要介護認定プログラムに在宅介護を反映⁉ 在宅が厳しい時代の認定改革に必要な視点

規制改革実施計画での指摘を受け、要介護認定における一次判定プログラムの見直しに向けた調査・検討が行われます。ポイントは、現行の施設入所者データ基本で構築されているプログラムに、在宅介護サービス利用者のケア時間・ケア内容を加味すること。今後、要介護認定はどう変わっていくでしょうか。

在宅介護の状況にかかる調査は3回目

まず確認したいのは、これまでも「在宅介護」を受けている高齢者を対象としたケア内容やケア時間の調査は、2度行われていることです。1度目は介護保険スタート直後の2001年、2度目は最初の介護保険法改正が行われた2006年でした(この時はGH入所者も対象とした調査が行われています)。

ただし、いずれも介護提供者(家族含む)や介護環境(バリアフリーの有無なども含む)によって、同じ状態の高齢者でもケア内容やケア時間に大きな差が生じ、一次判定のしくみには反映されませんでした。

そして、今回が3回目の調査です。調査方法は、A.現行の認定調査票を用いて本人の状態像を調査し、B.その後に介護者によるケアの時間を調査するというもの。Bについては、2006年の調査と同じケアコードを用います。

調査時期は今年12月から来年2月にかけて。2026年3月に調査結果を取りまとめ、4月以降に介護保険部会に報告されます。これにより、規制改革実施計画にある通り、2027年度には在宅介護の状況を反映した新たな要介護認定が実施される流れとなります。

時代とともに在宅状況が大きく変わる中で

問題は、過去2回とも十分なデータ精度を確保できなかった中で、過去調査と同じデータコードなどを用いつつ、一次判定に反映できる成果が得られるのかどうかです。

たとえば、介護については、介護者と被介護者の間の関係性が常に影響します。要介護認定は、あくまで本人にかかるケア内容・時間で判定するものですが、先の関係性が大きな変動をもたらすのは言うまでもありません。

つまり、この関係性(在宅ならば、ここに環境要因が加わる)をどのように考慮するのかという大方針を明確にしておかないと、同じことの繰り返しになる恐れがあるわけです。

また、第1回・2回調査の時と比べて、在宅介護の状況は大きく変化しています。先の関係性でいえば、1世帯あたりの家族数が減るとともに高齢化も進み、介護を手がける家族の負担は厳しくなっています。

仮に「家族による介護を想定しない(想定するのは専門職による介護のみ)」という調査方針になったとしても、高度成長期等に建てられた家屋の老朽化や非バリアフリーの状況により、環境要因が大きな壁(専門職によるケア時間が変動する)となります。ヘルパーなどの高齢化が際立つ中、これもケア内容やケア時間を左右する要因となるでしょう。

要介護認定のあり方そのものも問われている

こうした介護者要因・環境要因により、同じ状態像の高齢者でもケアの状況が大きく変わるとします。そうなると基準時間も大きく変動し、要介護度を判定するプログラムにはなじまないという結果になりかねません。

しかし、そもそも「そういう時代になっている」、言い換えれば、「これまでの認定調査の3つの軸(「身体・認知能力」「障害や現象の有無」「介助の方法」)だけでは介護ニーズを判定できなくなっている」という見方もできます。要介護認定のあり方そのものに踏み込まなければ、時代状況に合わせることができなくなっていると言えるでしょう。

ただし、その作業は容易くありません。時代に合わせた要介護認定の抜本改革に踏み込むには、世帯内要因(介護者おの状況・住まい環境など)や地域サービスの状況(資源の充足や従事者の状況など)に至るまで、さまざまな要因を新たに考慮する必要があります。当然ながら、認定の公平・公正をどのように担保するかというハードルも上がります。

今調査を機に問われる?「利用者の立場」

ここで、原点に立ち返ってみます。注目したいのは、6月2日の介護保険部会で、2009年度の「要介護認定の見直しにかかる検証・検討会」の提言が示されたことです。同年度は認定調査項目が変更されましたが、それを受けての今後のあり方という位置づけです。

そこでは、「厚労省に対し、今後要介護認定方法の見直しの際は、利用者や市町村の立場に立って、十分に時間をかけて事前の検証や周知を行なうことを求めたい」としています。この「利用者の立場に立つ」という原点が、今回の在宅介護の高齢者の状況反映にどこまで活かされるのかが問われていると言えます。

2009年度の検討会では、委員提出の利用者アンケートで「認定審査会は無用。きちんと訓練されたケアマネらによるサ担会議でチェックする方がよい」という意見も見られました。もちろん、先に述べた公平・公正の担保や財政規律の確保という観点から難しい課題は多々あります。しかし、「自分たちの在宅状況をよくわかっている専門職の立場からサービスの必要度を判定してほしい」という願いは根強くあり、世帯内課題が複雑化する時代に再び湧き上がる可能性もあります。

介護保険への国民の期待や信頼が揺らぎがちな今、今調査を機に、要介護認定のあり方を根本から議論し直す時期かもしれません。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。