
2025年末、厚労省の介護保険部会の取りまとめが出されました。一部で継続議論となったテーマもありますが、おおむね2026年に国会提出予定の介護保険等の改正案(その後の省令改正も含む)に反映されることになります。ここでは、ケアマネをめぐって何がどう変わるのかを具体策の予測も含め整理します。
更新制廃止と現任研修の強制力のバランス
今回の介護保険部会の取りまとめで、ケアマネがもっとも注目するのは、やはりケアマネ資格の更新制の廃止(主任ケアマネも同様)でしょう。正確には、介護支援専門員証の5年の有効期限の廃止です。これについては、介護保険法第69条の7で規定されているため、この部分の法改正が必要です。
これは、ケアマネの負担軽減策の1つですが、問題は更新の要件となっていた法定の現任研修の取扱いです。この研修受講については、いくつかのケアマネへの負担軽減策をとったうえで「引き続き求める」としました。
この負担軽減策ですが、分割受講を可能にすることや時間数の縮減、地域医療介護総合確保基金の活用促進による受講費用の負担軽減などが上げられました。また、事業所には、研修時間を労働時間として扱うことの徹底のほか、必要な配慮を求めるとしています。
もっとも、これらの負担軽減策が取られたとしても、「研修受講を求めること」が制度的に明文化されれば、そもそもの更新制廃止による負担軽減の効果が打ち消されかねません。
確かに、「研修を受講しないことでただちにケアマネ資格を失う」ことはなくなります。しかしながら、仮に行政によるケアマネへの受講命令などが出されるなどとなれば、その強制力によって、実質的に「更新制の継続と負担感は変わらなくなる」恐れもあります。
未受講のケアマネがいる場合「減算」に⁉
上記の研修に関する規定は、改正法案作成ぎりぎりまで業界・職能団体との調整が続きそうです。たとえば、法案では「行政による受講勧奨」という形で強制力を弱め、事業所への指導・監査を通じて、ケアマネの受講を徹底させるという流れになるかもしれません。
場合によっては、一定期間内に未受講のケアマネがいる事業所に減算規定を設けるとか、居宅介護支援に適用される処遇改善加算等の要件に、「未受講のケアマネがいないこと」などが定められることも考えられます。
こうした事業所へのプレッシャーという点では、主任ケアマネのあり方もかかわってきます。今取りまとめでは、主任ケアマネの位置づけの明確化が促されました。具体的には、管理者として行なう労務・財務管理業務と、事業所におけるケアマネジメントの遂行やケアマネ育成などの役割を切り分けることです。
このあたりの役割分担の遂行を事業所に促す規定も、どこかで誕生する可能性があります。やはり処遇改善加算において、「居宅介護支援事業所向け」の職場環境等要件に含めるといった対応も出てくるかもしれません。
主任ケアマネの業務位置づけと地域ケア会議
この主任ケアマネの役割については、地域ケア会議の機能強化が図られつつある点にも注意が必要です。たとえば、今取りまとめでは、身寄りがない高齢者等への支援に向けて、市町村による地域ケア会議の活用推進を図ることが示されています。また、そうした課題への相談対応については、包括的支援事業における位置づけを明確にするとしています。
市町村主導とはいえ、実質的には包括の役割がカギとなります。ただし、包括業務も手一杯という状況下では、地域の多機関・多職種との協働が不可欠となるのは必然でしょう。
そこで、気になるのは居宅介護支援の役割です。介護予防ケアマネジメントを居宅のケアマネが直接手がけられるようにする案も上がっていますが、先の主任ケアマネの役割の明確化との関連も気になるところです。
たとえば、居宅介護支援事業所の主任ケアマネの役割として「地域ケア会議への参加」を明確にし、それを可能とするための環境整備を事業者に求めるという具合です。このあたりも、処遇改善加算の職場環境等要件に位置づけられる可能性もあるでしょう。
地域ケア会議の参加を職場環境等要件に⁉
主任ケアマネの地域ケア会議への参加支援が、どうして(居宅介護支援事業所の)職場環境等要件にかかわってくるのか──と思われるかもしれません。ここで注意したいのは、先の「身寄りのない高齢者等への支援」が、ケアマネのシャドウワーク対策の一環であり、その解決に向けて地域ケア会議の活用が位置づけられていることです。
シャドウワーク対策は、ケアマネの業務負担軽減の重要テーマです。つまり、その解決に向けて主任ケアマネが地域ケア会議に参加することは、ケアマネの職場環境改善につながるという理屈へとつながります。
このように、ケアマネや主任ケアマネをめぐる制度改革では、事業所責務の拡大というテーマが随所に潜んでいます。これらをすべて運営基準に設定すれば、事業所数の減少危機下では大きな負担となりかねません。そこで、処遇改善加算の要件がターゲットにされるという流れは十分に考えられることです。
新たなしくみの誕生が、相互にさまざまな影響を及ぼす点に注意を図りたいものです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。