
2024年度改定で目立ったテーマといえば、(リハビリ・機能訓練、栄養、口腔の一体的取組みを含めた)「口腔衛生管理」の強化です。一方、診療報酬とのダブル改定でじわり浮上したのが、服薬等にかかる介護・医療連携のあり方です。2027年度改定に向けて、今から見すえたい実務上のテーマといえます。
ケアマネへの情報提供を評価した薬剤師加算
今回の診療報酬改定では、薬局の薬剤師からケアマネへの服薬管理等にかかる情報提供を評価する項目が誕生しました。以前、少しだけ取り上げたこともあるテーマです。
具体的には、以下の通り。診療報酬では、薬局に来局する要介護者等について、薬剤師から関係機関への情報提供が行われた場合に「服薬情報等提供料」が算定されます。ここに、「ケアマネに必要な情報を文書により提供した場合」の区分が設けられました。
また、入院していた利用者が退院して在宅に復帰した際、薬剤師による在宅療養に必要な薬学管理の指導等が「在宅移行初期管理料」で評価されます。ここでも、「必要な情報を文書でケアマネに提供すること」が算定要件となりました(上記の服薬情報等提供料で情報提供がなされている場合は算定できません)。
もともと薬剤師による要介護者への服薬関連指導等に関して、介護保険では居宅療養管理指導(薬剤師が提供する場合)が算定されています。この介護側の報酬が算定されていない場合、もしくは居宅療養管理指導への移行前の場合に、先の2つの診療報酬上の評価をあてたのが今改定という位置づけです。
薬剤師からケアマネへ、どのような情報が?
ケアマネとしては、利用者が居宅療養管理指導を利用するか否かにかかわらず、かかりつけ薬局の薬剤師からの情報が提供されるしくみが整ったことになります。
では、具体的に薬剤師からケアマネにどのような情報が提供されるのでしょうか。厚労省は、利用者に対する薬学的シートとともに、その記載内容にもとづく情報提供様式を示しています。国立研究開発法人・長寿医療研修センターHPの「高齢者薬学教室研修室」のページ(※)からダウンロードできるので、事前に確認しておくことをお勧めします。
薬学的シートは、薬剤師が利用者の生活様式を評価するためのシートで、(1)検査値、(2)睡眠、(3)認知・感覚器機能、(4)食事・口腔ケア、(5)歩行・運動機能、(6)排せつ、(7)薬物有害事象の各項目から成り立っています。
薬剤師がこれらの項目を評価したうえで、情報提供様式内の「薬学的評価シートアセスメントのまとめ」に記すことになります。
※長寿医療研修センター
https://www.ncgg.go.jp/hospital/kenshu/organization/yakugaku.html
入院時の提供情報にも活かせる余地が…
評価シートの項目を見ると、ケアマネ側が収集するアセスメント情報との関連も見受けられます。また、利用者の入院ケースなどで医療機関への情報提供を行なう際、参考にできる情報も入手できそうです。
たとえば、入院時情報連携加算の情報提供書の様式が改定されましたが、その中に「薬剤アレルギー」や「特記事項」を書き込む欄もあります。このあたりは、薬学的評価シートの(7)などをもとに、薬剤師からケアマネに提供された情報を活かすことができます。
ケアマネとしては、入院時の情報提供の迅速化が図られる中、「その時になって改めて確認する」という手間が取りにくいこともあるでしょう。そうした場合に、この薬剤師によるアセスメント情報と自身が収集しているアセスメント情報を照らし合わせたうえで、正確な情報記入の一助とすることができます。
薬剤師による居宅療養管理指導の改定も注目
ちなみに、末期がんの他に、心不全や呼吸不全での在宅の看取りケースも今後は増えてきます。ターミナルケアマネジメント加算の対象者拡大も、それを想定しています。
その際、心不全や呼吸不全で医療用麻薬注射を頻回で行なうなど、利用者にかかる薬学管理も複雑になり、薬剤師からのアドバイス等を求める機会も増えることが想定されます。
こうした状況下、今改定では薬剤師が行なう居宅療養管理指導で「終末期におけるがん以外の在宅患者への薬学管理」について、頻回訪問が可能となりました。また、医療用麻薬持続注射療法加算も誕生しています。
ケアマネとしては、在宅での看取り機会が増える中で、薬剤師との連携機会や共有情報の増大をどのようにケアマネジメントに活かすかがますます問われることになります。
その一方、ターミナルケアマネジメント加算を算定するケース以外で、利用者の平時からの対薬剤師連携に関して、ケアマネからの情報提供等を評価する加算はありません。あくまで運営基準上で、適切な服薬がなされていない(薬が大量に余っているなどの)ケースでの情報提供が求められているだけです。
しかし、診療報酬等で薬剤師側による情報提供の評価が手厚くなる中、当然、ケアマネ側からの情報提供を新たに報酬上で評価するしくみが登場する可能性は高いでしょう。その点で、2027年度改定において「薬学管理にかかる連携」が一大テーマになることが予想されます。先に示した薬剤師からの情報シートなどを参考に、事業所としても今からノウハウを蓄積しておきたいものです。
【関連リンク】
厚労省通知Vol.1254 - ケアマネタイムス (care-mane.com)

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。