居宅介護支援は基本報酬等アップ。 ケアマネの処遇改善は実現するか?

2024年度の介護報酬・基準の改定項目が示される中、ケアマネとしては、これまで以上に基本報酬や各種加算への注目が集まっていると思います。処遇改善加算が居宅ケアマネに適用されない中、所定単位の動向によって処遇改善が左右されることになるからです。

基本報酬アップのみの処遇改善効果は低い?

基本報酬はすべての区分で引上げとなり、引上げ幅はおおよそ0.9%。逓減制にかからない区分では、月あたり10~13単位の引き上げとなります。ちなみに、新設となる「居宅介護支援が直接指定を受けた場合の介護予防支援」は、改定前の「包括での報酬」と比較すると34単位(7.7%)の引き上げです。

たとえば、2021年度改定で「逓減制の緩和」を適用していて、ケアマネ1人あたり44件ぎりぎりまで担当していたとします。仮に利用者全員が要介護3以上で、その件数を維持した場合、ケアマネ1人あたりの増収は13単位×44件=572単位となります。1点=10円として計算すると、月5,720円の増収となるわけです。

居宅介護支援の収入にかかる給与費の割合が、約77%ですから、ケアマネ1人あたりの賃金増にあてられるのは4,400円程度ということになります(2023年度介護事業経営実態調査より)。2月からの介護職員処遇改善支援補助金で、「月平均6000円の賃上げに相当する」としている点を考えると、「かなり低い」という印象が先に立つでしょう。

ポイントとなるのは取扱い件数等の見直し

ただし、今回の居宅介護支援の改定では、 ここに「逓減制にかかる取扱い件数のさらなる緩和(+5件)」と「取扱い件数における介護予防支援の計算上の緩和(1/2⇒1/3)」が加わります。また、介護予防支援をどのように受けるかによって、先に述べた7.7%という基本報酬の引き上げも影響してきます。

たとえば、居宅介護支援の基本報酬だけに着目すると、+5件の緩和件数分の利用者がすべて要介護3以上であれば、単純計算でケアマネ1人あたり月7,055単位の増収です。この5件の上乗せがすべて介護予防支援であるとするなら、472単位×15件で増収は月7080単位と上記の増収を上回ります。

金額に換算すれば7万円超。先の基本報酬アップ分をプラスすれば、7万6,000円ほどの増収となります。これに給与費割合の77%を掛けると、月5万8,000円ほどになります。ここに、特定事業所加算や入院時情報連携加算の単位数アップも加わることになります。

今改定で、月3万円ほどの処遇改善が実現?

この試算を見て、「そこまでは上がらないだろう」と考える人も多いかもしれません。上記の試算では、担当件数(介護予防支援含む)の今改定にかかる単純な上乗せをもとにしているからです。そこまで増やすのは、ケアマネの実務面のキャパシティを考えた場合に非現実的とも言えます。事業所としても、ケアマネ不足の時代に「抱え込み過ぎて、バーンアウトされても困る」と考えるはずです。

ちなみに、厚労省の介護事業経営実態調査を見ると、2019年度と2022年度の両決算時の比較で、常勤換算でのケアマネ1人あたりの実利用者数は4.6人増えています。2021年度の逓減制の緩和に加え、ケアマネ不足によって「1人あたりの担当人数を増やさざるを得ない」という状況もあるでしょう。

この調査にもとづけば、逓減制のさらなる緩和や介護予防支援の報酬増・取扱い件数の算定見直しにより、ケアマネ1人あたり月5万円の処遇改善は実現されることになります。

もっとも、先に述べたように「ケアマネが現状で手一杯」となっている可能性は十分にあります。となれば、実際は担当件数の伸び率は鈍る可能性があり、月5万円の60%程度となる「月3万円の処遇改善」というあたりが現実的な数字と言えそうです。

実際、2020年度の介護職員等の処遇状況調査によれば、「介護職員以外への配分」を認めた特定処遇改善加算を「算定していない」ケースで、施設等のケアマネの給与は看護職員より2万7000円ほど低くなっていました。居宅ケアマネのケースと一概には比較できませんが、その差が埋まる金額という点で、厚労省が目指すレベルなのかもしれません。

施行されないと読みにくい点も多々あり

しかし、今改定が実際に施行されないと読みにくい点が多々あることも事実です。

要因の1つは、処遇改善加算が適用されるケースと異なり、収入増の処遇改善への配分は事業所に任されていることです。確かに、ケアマネ不足の時代に収入増を賃金へと適切に反映させなければ、他事業所への転職を誘発するなどで、事業所運営は成り立ちません。しかし、こうした流れが生み出されるまでには時間がかかる可能性もあります。

もう1つの要因は、やはり「ケアマネの実務負担の限界」が近づいていないかという点です。2022年度の老健事業の調査では、逓減制の緩和を適用したケースで「ケアプランの質が上がった」、「利用者と接する時間が増えた」などポジティブな回答が目立ち、厚労省の思い切った緩和策につながっています。

とはいえ、それは限られたケアマネの力量が「経時的に上がった」という見方もあるかもしれません。一歩先を見つめた時、特定のケアマネの心身への影響はどうか、ケアマネジメントの質は本当に維持できるのかについて、早急な検証が必要になりそうです。

特に、他法他制度にかかるケアマネへの実務負担がますます増えていきそうな中、そのあたりの賃金バランスもますます問われます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。