踏み出した「ケアマネ更新制の廃止」。 今後クリアすべき課題はどこにある?

厚労省が、「ケアマネの更新制の廃止」を提案しました。同時に、現任者への研修も分割受講やカリキュラムの縮減などをかかげています。これらの実現に向け、クリアすべき課題はどこにあるのでしょうか。ケアマネの資質の確保・向上の観点も絡めつつ掘り下げます。

更新要件だった研修の位置づけはどうなる?

日本介護支援専門員協会からの要望もあったとはいえ、今回の更新制の廃止の提案は、意外にあっさり出てきた感があります。

昨年のケアマネジメントにかかる諸課題検討会の中間整理では、「更新研修の負担軽減策」への言及はありますが、「更新制」そのもののあり方には踏み込まれていませんでした。逆に言えば、それだけケアマネをめぐる環境が急速に悪化している証ともいえそうです。

このまま更新制が廃止になるとして、次に焦点となるのは、「更新の要件」となっていた現任研修のあり方です。これを各ケアマネに確実に受けてもらいつつ、その資質の維持・向上をどう担保するか。厚労省としても、実効性のある制度設計には苦慮しそうです。

方向性としては2つ。1つは、オンデマンドによる受講しやすいしくみとカリキュラムの縮減によって、ケアマネの研修にのぞむハードルを下げること。もう1つは、各ケアマネに確実に研修を受けてもらうための新たな法令上の規定を設けることです。

研修を絞り込んだ場合の着地点をどこに?

前者については、一定期間中(たとえば5年間)に、オンライン等も含めて自由なタイミングで受講できるようにする案が上がっています。時間数の縮減も提案されています。

仮に縮減するとなった場合、どこに焦点を絞るかが問題です。このあたりは、厚労省側の狙いと現場のニーズをどこまでマッチングできるかが大きなポイントとなるでしょう。

厚労省としては、適切なケアマネジメント手法にもとづいて、疾患別のケアに関して掘り下げが必要な知見などに焦点を当ててくると思われます。同時に、最新の制度動向に関する啓発も視野に入れることになるでしょう。

一方で現場ニーズとしては、最新の制度動向などもさることながら、現場のケアマネジメントを円滑に進めるための情報などへの関心が高いのではないでしょうか。たとえば、時代とともに増えつつある疾患や課題、既存の運営基準や加算要件でも実務が煩雑になりがちな部分について、「どのように対応することが有効なのか」といった具合です。

今後、カリキュラムの絞り込みを行なう場合には、現場のケアマネを対象に「有効と思われるカリキュラム」について改めて調査を行なったりすることも必要かもしれません。

オンライン受講以外の研修の行方について

ここまでは(オンライン受講のための)全国統一の教材に関する話ですが、もう1つ考えなければならないのは、地域ごとで行なう演習やケース検討など実践にもとづく研修のあり方でしょう。オンデマンドなどが難しく、受講費用の負担にも直結しがちな課題です。

これを、まったくなくすのか、あるいは地域のケアマネ連絡会などによる自主的なものへと再編するのか。後者の場合、確実な開催が担保できるのか。業務との兼ね合いで参加できないケアマネはどうするのか。費用補助をどうするかなど検討課題は多いでしょう。

現場としては、地域のケアマネ同士の交流機会を望む声も多いので、「情報交換の場」としてのニーズも高い面はあります。ここでも、現場ニーズとの兼ね合いを考慮しながらの制度設計を図ることが求められます。

たとえば、ケアマネのシャドウワークの軽減に向けた市町村との協議の場(厚労省は地域ケア会議の活用を検討)を活かせないかという考え方もあるでしょう。シャドウワークの相談は随時受け付ける一方、定期的に現場のケアマネからの(シャドウワークに直結しがちな)課題を聞き取り、同時にケース検討などもその場で行なうという具合です。

これなら、新たな資源開発を共同提案したり、それにどのように実践につなげていくかといった、地域課題に根づいた実効的なノウハウを地域全体で共有する機会ともなります。

研修受講しないと業務禁止命令に至る可能性

もう1つ気になるのは、やはり後者の「確実に研修を受けてもらう」ための法令上の規定をどうするかという点です。厚労省は、現行の「研修受講命令」と「それに従わない場合の(本人への)業務禁止命令」(いずれも介護保険法第69条の38より)を踏まえて、必要な措置を講ずることを提案しています。

更新制が廃止されれば、「研修を受講していないこと」で「ただちにケアマネ資格を失う」ことはなくなります。とはいえ、上記の各種命令を踏まえた措置を整備するとなれば、しくみのあり方を慎重に検討しないと、更新制の存続と実質的に同じになりかねません。

このあたりは、「業務禁止命令」に至るまでの手順をどのように踏むのか。あるいは、事業所に対しての指導、つまり「研修受講の時間をケアマネの労働時間に確実に組み込む」などの環境整備への強制力などをどのように定めていくのかがカギとなります。

もちろん、目指す先にケアマネの資質の維持・向上があるとして、ケアマネ自身が主体的にそれを目指せるだけの処遇改善もセットで考えなければなりません。結論までには、多様な視点からの議論が必要になりそうです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。