新型コロナウイルスの流行で介護現場は更に厳しい状況に追い込まれ、関係者の間では報酬の引き上げで支援すべきとの圧力が非常に強まっている。こうした状況に経済界が「待った」をかけた。【Joint編集部】
「コロナ禍による経済の悪化に伴い、制度を支える側の現役世代の報酬減少が現に起きている。今後の動向も非常に心配されるところだ」
来年4月の報酬改定について協議している審議会の4日の会合で、大企業の社員らが加入する健保組合で組織する健保連の河本滋史常務理事はそう指摘。「制度の安定性、持続可能性を確保していくことも考えて欲しい」と述べ、報酬増を目指す動きを牽制した。
日本経団連の井上隆常務理事も、「介護事業者どうしの議論では制度の効率化、重点化に向けた提案が出にくい。隔靴掻痒の感がある。保険料への影響、被保険者の負担とのバランス、という視点にも配慮しないと制度はまわらない」と主張。「報酬をプラスする部分があるのなら、マイナスする部分はないのか検討してもらいたい」と注文をつけた。
厚生労働省は次期改定をめぐり、全サービス共通のコンセプトの1つとして制度の持続可能性の確保を位置付けている。
ただこれまでの議論では、コロナ禍で苦しむ介護現場を救う報酬増の実現を求める意見が支配的。この日の会合でも、感染症や災害への対応力を高める観点からその必要性を訴える声が相次いでいた。報酬増は40歳以上の保険料の引き上げに直結するため、それを労使折半で負担する経済界は警戒を強めている。