2024年度改定が大きな転機に⁉ 現役世代の介護保険料上昇で問われる説明力

 

厚労省より、2024年度の介護保険の2号保険料の1人あたり月額見込み額が示されました。2023年度見込み額から60円アップの6,276円で、過去最高となっています(企業健保等の加入者は事業主と折半)。すでに1号保険料の月あたり平均基準額を上回っている中、被保険者の意識に注意が必要かもしれません

働きながら家族の介護に直面する2号保険者

2号保険料は、40~64歳の人が負担している点で、現役で働き続けながら保険料を納めている人も数多くいます。自身に介護が必要になることもありますが、どちらかと言えば、「自身の親の介護」などをめぐり「仕事と介護の両立」が課題となりがちな世代です。

総務省の就業構造基本調査(2022年)によれば、働きながら(有業者で)介護をしている人は364万人超で、10年前と比較して約73万人増(25%増)となっています。また、家族の介護・看護のために過去1年間で離職した人の数は、再び10万人台となりました。

そうした中、いわゆる現役世代となる2号被保険者において、介護保険制度を頼みとする傾向はますます高まっています。

社会保障をめぐっての現役世代の負担増は常に問題となりがちです。ただし、「働きながら家族の介護に直面する世代」ともなりがちなゆえ、「一定の負担は仕方ない」という意識は以前より高まっている可能性もあります。

2号被保険者の意識が変わりつつある?

問題は、現役世代の被保険者のニーズが明確になれば「保険料に見合った支援が受けられるのか」という意識も同時に高まることです。これまでは、「保険料が上がり続けている」ことへの漠然とした不安・不満が中心だったかもしれませんが、今は「負担する保険料と受けられる支援とのバランス」が、より明確に意識されていると考えていいでしょう。

そうなると、今まで以上に「サービスの中身」への注目度が高まります。介護報酬が上がれば、利用者負担も高まります。保険料の上昇に加えて利用者負担も高まるとなれば、サービスの中身に対し、「それだけの負担に見合っているのかを精査したい」という意識も強まっている点を考えなければなりません。

たとえば、サービス事業所・施設と契約する際には、利用者やその家族は、サービス提供に際しての重要事項や1つ1つの加算についての説明を受けます。いずれも、その時々の報酬・基準改定が反映されます。これを現役世代の家族は、どう受け取るでしょうか。

処遇改善加算の再編をどう受け止めるか?

先に述べたように、利用者側(現役世代である家族)の「内訳について納得したい」という意識が高まっているとします。一方で、基準・加算の項目は改定ごとに複雑化しています。ここで「事業者の説明はきちんと聞きたいが、複雑化した基準・加算への理解が追いつかない」というジレンマが生じがちです。

ちなみに、2024年度改定では報酬体系の簡素化が議論されました。ただし、たとえば処遇改善加算の再編については、「配分ルールなど」は統一されたものの、要件が積み重なっていくという形で「加算区分」が再編されています。利用者やその家族にとって、要件などの細かさに変わりはなく、簡素化されたイメージは薄いのではないでしょうか。

説明する側のケアマネ等としては、「そこまで気にする利用者、家族はいない」と思うかもしれません。しかし、介護従事者の処遇改善への関心は、利用者の間でもじわじわと高まっています。たとえば、ホームヘルパー不足が著しいことで、地域によって「希望する時間帯などに訪問介護が使えない」という状況は実感的に増えているからです。

そうなると、「保険料負担は上がっているが、その分が本当に人材不足解消につながっているのか」という疑問が高まるのも自然です。保険料と加算が反映された自己負担という二重負担の中で、「何がどう変わったのか」を詳細に知りたいという要望は、今後ケアマネ等にも多く寄せられるのではないでしょうか。

現役世代が抱く自身の経験と照らした不安

利用者家族にとって「知りたい」という範囲も、今後は変わってくるかもしれません。たとえば、自立支援・重度化防止に向けた科学的介護の推進と言われても、「今はそれよりも希望に沿ってサービスが使えるだけの資源が整っているのか」の方が気になるはずです。

生産性向上に向けた取組みなどについても、「ICTやセンサーなどの活用の重要性は分かるが、現場の職員に過剰なストレスがかかることはないのか」と考える人もいるでしょう。

現役世代の場合、自身も会社などで働きつつ、世代的に最新の業務効率化に追いつけないといった経験を抱いていることもあります。そうなると、自身の経験に照らして「ICT等による現場のストレス増大も、利用者への虐待増加などの一因になっているのでは?」という思考も生じてくるでしょう。

そうした折、2024年度改定では、生産性向上への取組みに対する「加算」も誕生します。最新のしくみへの「漠然とした不安」が漂う中で、そこに「加算による負担増が加わる」となれば、「きちんとした説明を求めたい」という意向もさらに高まることになるでしょう。

ケアマネや事業所の管理者・相談員などにとって、利用者家族の説明ニーズの高まりは、今後大きな負担となるかもしれません。バックアップする保険者として、利用者家族への対応窓口などの充実も必要になるでしょう。2024年度改定は、そうした「事業所・保険者の対応力」にとっての転機となりそうです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。