医療介護総合確保方針の改定 実は、介護現場にも大きな影響が…

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2024年度は、介護・診療報酬の同時改定(障害福祉分野を含めるとトリプル改定)となります。都道府県では、介護保険事業支援計画とともに医療計画の策定を進めなければなりません。その同時策定の指針となる、医療介護総合確保の方針の見直し案が示されました。

方針案に示された「人材確保と働き方改革」

方針案の中で、現場として気になるのは、基本的な方向性の1つである「サービス提供人材の確保と働き方改革」でしょう。ここで示されている具体的な内容は、単に都道府県の計画作成に反映されるだけでなく、今後介護給付費分科会で議論される報酬や基準の見直しに大きくかかわってきます。

介護従事者に関する内容を整理すると、大きく4つに分けることができます。

第1に、これまでの処遇改善の取組みに加え、ICTや介護ロボット等の活用、手続きのデジタル化等により「介護現場の生産性向上の取組み」を推進するというもの。「また、生産性の向上か」と思う人もいるかもしれませんが、重要なのは、これが今回の介護保険法の改正案にも反映されていることです。

国会に提出されている法案では、市町村が策定する介護保険事業計画および都道府県の介護保険事業支援計画の中に、「生産性の向上に資する取組み」について記すことを努力義務とする規定を設けています。また、都道府県には、保険者(市町村)の介護保険事業運営に対する助言・援助の責務がありますが、その助言・援助の内容にも「生産性の向上に資する取組みの促進」が加えられました。

「生産性の向上」を制度に位置づける流れ

あくまで努力義務のうえ、現場に直接関係する規定ではない──と軽視するわけには行きません。国会で制定される法律は、その後に国が示す事業指針などの土台にもなります。

法の成立を見込んだ場合、今年7月頃に各種事業計画の指針案も示される予定です。これを受けて、都道府県および市町村は、「現場の生産性の向上」に向けた現場への周知など、さまざまな方策を打ち出すと思われます。

たとえば、新年度から都道府県に「介護生産性向上総合相談センター(仮称)」が設置され、介護現場革新会議の開催をセットで実施した場合の補助金が国から出されます。都道府県としては、先の総合相談センターの活用とともに革新会議への参画を事業者に働きかける動きを強めることになりそうです。

ここに、介護給付費分科会で生産性向上にかかる取組みを運営基準等で義務づけたり、新たな加算要件に加えるなどの動きが加われば、現場としても「生産性向上は自分たちに関係ない」とは言っていられません。

生産性向上のプロセスを運営基準で定める?

あくまで予測ですが、「生産性向上」にかかる一定のプロセス(業務仕分けに始まる現場改革の計画策定など)を示したうえで、3年ほどの経過措置期間を設けるなどして、運営基準で実施の義務化を図るといった改定がなされる可能性もあるでしょう。2021年度改定で、感染症対策の強化やBCPの作成が義務化されたという流れに準じるものです。

仮にそうした規定が誕生した場合、「生産性向上の取組み」は、すべての事業所・施設にとって「わが事」と受け止めざるを得なくなります。今回の総合確保の方針案は、そうした流れにつながっているわけです。

このことは、「生産性の向上」に限った話ではありません。今回の方針案では、介護従事者に関する2つめのポイントとして、「専門性を生かしながら働き続けられる環境づくりや復職支援」がかかげられています。3つめは「学校等と連携した介護の仕事の魅力発信」。そして、4つめに「いわゆる介護助手の導入等の多様な人材の活用」が示されています。

これらも、単に都道府県のための方針にとどまらず、先に述べた運営基準等の改定という流れにつながる中で、すべての現場にかかわってくると受け止めるべきでしょう。

魅力発信などの地域貢献も現場の責務に?

たとえば、3つめの「介護の仕事の魅力発信」。これについては、国による事業展開のほか、都道府県や業界団体によるイベント開催など、さまざまなものが展開されています。

これが今回の総合確保のための指針に盛り込まれたということは、今後の事業規模もさらに拡大されるのは確実です。重要なのは、中高生など進路がまだ定まっていない世代や、これまで介護業界に関心がなかったという人々にも、どうやって関心を引き付けるだけの魅力を届けるかが問われることです。

カギとなるのは、当然ながら「現場からの実感をともなった発信力」です。これを進めるには、現場従事者がイベント等に出向いて参加者と対話したり、学校現場等でプレゼンを行なったりすることも必要でしょう。つまり、現場の協力がいかに得られるかが、事業効果を高めるポイントとなるわけです。

となれば、2024年度改定で、「魅力発信事業に協力していること」を加算要件などに設定する動きが出てくるかもしれません。たとえば、事業所・施設に地域貢献加算のようなものを設け、その要件で上記の「魅力発信事業への協力」などを求めるといった具合です。

現場実務に直結しないインセンティブというのは、考えにくいかもしれません。しかし、国は人材確保や(総合事業を含めた)資源整備のカギに「地域づくり」をかかげています。サービス現場に「地域づくりへの参画」を求める流れは強まると見るべきでしょう。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。