
政府の「総合経済対策」の「医療・介護等支援パッケージ」にもとづき、2025年度の補正予算が編成されました。介護職員の賃上げは、1人あたり最大月1.9万円となります。一方、ケアマネもようやく処遇改善策の対象となり、月あたり1万円給付が実現の見込みです。
各段階の給付額と要件を改めて整理すると…
2025年度補正予算案で示された「医療・介護等支援パッケージ(介護分)」のうち、ここでは「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」にスポットを当てます。同事業における介護従事者を対象とした支給は、本ニュースの通り「3階建て」で構成されます。
もう一度、各段階の給付額と要件を整理すると以下のようになります。
(1)1階部分…ケアマネを含む、介護分野の幅広い従事者1人あたり月1万円支給
対象は、処遇改善加算の対象サービスについては「同加算を取得している事業所・施設」の職員。訪問看護や居宅介護支援事業所等の加算対象外サービスについては、「処遇改善加算に準ずる要件を満たしている場合」です。後者の要件については、「要件を満たすことの『見込み』」も含まれます。
(2)2階部分…介護職員のみを対象に、第1段階に1人あたり月5,000円上乗せ支給
生産性向上や協働化に取り組む事業所・施設の介護職員。この場合の生産性向上・協働化とは、訪問・通所系の場合は「ケアプランデータ連携システムに加入(または見込み)している」こと。施設・居住系サービス等では「生産性向上推進体制加算IorIIを算定(もしくは見込み)していることとなります。
(3)3階部分…人件費にあてた場合に、介護職員等1人あたり月4,000円上乗せに相当
介護職員の職場環境改善に取組む事業所・施設への支援金ですが、介護職員等の人件費にあてることも可能です。要件は、処遇改善加算を取得のうえ、職場環境等要件のさらなる充足に向けた計画を策定・実施すること(2024年度補正予算の「介護人材確保・職場環境改善等事業」と同様)です。
なお、現行の処遇改善加算を取得しているケースが対象なので、こちらも居宅ケアマネについては上乗せの給付はなされません。
ケアマネにとって大きな一歩には違いないが
このように、現行の処遇改善加算の対象になっていない居宅のケアマネや訪問看護師などは、1階部分の月1万円にとどまります。もっとも、これまで介護報酬および処遇改善関連施策の対象外だった居宅ケアマネが対象となったことは、2026年度の期中改定の行方を見すえても「大きな一歩」と言えます。
ただし、いくつかの課題は無視できません。
第一に、介護職員が最大で3階部分まで適用されることにより、居宅ケアマネとの賃上げ幅の差がさらに広がる恐れがあることです。今回の補正予算による賃上げだけで考えれば、9,000円の差がつくことになります。
第二に、先のニュース解説でも述べた通り、「月1万円」という数字は、物価高騰や他産業との賃金差を考えれば最低限の金額だということです。重点支援地方交付金や来年の期中改定にもよりますが、今施策だけでは「介護職員が将来的にケアマネを目指す」という意欲がますますしぼむ恐れもあります。
1階部分のケアマネ向け要件はどうなるか?
第三に、1階部分であっても「処遇改善加算に準じた要件」を満たさなければならないことです。この「準じた要件」の具体的内容は、補正予算成立後に詳細が示されることになるでしょう。あくまで予測ですが、できるだけ低いハードルが設定されると思われます。
たとえば、加算I~IVに共通するもののうち、「任用要件・賃金体系の整備等」、「研修の実施等」さらに「職場環境等要件」の加算III・IVに準じたものという具合です。これらが「見込み(誓約)でもOK」ならば、ハードルはさらに下がります(ケアマネ業務ならではの特質に応じて再編される可能性はあり)。
ただし、これはあくまでもっとも低いハードルを想定した場合です。仮に2026年度の期中改定で「ケアマネを処遇改善加算の恒久的な対象にする」となれば、「ケアプランデータ連携システム活用を(職場環境等要件に上乗せする形で)必須とする」などの要件をきっちり固めてくる可能性もあるでしょう。
1階部分は「一律給付」ではだめだったのか?
そもそもですが、1階部分の「月1万円支給」に果たして要件は必要だったのでしょうか。現行の処遇改善加算の算定状況では、まだ3%強の事業所が未取得です。ここに「算定に慣れていない居宅介護支援事業所等」が含まれた場合、規模等により給付から漏れる事業所が一定程度生じることも想定されます。
相応の努力を求めないと、「バラマキ」になりかねない──という見方はもちろんあります。しかし、今は事業所の意欲や規模にかかわらず、資源のベースを整えなければならない状況にあるはずです。地域によって「担当ケアマネが見つからない」という事態も生じつつある中、いったん一律給付でベースを整えたうえ、期中改定で要件をしっかり定めるという選択肢もあったのではないでしょうか。
今予算には、地域のケアマネジメント提供体制確保支援事業もあります。しかし、こうした施策を活かすうえでも、「働くケアマネの安心」をまず一律で確保するという土台の構築こそ「緊急」を要するのかもしれません。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。