ケアマネの更新制廃止は実現するか? 「先送り」も想定される中での改革可能性

今回は、「ケアマネジメントにかかる諸課題検討会」の中間整理案から、特に注目点となっている「ケアマネ更新制」の行方について取り上げます。更新制廃止の可能性にも含みを持たせた整理案となったわけですが、今後の展開はどうなっていくのでしょうか。

ケアマネの更新制にはこだわらない流れに?

本ニュースで取り上げた通り、今回の整理案の「たたき台(素案)」の時点では、「更新研修を含めた法定研修」については、「継続して実施することを前提とする」となっていました。あくまで「更新時の研修」は残したうえで、受講の負担軽減策を議論するという方向性であり、それゆえに「更新制の廃止」はありえないという立ち位置だったわけです。

これが、中間整理案では「継続して実施」が削除され、前提となったのは「ケアマネの資質の確保・向上」です。つまり、ケアマネの資質が確保・向上できれば、現状の更新制にはこだわらないという可能性を残したことになります。この点は、2025年の介護保険部会の議論を左右することになるでしょう。

もっとも、「更新制廃止の可能性が高まった」と明言できるわけではありません。実際、更新研修については「大幅な負担軽減を図る」とともに「そのあり方についても検討する」としています。まずは「大幅な負担軽減」について議論しつつ、その流れで「更新研修自体の廃止(実質的に「更新制の廃止」)」も含めたあり方も検討することになりそうです。

中間整理案で示された法定研修の負担軽減策

上記のことを頭に入れたうえで、今後の議論の展開を見すえてみましょう。まず、中間整理案で示されて法定研修にかかる方針ですが、以下のようになっています。

A.研修の質の確保や費用負担の軽減の観点から、全国統一的な実施が望ましい内容は、国レベルで一元的に作成する。

B.Aについては、「オンラインでの一斉配信」および「オンデマンド化」し、研修科目ごとに分割して受講できるしくみとする。

C.更新研修については、更新までの5年間に分割して受講可能なオンデマンド化等の環境の整備について検討する。

D.A以外の一部の科目については、各地で実施されている法定外研修のうち、法定研修に即したものについては「法定研修とみなす」という柔軟な取り扱いとする案もある。

なお、受講費用の負担軽減については、都道府県に対して地域医療介護総合確保基金の活用をうながすとともに、教育訓練給付制度の対象であることの周知がうたわれています。

負担軽減策の中で、実現可能性の高低は?

上記のような「受講費用負担をどうするか」も大きな問題ですが、予算が絡んでくるとなると、厚労省としても現時点では大きな動きは取りにくいかもしれません。その点では、受講にかかる時間的な負担をどう軽減していくかに重点を置く流れが強まりそうです。

上記のA~Dを見る限り、カギとなるのは「オンデマンド」と「分割受講」、そして「法定外研修を法定研修とみなすこと」の3つです。前者の2つは、いったん具体策が決まれば「しくみ化」するのは比較的容易でしょう。

「法定外研修」の話については、あくまで検討会の一意見として紹介されているものであり、このまま実現させる方向に持っていくかどうかは難しいかもしれません。仮に実現の方向になったとしても、受講費用の補助などが視野に入れば、やはり予算が絡む点で「法定研修とみなすこと」の線引きをどうするかの検討を集中的に行なうことも必要です。

もっとも、ケアマネにとって「地域固有の課題」への対応はスキルアップには欠かせません。その点では、法定外研修の柔軟な取り扱いについて、専門の検討会を立てて介護保険部会の議論と並行させる可能性があります。

更新制の廃止に向けた1つのステップ策

さて、こうした更新研修の負担軽減の議論が継続されるとして、「更新制の廃止」に論点が移る可能性はあるでしょうか。一見すると、負担軽減策が先に立つことで、「更新制の廃止」はその効果を見たうえで…となりそうです。議論は継続させるものの、結論はさらに3年後に先送りされる可能性があるわけです。

ただし、以下のような改革は予想されます。たとえば、主任ケアマネの更新制を先に廃止し、ケアマネから主任ケアマネになった時点でケアマネ自体の更新を不要とするという具合です。「主任ケアマネの資質が保てない」という懸念に対しては、主任ケアマネとなるハードルアップを図る方法もあるでしょう。つまり、主任ケアマネとなることを、ケアマネの更新制免除のインセンティブとし、新たなキャリアパスのあり方を構築するわけです。

やや突飛な案かもしれません。「そもそも、ケアマネと主任ケアマネの位置づけは異なるのでは…」という見方もあるでしょう。しかし、今整理案でも、主任ケアマネの「制度的な位置づけの明確化」の必要性がうたわれています。主任ケアマネそのものの位置づけが今後見直される可能性もあるわけです。

注意したいのは、介護給付費分科会等で「ケアマネの処遇改善」が論点となれば、その区分要件などの設定も議論されることです。その時に、たとえば主任ケアマネの人数・割合などを要件とする案が浮上することも予想されます。それにともない、主任ケアマネとなるインセンティブを高めておくための環境整備も論点になり、そこでケアマネの更新制廃止の議論が絡んでくることも考えられます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。