家族支援の強化はどこまで? ケアマネがなすべき+αは何か?

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2024年度からのケアマネにかかる法令・通知等の改正に向け、重要な論点の1つとなるのが「家族支援の強化」です。現場のケアマネ実務がどのように変わる可能性があるのでしょうか。たとえば、国が力を入れる「ヤングケアラー支援」などをもとに読み解きます。

本来なら、新たな法整備が必要になるところ

ケアマネの家族支援強化としては、上記のヤングケアラー支援のほか、仕事と介護の両立支援カリキュラムの周知などの動きが見られます。また、次の法定研修カリキュラムの見直しでは、「他法他制度の活用が必要なケアマネジメント」などの科目新設が想定され、そこで多様な制度を含めた「家族支援」のあり方がテーマとなる可能性が大きいでしょう。

これまでも、利用者本人への支援の一環として、「家族支援」を位置づけるケースは多かったはずです。たとえば、家族介護の継続を可能にするための仕事との両立やレスパイトにかかる支援などがあります。これからはもう一歩踏み込み、家族の人生そのものをどう支えるかが問われることになりそうです。

もちろん、そのためには、本来なら「家族介護者支援」をはっきりと目的づけた法律が必要です。介護保険法を改正するという方法もありますが、必要な予算をつけやすくするには、独立した法整備が望まれるでしょう。

ヤングケアラー支援から見る家族支援業務

問題は、そうした法整備がなされないまま、省令や通知レベルでケアマネの実務がなし崩し的に拡大してしまうことです。その場合、新たな実務に適した報酬が十分に確保されず、業務量だけが増えることになりかねません。

現場のケアマネとしては、職能団体等を通じて訴えていきたい部分ですが、まずは「どのような業務が、どれだけ求められてくるのか」を予測しておくことが必要です。

ヒントとなるのは、2022年3月に公表された「多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアル」です。「ヤングケアラー支援」というと特殊なケースと考えがちですが、家族支援の原則は他ケースと同じです。

たとえば、上記のマニュアルで特に重視している原則の1つが、「介護者本人の意思の尊重」です。特にヤングケアラーの場合、「早急に介入し、支援策を導入する」という流れが強くなりがちです。しかし、本人にしてみれば「すぐにケアをやめたい」と考えているケースばかりではありません。

そうした思いに寄り添うことなく、拙速な支援導入やそのための情報収集に躍起となることで、支援者と介護者との関係性が壊れてしまう危険もあります。このあたりは、他の家族支援にも共通することです。

ヤングケアラーのアセスメントシートより

こうした「介護者との関係性の構築」という入口に立ったとき、当事者の意思を尊重しつつ、身近な理解者としてのステップを1つ1つ踏んでいくことが必要です。

たとえば、先のマニュアル内のアセスメントシートでは、「ケアが自分(介護者)にどう影響しているか」という質問シートがあります(PANOC-YC20といいます)。これは、ケア行為の肯定的影響と否定的影響を評価するもので、20項目の質問に対し「まったく感じない」「時々感じる」「よく感じる」の3つの選択で答えるものです。

具体的には、前者の肯定的影響として「ケアのために家族の絆が強まったと感じる」という項目が。否定的な影響としては、「ケアのせいで人生は生きる価値がないように思う」という項目があります。否定的影響の点数が高い場合は、当人が精神的苦痛に悩んでいる状態を示していることになります。

ただし、回答者は介護者当人ですから、あくまで主観であるとしても、質問に答えるうえで自身の感情と向き合わなければなりません。それは時として「つらい」行為であり、質問・評価者への強い反発を生じさせる恐れもあります。安易な活用は、支援者との関係性を崩すリスクもあるわけです。

家族との新たな向かい合い方が問われる⁉

確かに、介護者が自身の感情と向き合うことは、「今自分に何が必要なのか」を客観視し、自身の人生の尊重に向けて一歩を踏み出すためには不可欠な行程です。しかし、その道筋へと誘導していくには、支援者が「当人にとっての理解者」であるという認知を獲得しなければなりません。高いスキルが要されます。

もちろん、そのスキルが求められるのは必ずしもケアマネであるとは言えません。ヤングケアラーであれば、教育現場の支援者の方が当事者との距離感は近いかもしれません。仕事との両立に悩む人であるなら、企業内の上司や人事担当者ということもあるでしょう。

とはいえ、家庭という空間で家族介護という状況が発生している場合、当事者と向かい合う密度が濃くなるのはケアマネとなりがちです。その時に、家族介護者が「自分自身と向かい合う」という機会を作り出すとなれば、そのための課題分析や目標設定も意識することが必然的に求められてくるでしょう。

今まで家族に対して、そうした向かい合い方をしてきたか──これが問われるとして、ケアマネ実務も大きな変革が必要になるかもしれません。「家族支援」に向けて、上乗せされるスキルがどこまで必要になるのか、現場しても想像力を働かせることが求められます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。