通院時情報連携加算の対象拡大は、 「歯科医師」より「訪問診療」が先では?



2024年度改定に向けた居宅介護支援の改革案で、通院時情報連携加算の見直しがあがっています。2021年度改定で誕生した同加算ですが、件数ベースでの算定率は0.5%にとどまります。厚労省として、どのような方向に導きたいというビジョンがあるのでしょうか。

厚労省が示した改革案を改めて整理すると

まず、通院時情報連携加算の要件について整理しておきましょう。(1)利用者が医師の診察を受ける際に同席すること。(2)ケアマネから医師等に対して、利用者の心身の状況や生活環境等の必要な情報を提供すること。(3)ケアマネは医師等から利用者に関する必要な情報提供を受けること。(4)(1)~(3)の旨をケアプラン(支援経過記録など)に記録すること。

以上の要件を満たしたうえで、利用者1人につき1月に1回だけ算定できます。なお、同席にあたっては、利用者に同席する旨や同席が診療を進めるうえで支障がないかどうかを医療機関に確認しておくことが必要です(疑義解釈より)。また、上記(2)、(3)で「医師“等”」となっていますが、一部の保険者が示す解釈では看護師等も含むとしています。

こうした要件のもとで算定が進む同加算ですが、今回の改革案では、利用者が「歯科医師」の診察を受ける際に同席した場合も、算定の対象とするとしています。これは、口腔衛生にかかる歯科医師との連携が、ケアマネジメントに一定の効果が見られたとする調査結果などがベースとなっています。

2021年度改定時の疑義解釈で目立つのは?

ケアマネジメントにおける口腔衛生の状況については、ケアマネの多くが「確かに重要」という認識は持っていると思います。一方で、今回の改革案に「いまひとつピンと来ない」という人もいるのではないでしょうか。

通院時情報連携加算については、保険者に寄せられる疑義の内容から、「歯科医師」について尋ねているものは多くありません。むしろ目立つのは、「訪問診療への同席」が算定要件にかなうかどうかというものです。

行政側の解釈としては、「訪問診療の同席」は算定対象とはなりません。しかし、2022年度の診療報酬改定では、多職種連携という観点からの訪問診療の位置づけに1つの改革がほどこされています。それが、外来側の医師と在宅(訪問診療)側の医師との連携(共同指導)を要件とした外来在宅共同指導料です。

これは、外来通院を行なっている在宅の患者が、スムーズに在宅医療に移行できることを狙いとしたものです。介護保険も同時に使っているケースも想定される中では、こうした診療側の変化は、担当ケアマネにとっても大きなトピックとなるはずです。

中医協では「訪問歯科」が大きなテーマに

このしくみが2022年度の診療報酬改定で誕生したとなれば、介護・医療連携が重視される中では「ケアマネ側に対応するしくみ」も想定されてしかるべきでしょう。先の疑義解釈で、「訪問診療」との連携が要件となるかという質問が目立ったことを見ても、この「訪問診療」をめぐる改定案を出すことが先決ではないでしょうか(この場合「診療時情報連携加算」といった名称変更も必要でしょう)。

もちろん、先に述べたように「口腔衛生」の観点からの「歯科医師」との連携も重要ではあります。しかし、訪問診療については、在宅での重度化だけでなく、地域での通院アクセスや介護タクシー等の台数確保の困難さなどから、今後も患者数は伸び続けるのは間違いありません(実際、この6年で在宅患者訪問診療料の算定件数は4割伸びています)。

もっと言えば、現在の中医協の議論では、訪問歯科診療の推進が在宅医療での大きなテーマとなっています。となれば、ケアマネの通院時情報連携加算で「歯科医師」を連携対象とするのなら、医療側の改革との整合性という点からも「訪問診療」を対象に加えることが前提となってしかるべきです。

想定される算定格差に現場が戸惑うことも

厚労省としては、やはり今回示している「ターミナルケアマネジメント加算」の算定対象の拡大案(対象疾患を末期がんに限定しないこと)に「包括できる」と考えているのかもしれません。在宅でのターミナル期には、訪問診療のかかわりが大きいからです。

しかし、先に述べたように、訪問診療ニーズはターミナル期だけでなく、さまざま地域事情で増えていきます。仮にターミナルケアマネジメント加算の中に含めていくとしても、やはり無理があるでしょう。

2024年度の診療報酬側の改革で、訪問診療はもとより訪問歯科診療も大きく増えていくとします。そうなると、利用者の受けている診療形態によって、ケアマネ側の通院時情報連携加算の算定に格差が生じかねません。これは、介護・医療連携体制の拡充という観点からも、問題の1つとなりかねません。

そもそも、「訪問診療」よりも「歯科診療」を改定要件として優先させたという流れには、適切なケアマネジメント手法、およびそれにもとづいた先だっての課題分析標準項目の改定(内容例での「口腔内の状況」の加筆も際立つ)がベースとなっている感があります。

これも重要な課題ではありますが、今利用者が受けているサービスの実態の中で、いかに算定格差を解消するかという視点の方が優先度は高いはずです。保険料の高騰が注目を集める中、被保険者や現場が納得できる施策順位には、より慎重さが求められます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。