予防ケアマネジメントも直接実施へ。 予防支援指定に加え、ケアマネの疲弊は?

次期制度改正に向け、介護予防ケアマネジメントについても居宅介護支援による直接実施の方向が示されています。この流れを見すえた場合、居宅介護支援の事業展開はどう変わっていく可能性があるでしょうか。その場合の現場のケアマネの働き方も気になります。

まず考えたい、介護予防支援の直接指定の話

前提となる話ですが、2024年度改定により、居宅介護支援事業所が介護予防支援の指定を受けることが可能となりました。包括からの委託を受けなくても、直接、介護予防支援の依頼を受けられることになったわけです。

これによる変化は、早くも数字上で明らかになっています。厚労省が、2024年10月時点での介護サービス施設・事業所の概況調査の結果を発表しましたが、介護予防支援事業所数は、対前年比で2,114件(プラス39.4%)の大幅増加となりました。

もともと居宅介護支援事業所数は全国で約37,000件ですから、居宅介護支援の6%近くが参入した計算になります。この数字をどう受け止めるか…ですが、居宅介護支援事業所の1割に満たない数字なので、「意外に少ない」と見る向きもあるかもしれません。

ただし、居宅介護支援事業所自体の数は、2024年10月時点で対前年比526か所減少(マイナス1.4%)しています。事業所減の一因にケアマネ不足がある中、介護予防支援の指定を受けることに積極的な事業所が減少事業所の4倍近くあるというのは、やはり注目すべき現象と言えるでしょう。

予防支援の指定事業所が急増した背景には?

もちろん、上記については、包括側の業務過多によって、今まで委託を受けていた事業所が急きょ「指定を受けた」というケースも一定程度あることが想定されます。つまり、包括のキャパシティを超えた部分でのニーズをカバーするという実情があるわけです。

一方で、予防給付からの利用者確保に積極的に乗り出すことにより、要支援の利用者が将来的に要介護になった場合を想定した「顧客確保」の狙いがあることも考えられます。

その場合に、高齢者向け住まいでの「囲い込み」との関連に注意が必要です。たとえば、住宅型有料ホームやサ高住と提携する(居宅介護支援を含む)介護事業所において、入居者が軽度の時点からの「囲い込み」を進めるため、予防給付の指定を積極的に受けておくことの動機づけが高まっている可能性です。

現場ケアマネのキャパシティ超えを懸念

こうした動機の方向性はともかく、いずれにしても注意したいのは、人員減少のケアマネのキャパシティを超えて、利用者の獲得が進められていくことです。その場合に、利用者一人ひとりのニーズにていねいに対応したケアマネジメントを実践する余裕があるのか、ケアマネが実践したくても事業主が「そこまでする必要なし」を前提として担当させていないか──こうした法人・事業所内でのゆがみについて検証する必要があるでしょう。

このあたりの実情や課題があいまいにされたまま、冒頭で述べた「居宅介護支援事業所による介護予防ケアマネジメントの直接実施」が実施された場合、何が起こるでしょうか。

ご存じのとおり、介護予防ケアマネジメントでは、ケースに応じて一部のケアマネジメント・プロセスを省略できるしくみとなっています。事業費の設定にもよりますが、プロセスの簡易化によるコスト減に着目しつつ参入意欲を高める事業者も多いかもしれません。

もちろん、モニタリングの省略が可能になったとしても、継続的に利用者の活動状況の把握や助言などは求められます。しかし、先のように「そこまでする必要なし」という事業主の意向が強く働けば、ケアマネの職業倫理に傷を残しやすくなるでしょう。

現場のケアマネが陥りかねない板挟み心理

ここで、他のデータを見てみましょう。厚労省が公表した介護職員数の推移を見ると、2023年度に初めて介護職員数が減少に転じ、最新となる2024年度でも横ばいとなっています。注目したいのは、介護職員の従事分野別において、減少幅が年々大きくなっているのが総合事業だということです。

総合事業における介護職員の減少は、従前相当サービスを中心に総合事業から専門職が「いなくなっている」ことを示唆しています。仮に従前相当サービスを支える人材がいなくなっているとすれば、介護予防ケアマネジメントを担当するケアマネとしては、実績や専門技能に乏しい住民主体等に(仕方なく)頼らざるを得ない状況が強まりかねません。

コストを下げたい事業者としては、ケアマネジメント・プロセスの簡易化を進めやすくなると考えるかもしれません。問題は、その簡易化を業務指令のような形で現場のケアマネに強いる風潮がさらに強まることです。

現場のケアマネとしては、「きちんと専門職のいるサービスを調整したいが、その資源が地域に乏しい」という状況を痛感しつつ、その中でケアマネジメントだけはしっかり行ないたい想いがあるとします。しかし、「それもできない」という板挟み心理は、日常の業務負担と同レベルでケアマネを疲弊させかねません。介護予防ケアマネジメントのあり方を見直す場合、ケアマネの専門性が活かせる土壌が崩れていないかの検証も求められます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。