2024年度改定の一大テーマ「口腔」。 ケアマネ・居宅の実務はどう変わるか?

近年の介護報酬・基準改定の見直しでは、重点的なテーマとして「リハビリ・機能訓練」「栄養」「口腔」があります。2024年度改定に向けた審議報告案を見ると、これらの一体的取組みもさることながら、その中でも「口腔」のクローズアップが目立ちます。現場で意識すべきポイントはどこにあるでしょうか。

「通院時情報連携加算」見直しの重要な意味

まずケアマネ関連ですが、通院時情報連携加算において、利用者の「歯科医受診」の際の連携も加算の対象となりました。ここには、単に「加算要件が広がった」という以上の意味があることに注意が必要です。

たとえば、先に改定された課題分析標準項目の「項目の主な内容例」において、ADLや栄養関連の項目以上に追記が特に目立つのが「口腔の状況」です。特に口腔内の状況では、歯の本数や義歯の有無だけでなく、歯の汚れ、舌苔・口臭の有無、口腔乾燥の程度、腫れ・出血の有無までも取り上げています。

これらは、法定研修カリキュラムの土台となる「適正なケアマネジメント手法」が反映されている──というレベルにとどまりません。関係してくるのが、今回の審議報告案に示された訪問系等のサービスに適用される「口腔管理にかかる連携の強化」です。

訪問系等にも口腔スクリーニングの新加算

今回の審議報告案では、訪問介護、訪問看護、訪問リハ、そして短期入所系サービスにおいて、歯科専門職(歯科医師のほか、歯科衛生士も含むと考えられる)との連携のもと、以下の取組みを評価する新加算を設けるとしています。その取組みとは、利用者の口腔の衛生状態および機能を介護職員が評価し、利用者の同意を得たうえで、その情報を歯科医療機関やケアマネに提供するというものです。

いわば、通所系等における口腔に関するスクリーニングのしくみを、訪問系・短期入所系にも導入するという流れです。将来的には、施設系の口腔衛生管理加算のような、口腔関連の評価を衛生管理の実践につなげるといったしくみもできるかもしれません。そのためのワンステップと考えていいでしょう。

ここで注意したいのは、口腔に関する評価情報が、ケアマネにも提供されるという点です。ケアマネとしては、この情報をモニタリングに活かすのはもちろんですが、利用者が歯科医療にかかっている場合、介護現場からの情報を担当歯科医師と共有しつつ、情報連携を進めるという流れが想定されます。

ケアマネの実務はどう変わっていくか?

もともと訪問介護では、現場のヘルパーによる利用者の口腔や服薬の状況に関する「気づき」の報告を受けて、サ責がケアマネ等に報告するという規定が設けられました。ただし、この規定はあくまで「現場のヘルパーが気づいた時」というタイミングに左右されます。そうなると、気づきの時点で、口腔状況がかなり悪化していることも考えられます。

これに対し、日常的なサービス提供時での取り組みを評価する加算となれば、当然、「利用者の口腔状況のどんな点をチェックするか」という留意事項が厳格に定められる可能性が高いでしょう。ケアマネ等への情報提供に際しての様式も定められるかもしれません。

となれば、得られた情報をもとに、ケアマネなりに利用者の口腔状況にかかるリスク分析が求められます。そのうえでの歯科医師との情報連携ということになれば、先の通院時情報連携加算も「算定対象が増えた」というだけでなく、その情報連携の質が問われることになりそうです。このあたりも、留意事項等の改定に注意が必要でしょう。

さらに言えば、利用者が歯科医の受診を行なっていない場合、利用者に受診(通院困難の場合は、訪問歯科医による受診)を勧めることが「望ましい」という規定ができるかもしれません。もちろん、医療機関の受診は利用者の選択によるものですが、課題分析を通じた「勧奨」が明記される可能性はあります。

将来的には、歯科医療機関との協力締結も?

ケアマネにそこまで求めるだろうか──と思われるかもしれません。しかし、その兆候は施設系の改革案からうかがうことができます。施設系の「口腔」に関する改革案では、利用者の入所時やその後の定期において、口腔の衛生状態・機能の評価の実施を「義務」づけるとしています。やはりスクリーニング強化に向けたしくみですが、こちらは「加算」ではなく「基準上の義務づけ」です。

その目的として示されているのが、「歯科専門職による適切な口腔管理つなげる観点」です。周知のとおり、施設系では2021年度改定で口腔衛生管理体制加算が廃止され、その要件(歯科専門職による現場職員への技術的助言・指導)が基準に組み込まれました。この時点ですでに、歯科医療機関との連携体制が築かれているわけです。これを土台に、早期の歯科受診につなげるというレールを敷くことも意図されていると考えていいでしょう。

そうなると、先に述べたケアマネによる「歯科受診の勧奨」も浮上する可能性は高いわけです。将来的には、居宅介護支援事業所の重要事項に、「協力歯科医院」を明記するという規定が設けられるかもしれません。

この他、特定施設でも口腔衛生管理体制加算が廃止され、その要件を基準に組み込む案も上がっています。次期改定では、あらゆるサービスで、「口腔」が一大テーマとなっている点に、もう一度目を凝らすことが必要です。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。