
要介護認定期間の短縮化へ向け、政府の規制改革実施計画に沿った改革が進んでいます。2月20日の介護保険部会では、改革aにあたる「認定審査期間の平均値の公表」、および改革bの「審査期間の各段階の設定」にかかる案が提示されました。これを受けて、今後はどのような議論が必要となるでしょうか。
「30日以内設定」を保険者は目指せるのか?
審査期間に関して、各保険者の平均値が好評され、期間を30日以内に収めるための各段階の日数が設定されたとします。当然ながら、保険者にとっては、認定の迅速化に取り組むプレッシャーが強まることになります。
厚労省としては、認定実務の効率化や迅速化の取組み事例もあわせて示す予定です。しかし、保険者によっては、体制の抜本的な見直しなどが必要になることもあるでしょう。
背景には、地域によって認定申請につながりやすい高齢者の増加と、認定実務の担い手減少という真逆のベクトルが拡大する状況もあるからです。国が見すえる2040年に向けた地域格差の課題とつながるものがあります。
そうなると、電子化やオンラインによる用務効率化だけでは、厚労省の提示する日数にはなかなか追いつかないという状況も浮上しかねません。そうした中では、取組み事例の1つである「周辺地域の自治体共同で認定業務を行なう広域連合を設置する」といった改革なども有力視されてくるでしょう。
保険者にハードルとなる「コスト」の問題
もちろん、現状の介護保険の広域連合でも、認定実務は行われています。ただし、厚労省の資料によれば、大規模な広域連合であっても「認定審査会の簡素化」等の取組みを通じたうえで、それでも「事務負担につながらない」という見解も見られます。
となれば、現状の広域連合とは別枠で、保険者間の協働のしくみを築くといった動きも出てくるでしょう。その際には、介護情報基盤などの活用を見すえた実務のICT化や、モデル事業も予定されている審査会でのAI活用を要件とする流れも予想されます。
問題は、そうした自治体間の協働のしくみを築くとして、その立ち上げにかかる装備の構築や人材の確保・育成、およびそれらのコストをどのようにまかなうかという点です。
たとえば、各保険者の「認定業務の効率化」に際しても、「導入コストや導入後のランニングコストの確保」や「職員が(ICT等を)使いこなすための周知や教育」が課題の上位にあがっています(2021年度老健事業より)。
認定迅速化に向けた新たな交付金誕生も?
そうなると、認定にかかる協働事業をはじめ、認定の効率化・迅速化に向けて新たな交付金などが浮上する可能性もあるでしょう。
現状でもデジタル実装にかかる交付金はあり、実際にそれを活用し、地方財政において「認定の効率化・迅速化」に向けた予算措置を組む例なども見られます。これに対し、上記の交付金は「要介護認定」にかかる目的に特化したものという位置づけになります。
あくまで予測に過ぎませんが、閣議決定までなされた工程に沿う改革となれば、効率化の一翼を担う介護情報基盤の運用スタートに合わせて、同年度予算の「重点項目」などに浮上するなどは十分に考えられます。
仮に「認定の効率化・迅速化」の取組みを交付の要件とするなら、都道府県や保険者にとっては大きなインセンティブとなります。厚労省が「審査期間を30日以内に収めるための目安(目標値)」を設定したということは、いかに自治体のインセンティブを高めるかという思惑も強まるのは間違いありません。
暫定プランをめぐる課題もいずれは論点に
気になるのは、こうしたインセンティブ的な予算措置なども出てくるとして、それでも「(認定申請の増加と担い手不足が急速に同時進行するなどで)効率化・迅速化が追いつかない」というケースが生じる場合です。
そうなった時、2024年5月に出された「がん等の方に対する速やかな介護サービスの提供について」の事務連絡の内容が、暫定的に拡大される可能性もあるでしょう。
たとえば、医療機関については、がん等に限らず「在宅生活に一定の困難」が予想される場合に、要介護認定の申請を提案することを強くお願いするという具合です。このあたりは、2026年度の診療報酬改定でも、「迅速な介護サービスにつなげること」を目指した診療費の要件が明確化されるかもしれません。
もう1つ予想されるのは、保険者判断により、ケアマネに「暫定プランの作成」を強く要請することです。つまり、認定審査期間がなかなか短縮されない場合の非常手段として、暫定プランの推進が図られるという流れです。
もっとも、ケアマネにとって「仮に認定結果が予想と異なり、区分支給限度基準額をオーバーする」といった懸念は常に付きまといます。そのあたりの対処なども当然検討課題となります。こうした点を考えても、地域における要介護認定のあり方を考える際には、保険者は常に地域のケアマネ連絡会等との課題共有を図る機会も必要でしょう。
要介護認定の効率化・迅速化は重要テーマですが、そこでは「介護現場に与える影響」もセットで考察することが不可欠です。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。