護現場では、少なくとも「2号被保険者」の割合が高くなります。

ここに、「賃金の低さ」という要素がプラスされることにより、保険料負担の実感はさらに増すことになります。また、保険料負担が重くなれば、「介護保険の財源は限られている」という実感も増すことになります。

さらに、その「限られた財源」の中で、「自分たちの給与を上げていくには、(財源に余裕を持たせるためにも)利用者への一定の負担増もやむなし」という意識が、潜在的には広がっていることが想像できます。となれば、もう1つの論点である「2割負担層の拡大」についても、介護現場として「容認」に傾くという流れが生じる可能性もあるでしょう。

懸念されるのは、こうした流れが強まると「従事者」と「利用者」の間の考え方に大きな溝が生じかねないことです。それは、現場のケアにも影響を与えかねません。そのことを分かっている従事者もいるからこそ、ぎりぎりの選択として「条件付きの負担容認」を打ち出していると考えるべきでしょう。

果たして、この現状が介護現場(従事者・利用者も含め)に「幸せ」をもたらすのかどうか。施策側の「現場の空気がどうなろうと」という発想だけは、避けなければなりません。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。